Live Report#571

Urban Connection 2DAYS
2013年8月25日(日)新宿 Pit Inn
Reported by 剛田 武 Takeshi Goda
Photos by 前沢春美 Harumi Maezawa

アーバン・コネクション:
ヨナス・クルハマー(ts)
スタイナー・ラクネス(b)
ホーコン・ミョーセット・ヨハンセン(ds)
オープニングアクト:太田惠資(vn,vo)+石田幹雄(p)         

強烈なグルーヴを伴って電圧高めの電撃バップ演奏が炸裂する

21世紀に入ってから北欧ジャズの日本における人気が定着してきた。自国の文化の輸出に熱心な北欧各国では、ジャズ・アーティストの海外ツアーにも援助体制がある。若手でも政府の助成金で日本ツアーが出来る、といううらやましい状況である。
60年代からスカンジナビアは透明な空気感のある音作りで知られていた。最も有名なのは「静寂の次に美しいサウンド」を掲げて独特の美学を追求するECMの作品の多くがノルウェーのオスロにあるレインボー・スタジオで録音されていることだろう。ヤン・ガルバレク、テリエ・リピダル、アリルド・アンデルセン、ヨン・クリスチャンセンなど設立時から北欧のミュージシャンを擁していたECMの静謐なイメージはこのスタジオの立地に大きな要因がある。決して大ヒットするわけではないが、北欧は即興音楽・現代音楽の産地として心あるファンの注目を集めてきた。
そんな北欧のジャズ・シーンが再び大きく注目されたのは、90年代のフューチャー・ジャズの勃興だった。ダンス・ビートやエレクトロニクスを取り入れてはいたが、核になる生演奏はやはり透明感に満ちたECM的なサウンドだった。”New Conception Of Jazz”を標榜するブッゲ・ヴェッセルトフト主宰のJAZZLANDを中心に、Smalltown Supersound(ノルウェー)、 Straight Ahead(スウェーデン)、COMPOST(ドイツ)といったインディ・レーベルから新世代ジャズ・サウンドが登場した。
21世紀に入るとその流れはクラブと即興の両ベクトルへ拡散していく。クラブ系はエレクトロニカ/ポストロックに接近し、ダンスフロアのクールな陶酔感を産み出した。即興派はエレクトロビートを人力ドラムに差し替え、60年代フリー・ジャズと7,80年代欧州即興の要素を兼ね備えた強烈なヒューマニズムを追求する。
フューチャー・ジャズはジャンルを超えて人気を博し、北欧のアーティストの来日が増えて以来、毎年のように来日し、日本のミュージシャンと共演を繰り広げるポール・ニルセン・ラヴ(ds)やマッツ・グスタフソン(sax)をはじめ、様々な個性派アーティストが次々来日するようになった。
今回はノルウェーの新世代ビバップ・トリオ、アーバン・コネクション。1998年に結成された彼らの2003年、2004年に続く3回目の来日公演。今年に入ってサックス奏者がアルトのフローデ・ニーモからテナーのヨナス・クルハマーに変わり、新編成での顔見せ公演となった。不勉強ながら過去2回の来日は観ていないが、記録によるとその強烈な演奏の存在感が強い印象を残したとのこと。
それぞれがヨーロッパのジャズ界で活躍する名手揃いの実力派トリオの演奏はとにかくエネルギッシュ。ハイ・ヴォルテージ・トリオとはよく言ったもので、まさに電圧高めの電撃バップ演奏が炸裂する。ジャズのルーツを辿ればダンス音楽だったことを思い起こさせるワクワクした歓び溢れる演奏を展開。北欧の現代ジャズといえばフリー・ジャズのイメージが強いが、彼らの演奏はその一昔前のビバップの影響が色濃い。全盛期のチャーリー・パーカーを彷彿させるほど激しく吹き捲くるサックスに、柔軟性に富んだビートでロールするドラム、歌いながら超絶フレーズを畳み掛けるベースの三つ巴が見事にスウィングする。しかもメンバー同士楽しそうに笑顔でアイコンタクトを取りながらの演奏は、余りの躍動感に踊り出したくなる。この強烈なグルーヴはオールスタンディングのクラブで演奏するのが相応しい。次回は観客を巻き込んだダンス大会を期待したい。(剛田 武 2013年9月18日記)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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