Live Report #576 |
エンリコ・ピエラヌンツィ・トリオ |
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1949年ローマ生まれのピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィの名前を強く意識したのは、西山瞳(p)の最も敬愛するミュージシャンであると聞いたときであった。そのため、2004年3月にマーク・ジョンソン(b)、ジョーイ・バロン(ds)との初来日は、まだ意識することなく見逃してしまい。2011年5月の来日は震災で延期となり、ようやく9年ぶり2回目の来日で、初めてエンリコのライブを聴くことができた。最終日第一部は満席ではないものの熱心なファンが集まり熱気と緊張感と居心地の良さが同居していた。観客の視線がいつになく熱く、来日を待ちきれなかったという空気があり、勝手な想像だが自らピアノを弾く人も多かったのではないだろうか。実力の割に日本での知名度が高いとは言い難いエンリコにこれだけ熱いファンが集まることに感銘を受けた。会場には西山の姿もあったが結局6公演全部観に行ったそうだ。第二部には山中千尋(p)も来ていたようだが、山中はブラッド・メルドー・トリオに先駆け、ラリー・グレナディア、ジェフ・バラードと2002年に『When October Goes』(澤野工房)を録音、相性の良い3人による名演となりその後も共演を続けている。なおラリーとジェフの最近のプロジェクトとしては、サックスのマーク・ターナーと組んだ「FLYトリオ」があり『Year Of The Snake』(ECM2235)をリリースしている。
一曲目<Autumn Song>から軽快にエンリコ独特のメロディーが流れ出す。今回の公演では日によって異なるスタンダードも演奏されていたようだが、このセットでは、コール・ポーター作曲の<Everything I Love>と<I Love You>をとりあげていた。エンリコはフェデリコ・フェリーニ監督作品の音楽を集めた『フェリーニ・ジャズ』をリリースしているが、ここでは1954年公開の映画『道/La Strada』からニーノ・ロータ作曲のテーマ曲<La Strada>を甘美に演奏する。ラリーもテーマを歌うように弾いていた。<Improvisation>は、最初ベースは弓で、ドラムスはマレットで始まり、テンポがない完全な即興演奏だったようだ。
アンコールに演奏された<Castle of Solitude>は、エンリコが美しく切なく歌い、ラリーが絡み、ジェフのシンバル・レガートが美しく響く。豊かな余韻の残る素晴らしい一曲となった。
初めて聴いたエンリコのライブ。期待していた以上にすばらしい経験だった。独特のタイム感と溢れ出るピアノのフレーズとタッチに強い印象を受けた。ラリーとジェフもそれに的確に反応するインタープレイを聴かせてくれた。何よりもとても居心地のよい時間だった。
最新作『Permutation』(Cam Jazz/King International)は、アントニオ・サンチェス(ds)、スコット・コリー(b)により録音されており、こちらのトリオでの来日も期待したい。また機会があれば、ケニー・ホイーラー(tp、flgh)との共演も観てみたい。このあとトリオはソウル公演へ向かったが、今回、日本でも充分な集客があることがわかり、韓国でも公演が可能なのであれば、ぜひ毎年、せめて隔年での来日を望みたいと思う。
エンリコ・ピエラヌンツィ・トリオ
コットンクラブ東京 初日ライブ映像
http://youtu.be/LwV0UG8WYEs
エンリコ・ピエラヌンツィ 公式ウェブサイト
http://www.enricopieranunzi.com
ラリー・グラナディア 公式ウェブサイト
http://larrygrenadier.com
ジェフ・バラード 公式ウェブサイト
http://www.jeffballard.com
FLY / Year Of The Snake (ECM2235)
http://player.ecmrecords.com/fly-trio
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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