塩谷哲(p)
田中義人(g)
松原秀樹(b)
山木秀夫(ds)
大儀見元(perc)
Superstition (Stevie Wonder)
Beauty and Brilliance
Magma in Your Eyes
Entropy
Join the Angels
Arrow of Time
Patio
あこがれのリオデジャネイロ
塩谷哲のソロ・デビュー20周年記念してリリースされた素晴らしいアルバム『Arrow of Time』の発売記念ライブ。アルバムの紹介はこちら(http://www.jazztokyo.com/five/five975.html)、及川公生氏による録音評はこちら(http://www.jazztokyo.com/column/oikawa/column_163.html)を参照されたい。
ブルーノート東京3日連続計6公演のうち最終公演を聴いたが、すでにCDの内容を大幅に超えるバンドに化けていたし、大阪、名古屋公演を経てさらに化けていくと思う。スーパーバンドだからといって、見かけのテクニックに走るような曲もなく、塩谷の心に降りてきた歌うような曲を全員が楽しそうに演奏する。自然に演奏する中で生まれる凄すぎるグルーヴ、楽しい演奏にただ圧倒される。
曲によって役割は変わるのだが、いずれも最高の表現力を持つ塩谷哲のピアノ(YAMAHA CF-Xを持ち込み)と、田中義人のギター、大儀見元のパーカッションが、曲の立体感とニュアンスを繊細に表現し、山木秀夫のドラムスと松原秀樹のベースが力強いグルーヴを生む。他方、グルーヴはひとりひとりから対等に湧き上がり交わり高められていく。たとえば、中では異質な1曲で<Magma in Your Eyes>ではヘビーメタルのサウンドを目指すのだが、決して大音量でがなりたてる必要はなく、ピアノが効果的に絡み、間に沈黙すら感じさせる全体の流れに、メンバーが交互に緊張感のあるフレーズを短く加えていくと、全体でとてつもなくテンションの高い、ダイナミック・レンジが広い曲に仕上がる。バラードの曲もとても美しい。「意識せずに書き始めたが、やはり3・11には思うところが多く、やりきれない思いもこめられていると思う」と語っていたが、せつなさと希望を感じさせる演奏となった。
ジャズ、フュージョンの最先端を走ってきたメンツではあるが、それ以上にJ-Popのサポートや編曲、プロデュースに重用されてきたメンバーたち(このライブにもJ-Popのミュージシャンが多数来ていた)である点は大きく、最低限の音から、そして音を出さない瞬間からこそ豊かな歌とグルーヴが生まれてくる。「このメンバーたちは楽器で選んだのではなく、人で選びました。たとえば大儀見さんがギターと歌でも一緒にやりたい。」塩谷はCDを「力が抜けた力作」と自嘲気味に語っていたが、信頼する仲間が集まり、力が抜けて、その瞬間を心から楽しむとこれだけの音楽が生まれる。その楽しさとポジティブな思いが会場の観客に伝播していく。
鳴り止まない拍手。ダブル・アンコールとなり、仲間たちから自然に音楽が生まれるイメージを表現した<Patio>、そして塩谷のソロ活動の中で長く演奏されてきた<あこがれのリオデジャネイロ>で締めくくられた。Super Salt Bandはメンバーがそれぞれ多忙すぎてレギュラー活動は難しいにしても、年に1、2回集まりながら長く活動を続けていくと思うが、そのたびに進化し、どこまで行ってしまうのか。このバンドの今後、塩谷とメンバーたちのこれから、そして次の20年間が楽しみでならない。
塩谷哲 / Arrow of Time
ビクターエンターテインメント VICJ-61683
2013年4月3日発売
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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