Live Report#488

菅野邦彦 シークレット・ギグ
2012年10月8日 @東京・荻窪「アミーチ・サロン」
Reported by 稲岡邦弥 Kenny Inaoka
Photos by 相本 出 iPhone de

菅野邦彦(p)
小林陽一(b)

篠原完治(flgh)
篠原京子(vo)
中谷泰子(vo)

<コートにすみれを>のメロディが弾きだされた途端、鳥肌が立ったと参加者のひとりから聞かされた。アミーチ・サロンに置かれた1927年製のニューヨーク・スタインウェイ Louis XV(ルイ十五世モデル)。サロンに着いてキーに触れた菅野邦彦の口から「いいねえ」とひと言洩れた。クラブに招かれる度に弾きたいピアノを所望し、ボールドウィンやNYからスタインウェイを空輸させた男である。もともとピアノと格闘するタイプではなく、ねんごろになって馥郁とした音を紡ぎ出すことを好むタイプである。このピアノを気に入るだろうことは充分に予測できたので、オーナーと語らって「シークレット・ギグ」を企画したのだ。オーナーは40年振りの再会とのこと、はやる気持ちを抑えかねている風情。僕自身、5、6年前に代官山のレザールで30年ぶりの再会を果たしたばかりであった。
昨夜は屋上でパーティがあり、女川の秋刀魚や千葉の岩魚が振る舞われた。興に乗った菅野はピアニカを取り出し、<ゴッド・ファーザーの愛のテーマ>や<トルコ・マーチ>を披露した。ピアニカといっても白鍵と黒鍵をフラットに並べた菅野自身が開発したカスタム・メイドである。すでに88鍵のキーボードも完成しており、こちらについては稿を改め、菅野自身の口から語ってもらう約束になっている。
上手にはベテラン・ベーシストの小林陽一。菅野とは何十年来の付合いで、菅野が思い付くままに弾き出すメロディにベースを付けて行く。デュオで数曲やった後、控えていた篠原完治がフリューゲルホーンで加わる。<ジャスト・フレンズ>。篠原にはトランペットではなくフリューゲルをお願いしてあったのだが、読み通り。ルイ十五世の優美な音とフリューゲルのベルベットのような音がぴたりとマッチする。篠原はセミ・プロなのだが、臆することなく堂々とストーリーを展開している。篠原京子のヴォーカルが加わって<ザ・マン・アイ・ラヴ>。アニタ・オデイ譲りの媚びない粋の良さが小気味よい。30人ほどのスペースに心地良い雰囲気が醸し出される。中谷泰子が<枯葉>のヴァースを聴き付けて客席から進み出る。<枯葉>にしては珍しくドラマチックな展開だ。事前の打合せもないまま、音楽が生み出され、時が流れてゆく。休日の昼下がり。菅野邦彦のジャズを愛する者が集い、音楽と時間を共有する。素晴らしい楽器と環境を得て、菅野の心は完全に開かれているようだ。しばらくこの心地よい空間に身を委ねよう。(稲岡邦弥)















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追悼特集
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
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COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
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#10 Contents
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オスロに学ぶ
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