Live Report#550

姜泰煥Breath Passage 2013
Fractal
2013年6月23日 下北沢「アレイホール」
Reported by 玉井新二(photos)

姜泰煥(カン・テファン、altosax)
さがゆき(voice)
高田みどり(perc)

 姜泰煥の来日ツアーは、6月22日の甲府「桜座」を皮切りに29日まで、東京、名古屋、静岡、神奈川の各地で8公演行われた。共演者も、田中泯/さがゆき、高田みどり/ヒグマ春夫/土取利行/佐藤允彦/太田恵資、永田砂知子という選りすぐりの面々だ。

 この中で私は、23日の下北沢「アレイホール」で行われた姜泰煥(as)、さがゆき(voice)、高田みどり(perc)の演奏を聴きに行った。姜はこれまで、さが、高田とはすでに何度か共演を重ねているが、今日はどんな演奏が展開されるのか、音が出るまで期待が膨らんだ。

ジャン ジャン ジャーン…バシャ!!  ジャン ジャン ジャーン…バシャ!! 

 静まりかえった会場に突然、耳をつんざくような音が響きわたる。パーカッションの高田みどりがサムルノリで使われるケンガリ(韓国の伝統楽器。小さな銅鑼)を叩きながら入場してきたのだ。これから始まる演奏の前触れといった感じだ。
 しばしの静寂の中から、高田のマリンバの柔らかい音が立ち上がり、そして突如に駆け抜けるようなアブストラクトな音が連なる。緊張と弛緩の何とも心地よい流れに身をゆだねていると、さがゆきのヴォイスが近づいてきた。
 二人が音を探り合い、互いに鋭いパッセージを投げかけ、響きあいへと流れていこうとするころ、座席の後方から姜泰煥が悠然と登場、いつものようにステージに座り込み演奏が始まった。

 姜の演奏は、マルチフォニック奏法や循環呼吸奏法など高度なテクニックはさることながら、その音が楽器を通して発せられているとは思えないような…、サックスが身体の一部としてあり、こころの深淵から気負いもなく湧き上がってくるその音に、聴く者は瞑想の世界へと誘い込まれてしまう。
 ずっしりと土に根を張った大木のようにゆるぎなく、道端のお地蔵様のようにあくまでも穏やかなたたずまいの姜。その音の世界には、風にそよぐ木葉の繊細なざわめきと、五臓六腑から絞り出され宇宙にまで突き抜けるような鋭い音までが内包されている。
 二部に入ると、高田が叩くプグ(韓国伝統楽器の太鼓)のくぐもった芯の太い音が、瞑想の世界へとさらに誘い込み、さがのヴォイスが怪しく揺らめきを増し、それらを包み込む姜の心象風景が大きな広がりを見せていった。姜とさが、高田のコラボは、後半にしたがい氷が融けるように打ち解け、響きあい、素晴らしい時を刻んでいた。
 田中泯、土取、佐藤、太田などとの共演を聴けなかったのが残念!

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