Concert Report#529 |
Keith Jarret t / Gary Peacock / Jack DeJohnette Trio 30th Anniversary |
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1st
1. You Go To My Head
2. Little Man, You've Had a Busy Day
3. Fever
4. Yesterdays
2nd
1. The Old Country
2. It's a Raggy Waltz
3. I'm a Fool to Want You
4. I Fall in Love Too Easily
5. One for Majid
Encore
1. When I Fall in Love
2. St. Thomas
3. Things Ain't What They Used to Be
オーチャードホールの暗闇の中、スポットライトに照らされた3人の笑顔にはさらに年輪が刻まれていた。「トリオ最後の来日」になると言う。78歳のゲイリー、71歳のジャック、68歳を迎えたキース。30歳引くと結成時の年齢に。36歳引くと「Gary Peacock / Tales of Another」(ECM1101)に遡る。キースが特に高齢というより先輩と組んでいるので平均年齢が高いのがわかる。
静寂の中「You Go to My Head」から第一部が始まる。最初はウォーミングアップ的な感もあったが徐々に安定する。第一部は4曲で早々と切り上げた感はあったが、安定した力強く豊かな音色での演奏で、3人とも楽器の鳴りが本当に素晴らしい。第二部に続くが、いずれも誰もが知っているわけでもないスタンダードが多い。ただ、この日以降のセットリストを見ると有名な曲の割合が増えていくので、特に初日がチャレンジ気味だったのかもしれない。最後はスタンディングオベーションにトリプルアンコールとなり。「St. Thomas」「Things Ain't What They Used to Be」では曲がわかった瞬間に特に大きな拍手が起こっていたので、キースファン以上に、より幅広いジャズファンが来ていたと思われる。演奏は見かけよくまとまっていたが、その瞬間瞬間に美しさと輝きがあり、1曲1曲が素晴らしいものとなっていた。そしてバラードはさすがだった。1作目の「All the Things You're」に見られたような疾走感のある演奏や、どこに向かうかわからないような演奏はなかったし、また10年位前までよくあった、イントロがフリーで耽美的でスタンダード原曲を超える世界観を表現してしまうということはなかった。円熟しバランスが取れ、動的、創造的ではあるが平衡に達した到達点に来ていると感じた。アンコール3曲を終えて、3人が見せる心からの笑顔がまたよかった。本当にこれが最後の来日となるのであればとても残念でならない。観客も感慨深く感じていたようだ。
キース最初の代表作と言えば1968年録音、トリオでの「Somewhere Before」(Atlantic)、アメリカンカルテットとヨーロピアンカルテット/ビロンギングを経て、1983年に「Standards, Vol.1」「Vol.2」「Changes」(ECM1255/1289/1276)を録音し世に問う。そうしてみると、キースはスタンダーズでの活動をメインにもう30年を過ごしていて、以前のキースはトリオから、ピアノソロ活動の確立、ふたつのカルテット、オーケストラにパイプオルガンと15年間をまさに駆け抜けていた。当時はスイングジャーナルなどで酷評されることもあったが、スタンダーズとともに常に高評価を受けるようになる。以前からのファンにとってはキースの作曲とサウンドが大好きであった方は多いと思う。スタンダーズでも「Prism,」「So Tender」などキースのオリジナルを聴くことが好きで、スタンダーズ公演中も次の曲でオリジナルが演奏されるのを待ち望んでいる自分に気づく。このため旧来のファンにはスタンダーズには愛憎半ばする点があるが、それがキースの後半生30年間で選んだ道であることは素直に受け入れるし、往年の名曲集みたいな公演をしないことには潔さも感じる。
「最後の来日」の理由はメンバーの体力と健康であり、音楽的解散をするわけではない。今後、ヨーロッパツアーがあり、年末にはカーネギーホールコンサートも予定されている。来年5月にピアノソロでの来日公演が決定された。個人的には「最後の来日」確定とは信じていないのだが、キースの来日への想いにとってポジティブな一区切りになり、新しい扉が開かれるのであれば今後が楽しみでもある。そして、3人それぞれの健康と末永い活躍を祈り、楽しみにしていきたいと思う。
Somewhere (ECM2200)
Standards, Vol. 1 (ECM1255)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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