Live Report#468

三輪洋子トリオ
2012年10月3日  @丸の内Cotton Club
Reported by 稲岡邦弥
写真提供:Cotton Club
撮影:米田泰久

三輪洋子(p)
ウィル・スレイター(b)
スコット・グールディング(ds)

本誌で最新アルバム『アクト・ナチュラリー』(Victor)を紹介するために何度か聴き込んだばかりなので、まだその印象が脳裡に色濃く残ったままだ(http://www.jazztokyo.com/five/five946.html)。
彼女は新譜発売の直後、7月にも帰国、出身地の神戸や甲陽音楽学院など西日本を中心にツアーを組み、そして、東京では神田のTUCで演奏している。今回は2ヶ月をおいての2度目のツアーで神戸に始まり、貝塚の予定が台風のためキャンセルになりながら、大阪を経て東京にやってきた。少々疲れ気味だが頑張ってやります、とのコメントがあった。昨夜のミシェル・ルグランもそうだったが、トークを交えながらの演奏はミュージシャンとオーディエンスの距離が縮まってとても良い。クラブでの演奏はなおさらだ。
1、 2曲と最新作からのナンバーが続いたが、クラブでのライヴだけにリラックスした演奏だ。アルバムではもう少し適度な緊張感があったような気がする。前回帰国時の左利きのベーシストがウィル・スレイターに代わっているが、ウィルの方がややおしゃべりか。つまり三輪とのインタープレイに積極的だ。ボサ・ノヴァの<リカード>。三輪はイリアーヌ・イライアスのピアノが好きだ、と聞いたことがあるが、たしかにゴリゴリのジャズ・オリジナルより、ホリゾンタルなメロディ・ラインに本領を発揮するような気がする。続いて演奏された秋吉敏子が弾いていたという(1953年に東京で録音された『トシコズ・ピアノ』 Norgran)ジョニー・ホッジスの<スクオッティ・ルー>やマッコイ・タイナーの<インナー・グリンプス>のジャズ・オリジナルの処理では余り明確に形が見えてこない。これは、ドラムスのスコット・グールディングの資質にもよるのかも知れないが。ジャズ・オリジナルではもう少しリズムを生かしたいわゆるメリハリの利いた演奏を聴けたらと思った。2曲のジャズ・オリジナルの間で演奏されたニール・ヤングなど、アルバムではレイドバックして歌いに歌って堂々とした演奏を披露していた。ニールのメロディと彼女の歌心が共鳴して大きなうねりとなって表出されていたといったらよいだろうか。彼女はウタを聴かせるピアニストなのだ。最後に演奏されたヴァン・モリスンは、前作に収録されていた曲で、このアルバム『Live at Sculler’s Jazz Club』でこのトリオはボストン・フェニックス紙の“ベスト・ジャズ・ユニット”に選出されたのだった。
ボストンではバークリー音大で20数人の生徒が三輪の帰りを待っているという。三輪は昨年、秋吉敏子に次いで日本人女性ではふたり目の准教授に就任したのだ。

Set List:
Wrap Your Troubles in Dreams (Harry Barris)
Roll with My Baby (Sam Sweets)
Recado (Djalma Ferreira)
Squatty Roo (Johnny Hodges)
Only Love Can Break Your Heart (Neil Young)
Inner Glimpse (McCoy Tyner)
Starting a New Life (Van Morrison)











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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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