Concert Report #584

東京フィルハーモニー交響楽団 第838回 オーチャード定期演奏会
2013年9月22日(日) オーチャードホール
Reported by 藤堂 清

曲目
ロッシーニ :歌劇《セミラーミデ》序曲
ストラヴィンスキー :バレエ組曲《プルチネルラ》
メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調《スコットランド》作品56
(アンコール)ロッシーニ:歌劇《チェネレントラ》序曲

指揮:園田隆一郎
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
        

「巨匠ゼッダがいざなうメンデルスゾーンへの旅 第2弾」というのが、このコンサートに付けられたタイトルであった。ロッシーニ研究の権威であり、ペーザロのロッシーニ音楽祭でも中心的な役割を果たしてきているアルベルト・ゼッダが、ストラヴィンスキー、メンデルスゾーンといった作曲家をどのように聴かせてくれるのだろうという期待と多少の不安を持って当日を待っていた。
残念ながら、ゼッダが体調不良ということで、演奏会の直前になって指揮者が交代ということになってしまった。代役の園田隆一郎は、ペーザロやヴィルトバートのロッシーニ音楽祭で、ゼッダの厳しい目(耳?)のもとでオペラなどの指揮をしており、適任と考えられたのだろう。

一曲目の《セミラーミデ》序曲は彼の経歴に合致したもので、表情のしなやかさ、盛り上げていくところのキメなど、「このままオペラが聴きたいな。」と思わせるものであった。
二曲目の《プルチネルラ》はバレエ音楽全曲ではなく、そこから抜粋されたオーケストラのみの組曲版。ペルゴレージ(等)の原曲にストラヴィンスキーが加えた大胆なデフォルメも、「今の耳で聴けばごく自然な音楽、ほら足が動きだすでしょう!」とでもいうように、オーケストラをもしっかりリズムにのせていた。
後半の《スコットランド》は、オーケストラ自体のコントロール、楽譜の再現という意味ではまとまっていたのだが、私のイメージするこの曲のほの暗さや、ダイナミクスの大きさとは違う、少し大人しいものとなっていた。
この曲に関しては、ゼッダの指揮によって彼のプログラミングの意図を知りたかったという気持ちが残った。

ゼッダは、8月末にペーザロで《湖の女》の指揮中に体調不良となり、予定外の休憩を入れて最後まで振ったということだった。おそらく、その時点までは来日するつもりであったのだろうから、園田は本当に短い期間で立派に代役を果たしたと言えるだろう。
観客の温かい拍手に応えてアンコールが演奏された。《チェネレントラ》序曲。このウキウキ感。短い曲の中に、続くオペラのすべてがつまっていて、それが、ポンポンと飛びだしてくる。
やはりこの人はオペラを聴きたい!

藤堂清 kiyoshi tohdoh
東京都出身。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。ソフトウェア技術者として活動。オペラ・歌曲を中心に聴いてきている。ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのファン。ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの《若き恋人たちへのエレジー》がオペラ初体験であった。

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