Live Report#559

ヴィジョン・フェスティバル 18(前編)
2013年6月12日〜16日 ルーレット、ブルックリン、NY
Reported by Bruce Gallanter@Downtown Music Gallery, NY
http://www.downtownmusicgallery.com/Main/index.htm
Photos by Peter Gannushkin@DOWNTOWNMUSIC.NET"
http://downtownmusic.net/.
Translated by Kenny Inaoka@Jazz Tokyo

 毎年恒例のヴィジョン・フェスティバルがあと2年で20年目を迎えるという事実はなかなか信じ難いことである。この手のフェスティバルで継続しているのは世界中でヴィジョン・フェスティバルをおいて他にない。会期が5日間に短縮されて数年が過ぎ、ここ2年は会場がブルックリンのルーレットに移された。今年はそれほど暑くはなく、雨も少なく、ルーレットのエアコンもなかなか快調だった。イエイ!音響も上々だった。少なくとも最前列から数列目の僕の座席では。このフェスティバルの最良のポイントは、全米はもちろん、世界各国から熱心なリスナーを集客していることである。僕が毎年一度だけこのフェスティバルで顔合わせる仲間がいて、彼らとは家族のようにアヴァン/ジャズの最良の部分を一緒に見聞きし、体験を分かち合っている。

■ 6月12日(水)

Milford Graves: A Lifetime of Achievement
1.
7:30 Afro/Cuban Roots
Milford Graves (drums)
David Virelles (acoustic piano)
Román Díaz (percussions:congas, batá drums, añá, vocals)
Dezron Douglas (acoustic bass)
Román Filiú (alto saxophone)
2.
8:30 Milford Graves Transition TRIO
Milford Graves (drums)
D.D. Jackson (piano)
Kidd Jordan (tenor saxophone)
3.
9:30 Milford Graves NY HeArt Ensemble
Milford Graves (drums)
Charles Gayle (tenor saxophone)
William Parker (bass)
Roswell Rudd (trombone)
Amiri Baraka (poetry)

 6月12日(水)はヴィジョン・フェスト18の初日で、伝説的なドラマー、ミルフォード・グレイヴズ(註:1941.8.20、NYクイーンズ生まれ)の祝賀の日であった。グレイヴズ氏は、ヴィジョン・フェスティバルの創設者から永年功労賞を授与される栄に浴した。グレイヴズ氏は史上最初のまた最良のフリー/ジャズ・ドラマーのひとりで、アルバート・アイラーやジュゼッピ・ローガンと共演、ニュー・ヨーク・アート・カルテット(ジョン・チカイts、ラズウェル・ラッドtb、ルイス・ウォレルb)の創立メンバーのひとりでもある。グレイヴズ氏の演奏とライヴに賭ける熱意が実年齢よりずっと若く見せ、70歳代であるとはなかなか信じ難い。彼は、1973年からヴァーモント州のベニントン・カレッジの教授職にあり、内的リズムの研究に携わると同時にヒーラーでもあるとされている。グレイヴズ氏のライヴ演奏の機会は減っているが、友人や協力者のジョン・ゾーンの尽力でNYでは毎年数回の演奏の機会を持っている。当夜はグレイヴズ氏に捧げられた一夜でもあったので、3つの際立って異なるセットでの演奏が実現した。ヴィジョン・フェストではきわめて珍しいことだが、当夜のチケットはソールド・アウトで満員の聴衆が会場を埋めた。演奏に先立って、ヴィジョン・フェストの創設者でオーガナイザーでもあるパトリシア・ニコルソンが霊感に満ちた言葉で祈祷を捧げた。次いで、パトリシアはなぜミルフォード・グレイヴズがそれほど重要でユニークかつ霊感に満ちた存在であるかについて語った。僕は彼女の真摯なメッセージに心打たれ、何か特別なことが起こる予感を覚えたのだった。

 最初のセットのタイトルは「アフロ・キューバン・ルーツ」で、ダヴィ・ビレージェス(p)、ロマン・フィリウ(as)、デズロン・ダグラス(b)、ロマン・ディアス(conga)、そしてほとんどティンバレスに専念するミルフォードからなるクインテット。 じつは、グレイヴズ氏はアヴァン/ジャズの世界に入って来る前は(60年代初期の頃だが)、アフロ・キューバンのバンドで演奏していたのだ。このグループで僕が通じていたのはピアノのダヴィ・ビレージェスだけだったが(彼はPi レコードから素晴らしいCDをリリースしており、ダウンタウン系のプレイヤーとの共演機会も多い)、他のメンバーの選択に狂いはない。セットはディアス氏のソロ・コンガでスタートしたが、すぐにグレイヴズ氏が木製のボックス・ドラム(カホン=ペルー発祥の打楽器:体鳴楽器、の一種?) で加わった。彼らはともに相互に馴染み易いリズムとグルーヴを叩き出していたので、このオープニングは成功だった。次いで、ピアノ、ベース、アルトサックスが加わり、それぞれが展開に応じて独自のマジックを加えていった。ミルフォードがティンバレスとカウベルにスイッチすると、バンドが展開を初め、それぞれが説得力のある催眠的でスイング感に溢れたひとつの塊となり、それはまさに音のガンボ(アメリカ南部の料理。野菜、スパイスがたっぷり入った煮込み)のようだった。2曲目は渦巻くリズムが多層を成しながら静かに始まった。コンガ奏者がステディなリズムを打ち出すなか、ミルフォードが独特のドラムセットに向い芯を成す反復するラインを叩き出す。
それぞれのメンバーがメロディ・ラインやフレーズを加えていき、すべてが複雑に絡み合いながら世界を創り上げて行く。やがてそれはお馴染みの<アフロ・ブルー>として姿を現す。かつてジョン・コルトレーンがカヴァーした古典だ。ピアノとサックスが交互にメロディ・ラインを奏しながらクライマックスに持ち込んでいく。エンディングに至る前、ピアノのビレージェスが素晴らしいソロを取った。サックス奏者のロマン・フィリウが<マイ・フェイヴァリット・シングス>に似たメロディを崩しながら形を変えて行く。バンドのメンバーはそれぞれがうまくはまっていたが、やはり芯になっていたのはグレイヴズ氏だった。グループをタイトに縛っていたリズムをさまざまな形で活性化していた。素晴らしいセットだった!

 次のセットは、キッド・ジョーダン(ts)とD.D.ジャクソン(p)をフィーチャーした「ミルフォード・グレイヴズ・トリオ」。ミルフォードによれば、ピアノのジャクソン氏と出会ったのはかなり前、古い相棒だったドン・プーレン(p/1941.12.25~1995.4.22)の臨終の席とのこと。D.D.ジャクソンは良く知られたピアニストだが、どちらかといえばストレート・アヘッドでのセッションでの仕事が多い。ここはその場所ではない。ジャクソン氏はプーレン氏の得意とした急速なグリッサンドから演奏を開始した。トリオは、フリージャズに特有の力強さで、奔放に旋回しながら次第に上昇していく。3者が強固にまとまりながら旋回していくさまに素晴らしいヴァイブを感じ取った。ひとつのダイナミズム溢れる力としてしっかりまとまった、スピリットの途切れることのないトリオである。ミルフォードのドラムが中心となって流れが美しく寄せては返す。時には暖かく速度を落としながら、全体のセットはどこまでも魅惑的に流れていく。それぞれのメンバーがそれぞれに新たな方向に導いていく。キッド・ジョーダンが<ウェイド・イン・ザ・ウォーター>から優美なゴスペル調にメロディを引用しレイド・バックした場面もあり、安らいだ心地を覚えた。全体の色調はトレーン的なモーダルな雰囲気で、リスナーの気持ちをひとつにまとめ楽しませてくれた。

 最後のセットは、「ミルフォード・グレイヴズ・NY HeArt アンサンブル」で、テナーとピアノがチャールズ・ゲイル、トロンボーンがラズウェル・ラッド、詩の朗読にアミリ・バラカ(註:旧名リロイ.ジョーンズ 1937~)、ベースがウィアリム・パーカー、ドラムスにミルフォード・グレイヴズという布陣。これは、ラッド氏とバラカ氏がグレイヴズ氏と共に「ニューヨーク・アート・カルテット」(NYAQ) のメンバーであったという点で歴史的なセッションであった。
伝説的なNYAQは半世紀前に結成され、1964年にESPからデビュー・アルバムをリリース。残念ながらサックスのジョン・チカイ(註:1936 - 2012/デンマーク出身のサックス奏者)が昨年末他界しているものの解散後初めてのリユニオンである。 演奏に先立ち。ミルフォードがアミリ・バラカと初めて会った時の印象と彼の詩をどれほど愛しているか、また身繕いの素晴らしさについて語った。セットはバラカ氏の朗詠とミルフォードのコンガからスタートした。バラカ氏の詩の内容は、海底深く敷かれた人骨で作られた轍(わだち)、アフリカからアメリカへと続く黒い象牙、を謳ったもので、これは文字通り素晴らしい出会いであった。次いで、ラズウェル・ラッドのトロンボーンとミルフォード・グレイヴズのドラムスのデュオ。これまた、ラッド氏がフリーとテンポ感のあるジャズの間隙を埋めるような演奏を聴かせ、強力なデュオぶりを見せた。ラッド氏のステージングも素晴らしく、このセットに充満していた魅惑的なヴァイブをさらに倍加させた。まもなく、ベースのウィリアム・パーカーとテナーのチャールズ・ゲイルが加わり、フリー/ジャズの世界へ旅だって行ったのだった。ゲイル氏のテナーの音色が素晴らしく、アルバート・アイラーを彷彿させる威嚇的でねじれた音が特徴的だった。このトリオでは初めてということだったが、非常に良いまとまりを見せていた。それぞれがソロを取る機会を与えられ、思う存分の展開を見せた。パーカー氏とグレイヴズ氏は数ヶ月前に、此処ルーレットでデュオを経験しているが、このふたりがデュオで共演するときは明らかに特別な何かがあるようだ。ミルフォード・グレイヴズがまったく異なる3種のセットで演奏するさまを観たり聴いたりすることは非常に重要な体験となった。彼のように演奏するミュージシャンは彼以外におらず、彼はモダン・ジャズのソウル、スピリット、それに歴史を体現していると言える。この素晴らしいセットが終わると、極めて珍しいことに、チャールズ・ゲイルがミルフォード・グレイヴズの重要性についてコメントしたのだ。ゲイル氏のメッセージが終わると、ミルフォードが、変わらぬ支援を続ける自身の家族に感謝の念を伝えた。妻と、娘、孫娘をステージに上げて紹介し、それに対して満員の聴衆から盛大な拍手が贈られた。素晴らしい、気分の昂揚する瞬間で、18回目を迎えたヴィジョン・フェスティバルの初日を閉めるに相応しいやり方だった。

■ 6月13日(木)
1.
7:00 Maria Mitchell / Terry Jenoure
Maria Mitchell(dance)
Terry Jenoure(violin)
2.
7:45 Roy Campbell’s Akhenaten Ensemble
Roy Campbell(trumpet)
Bryan Carrott(vibes)
Jason Kao Hwang(violin)
Hilliard Greene(bass)
Michael Wimberly(drums)
3.
9:00 Rob Brown U_L Project
Joe McPhee(trumpet, sax)
Rob Brown(alto saxophone)
Miya Masaoka(koto)
Mark Helias(bass)
Qasim Naqvi(drums)
4.
10:00 Roscoe Mitchell Trio
Roscoe Mitchell(reeds)
Henry Grimes(bass)
Tani Tabbal(drums)

 2日目は、ダンスのマリア・ミッチェルとヴァイオリンとヴォイスのテリー・ジェノウルのデュオで始まった。ダンスのパフォーマンスにほとんど出掛ける機会のない者として、心を開いてはいたのだが何が起こっているのか表面的なレヴェル以上の鑑賞をすることができなかった。ミッチェル女史は、いくつかの仮面と人形を付けた奇妙なヴードゥー的なコスチュームを身にまとってゆっくりステージに登場した。ジェノウル女史は、ハイチの彼女のキッチンにいる偉大な祖母について物語りながらステージをゆっくり歩きながらヴァイオリンを散発的に演奏する。彼女の祖母は料理の腕が素晴らしい魔女のような存在のようだ。テリーが語る物語の主人公はフローレンティナと呼ばれ、語られるイメージは目を見張らされるものがある。ミッチェル女史のコスチュームや動きについてはあまり確かな知識はもたないが、ふたりが創造するエキゾチックな世界は、われわれが現在住んでいる現実の世界とはかなりかけ離れていることは確かだった。

 次に登場したのは、ダウンタウンのマルチ・トランペット・マスターであるロイ・キャンベル率いる「アケナトン・アンサンブル」。トランペットとフルートのロイに、ヴァイオリンのジェイソン・フワン、ヴァイブのブライアン・キャロット、ベースのヒル・グリーン、ドラムスのマイケル・ウィンバリーという布陣。オリジナル・メンバーのヴァオリニスト、ビリー・バング(註: 1947.9.20 -2011.4.11)が他界したためにメンバーの移動があったが、このアンサンブルがヴィション・フェストに出演するのは2度目である。キャンベル氏はかつては度々NYで演奏していたものだが、ここ何年かはフランスやアムステルダムで過ごす機会が多かったようだ。彼は、ヴィション・フェストのために自分がすべきことを認識しているので、オールスター・クインテットを編成し、今宵のために新曲を書き下ろしたのだ。彼は鋲を打ったエジプト・スタイルの金赤と金と黒模様のシャツを来て登場したが、演奏のどこをとってもとても創造力を刺激される内容だった。1曲目の<ウォーキング・トゥ・ザ・ピラミッド>は、沙漠を横切って長い旅路の果てにいくつものピラミッドの群れの光景に出会うさまを想起させた。エコーのかかったミュート・トランペット、不気味なヴァイオリンのフレーズの断片、サスペンス溢れる弓弾きのベース、気品のあるヴァイブがソフトなマーチング・ビートにかぶさり、われわれを魔法の絨毯に乗せて中東に連れ出した。ビリー・バングがこの世を去ってまもないが、今やジェイソン・フワンがスポットライトを浴び、ダウンタウンのもっとも忙しいストリング・ヴァーチュオーソのひとりとなっている。キャンベル氏とフワン女史がそれぞれ素晴らしいソロをとり、また、ダイナミックなインタープレイを聴かせた。この音楽はなべて、魅惑的な中東的ヴァイブを醸す内容だった。<ザ・クリエイター>という曲では、ロイはレオン・トーマス的ヨーデルを含むヴォーカルさえ披露した。

 NYで演奏する機会の少ないもうひとりのダウンタウン・マスターはアルトサックスのロブ・ブラウン(註:1962〜)である。このヴィジョン・フェストのためにロブが組んだアンサンブルは「UL プロジェクト」。編成は、ロブの他に、ポケット・トランペットとタナーサックスのジョー・マクヒュー、箏のミヤ・マサオカ、ベースのマーク・エライアス、それにドラムスのカシム・ナクヴィ。
キャンベル氏同様、ロブ・ブラウンも年ごとに違うアンサンブルを組んでくる。ブラウン氏がこのアンサンブルの誰かと共演の経験があるかどうか思い出せないので、また別の楽しみもあるというわけだ。ブラウン氏がウィリアム・パーカーやマット・シップと演奏していた若い頃は、彼の演奏はフリーの要素が強く、火のような息遣いで、スピリチュアルだったというが、ここ数年の演奏スタイルは随分変わってきている。

 セットは、アルト、ベース、ドラムスによるとてもまとまった演奏でスタートし、メロウなポケット・トランペットと箏が加わってエキゾチックな雰囲気を醸し出していった。ドラマーのカシム・ナクヴィは「Dawn of Midi」と名乗るトリオで数年前のヴィジョン・フェストに出演している。彼からは目を逸らすべきではないだろう。彼はすでにたいしたミュージシャンに仕上がっている。彼とベースのマーク・エライアスはこのセットにとって適材だった。ふたりは、成熟した思慮深く表現に富んだやり方でニュアンスや陰影、リズムのテクスチュアを付け加えていった。このセットには魅惑的な瞬間がいろいろあった。例えば、ベースがブリッジの上や下でストリングスをタッピングしながら箏がハープのようにグリッサンドしたり。箏のミヤがドラム・スティックでストリングスを叩き、ドラムのカシムがストロウ・ウィスカー製のスティックで繊細なドラム奏法をみせる。オーネット・コールマンの影響が長いブラウン氏が素晴らしくブルージーなサウンドで緩やかに燃えるマクフュー氏のテナーと絡む。何年も前に、箏の名手マサオカ女史がウェスト・コーストからNYに移住して来て何年も経つが、彼女は今やダウンタウン・ネットワークの重要なポジションを占めるに至っており、発展し続けるわれわれの実験音楽シーンに独自のサウンドを提供している。今年のヴィジョン・フェストで彼女が参加したふたつのセッションは何れも彼女の存在を見せつけてベストのひとつに数えられる。ロブ・ブラウンは録音も多くなく、このセットはとくに傑出していたので、ライヴ収録されリリースして欲しいと思った。

 2日目の最終セットは、「ロスコー・ミッチェル・トリオ」で、ベースとヴァイオリンにヘンリー・グライムズ、ドラムスにタニ・タバールが加わった。このセットでのロスコー・ミッチェルは、アルト、ソプラノ、ソプラニーノのサックス類とフルート、ルネッサンス・ベース・リコーダーを持ち替えて演奏した。ミッチェル氏は、AACM(60年代半ば/註:1965年にシカゴで創立された創造的音楽家の進歩のための協会)とアート・アンサンブル・オブ・シカゴ(60年代後期/註:AACMの尖兵として1969年にパリで活動開始)の創立者のひとりであり、つねに新しいリード楽器の取り込みに熱心で、ジャンルを横断する作曲家、教授でもある。70才代(註:1940年シカゴ生まれ)に入っていることを考えると、何処でいつ演奏しようとも聴衆に挑戦し続ける不断の探求家といえるだろう。ミッチェル氏はインプロヴィゼーションの達人ではあるけれども、彼のセットではさまざまな譜面が使われることが多い。今回のセットは全体を通して一連の流れがあるひとつの組曲風であった。最初のセクションはミッチェル氏のフルートをフィーチャーした、ベースとドラムスが細やかに動くミニマル的室内音楽風であった。次いで、ロスコーは大きなベース・リコーダーに持ち替え、柔らかく浮遊するサウンドを出し、グライムズ氏が弓弾きのベースで合わせ、タバール氏がマレットでメロディアスにドラムを叩いた。ミッチェルがソプラニーノに持ち替えるとヴァイブがさらに変化した。ロスコーがサウンドにベンドをかけて歪ませ、その下でリズム・セクションが旋回しながら柔らかいクッションのようにサポートした。最後にソプラノに持ち変えたミッチェルは急速調で演奏を開始し、さらに速く遠くへ遠くへと旅立ち留まるところを知らなかった。この驚くべきソロは信じられないほど超人的なものであった。ミッチェル氏が選んだこのリズム・セクションは卓越しており、一連の曲の枠の中で完璧な演奏をした。グライムズ氏の驚異的なヴァイオリンとタバール氏のダイナミックなドラムスをフィーチャーしたセクションでは、ソロやデュオでふたりは緊密なコンビネーションを見せた。ロスコー・ミッチェルはサーキュラー・ブリージング(循環呼吸法)とマルチ・フォニックス(重音奏法)のパイオニアのひとりである。最後のソプラニーノのソロは独自のやり方でベント音を連ねた信じがたい出来であった。このセットは長い夜の最後を飾るに少々重た過ぎの感は否めなかったが、彼のトリオは素晴らしく、強烈で、圧倒的であった。(ブルース・ギャランター@ダウンタウン・ミュージック・ギャラリーNY/訳責:稲岡邦弥)

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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
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#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

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