Concert Report #600 |
東京都交響楽団 第759回 定期演奏会Aシリーズ |
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曲目 |
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ドヴォルジャーク(プログラムの表記に従っておく)の《スターバト・マーテル》は、19世紀に作曲された同名の宗教曲のなかで、ロッシーニによるものと並び演奏される機会が多い。18世紀の作品であるA.スカルラッティやペルゴレージの独唱と小編成のオーケストラという形式と比べると、管弦楽の編成も大きく、合唱の役割の重要さなど、教会での典礼ではなくコンサートでの演奏を目指した曲となっている。この "Stabat mater dolorosa" に始まる20節のラテン語の典礼文は、十字架に懸けられたイエス・キリストの死を嘆き悲しむ聖母マリアを歌うものだが、ドヴォルジャークはそれを10曲にまとめている。
この日の公演の指揮者、ソリスト、合唱は、スロヴァキア(あるいはチェコ)からの来日であり、音楽的な均質性という点でメリットがあった。スワロフスキーの作る音楽は、しっかりとした骨組の上に、余計な脂肪分をつけない筋肉質なもので、オーケストラは出だしから高い音圧で弾きだし、全曲とおしてだれるところがなかった。スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団はザルツブルク音楽祭に出演するなど国際的に活動しており、ここでも安定したハーモニーを聴かせてくれた。歌の精緻さではもっと上手い合唱団はあるだろうが、声の響きの同質性が実際のヴォリューム以上の音圧を生み出していた。ソリストの歌は各パート1曲ずつとそれほどウェイトは大きくないが、それぞれ自らの聖母への願いを歌う部分で、一人称の歌である。4人ともかなり踏み込んだ歌を歌ってくれた。なかでも、テノールのオトカール・クラインとメゾソプラノのモニカ・ファビアノヴァーは、彼ら自身の気持ちをよく歌い伝えてくれたように思う。
最後の "Amen" の音が消えた後、しばしの静寂があり、その後大きな拍手が拡がっていった。コンサートホールであっても、こういった祈りが伝わるのだと感じられた。
レオシュ・スワロフスキーは、2010年に東京都交響楽団の特別公演で、スメタナの歌劇《売られた花嫁》を指揮している。この時も彼のがっちりと骨太な音楽に感心したが、今回も同じ感想をいだいた。プログラムの記述によれば、2014年よりセントラル愛知響音楽監督に就任ということだが、今後の東京での活躍も期待したい。
藤堂 清 kiyoshi tohdoh
東京都出身。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。ソフトウェア技術者として活動。オペラ・歌曲を中心に聴いてきている。ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのファン。ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの《若き恋人たちへのエレジー》がオペラ初体験であった。
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