Concert Report #590

迫 昭嘉ピアノ・リサイタル
2013年10月3日 浜離宮朝日ホール
Reported by 丘山万里子

<曲目>
 J.S.バッハ:イタリア協奏曲へ長調BWV971
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番へ短調Op.57「熱情」
 リスト:巡礼の年第1年「スイス」より
  第6曲 オーベルマンの谷
  第8曲 郷愁
 グラナドス:ピアノ組曲「ゴイェスカス」より
  第3曲 ともし火のファンダンゴ
  第5曲 愛と死
  第7曲 わら人形
<アンコール>
 レスピーギ: イタリアーナ
 ファリャ: 「恋は魔術師」から「火祭りの踊り」         

 東京芸大卒で、1980年ジュネーブ国際コン最高位(1位なしの2位)、1983年ハエン国際コン優勝ならびにスペイン賞受賞の実力派ピアニスト。室内楽のほか、近年は指揮者としての活動も行い、東京芸大などで後進の指導にもあたっている。
 バッハ、ベートーヴェン、リスト、グラナドスと、盛りだくさんなプログラムである。スペインのコンクールで優勝しただけあって、グラナドスに思い切りのよい演奏を示したが、筆者がいちばん惹かれたのはベートーヴェンの「熱情ソナタ」。2001年にはデビュー20周年を記念し、ベートーヴェン・ソナタ・全曲チクルスを行っているから、やはり自信があるのだろう。第1楽章、骨格のはっきりしたシンフォニックな響きで、まず耳をひきつける。指揮者としての活躍もむべなるかな、と思わせる音の明確な構築である。アンダンテ楽章の変奏形式もニュアンスゆたかに処理してみせたが、そのまま突入した第3楽章の最後の追い込みが凄かった。駆け上り駈け下る音の奔流はふつふつとたぎり、終盤のプレストのコーダにむけて火がついたようにひた走る。音楽の基礎体力が頑健だから、どんなに飛ばしても音はクリアそのもの。最後の一音は、荒事の歌舞伎役者が大見得を切るごとく。お見事!であった。
 後半のリスト2曲は、絵画的な中にも華やかな技巧を織り込み、流麗なピアニズムを披露。グラナドスの「ともし火のファンダンゴ」は原色の絵具をぶちまけるような色彩の乱舞とリズムの弾力が生き生きとした魅力を放つ。いかにもスペイン風の情熱的な舞曲に仕上がった。一方、「愛と死」は決闘に破れた恋人の死を嘆くメロディの切なさが心に染みる。飛び跳ねるわら人形を模した「わら人形」もリズミックな躍動が快活にはじけた。
 筆者としては、バッハのかわりに、もう1曲ベートーヴェンを、リストのかわりに、スペインものをあと数曲聴きたかった。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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