Concert Report #610

日生劇場開場50周年記念《特別公演》
読売日本交響楽団創立50周年記念事業
二期会創立60周年記念公演
2013年11月9日(土)〜10日(日) 日生劇場
Reported by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林 喜代種(Kiyotane Hayashi)

曲目
アリベルト・ライマン:オペラ 《リア》

指揮:下野竜也
演出:栗山民也
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:二期会合唱団
装置:松井るみ
衣装:前田文子
照明:服部基
ドラマトゥルク:長木誠司

キャスト
リア:小森輝彦(8,10) 小鉄和弘(9)
ゴルネリ:小山由美(8,10) 板波利加(9)
リーガン:腰越満美(8,10) 林正子(9)
コーディリア:臼木あい(8,10) 日比野幸(9)
フランス王:小田川哲也(8,10) 近藤圭(9)
オルバニー公:宮本益光(8,10) 与那城敬(9)
コーンウォール公:高橋淳(8,10) 高田正人(9)
ケント伯:大間知覚(8,10) 小林大作(9)
グロスター伯:峰茂樹(8,10) 大久保光哉(9)
エドマンド:小原啓楼(8,10) 大澤一彰(9)
エドガー:藤木大地(全日)
道化:三枝宏次(全日)         

なんと厳しく激しい音楽だろう。第一部第三場で嵐の中をさまようリアの歌とその心象風景を表すオーケストラ。このオペラの山場であり、聴かせどころ。声は、強大なオーケストラの音に埋もれることなく、リアの狂気を伝える。
すべての場面で、ライマンの音楽は歌手にやさしく書かれている。声が響かせやすいような配慮が十分になされている。リアの3人の娘、ゴルネリは強い声のメゾ・ソプラノ、リーガンはヒステリックに聞こえる高い声を持つソプラノ、コーディリアはやわらかな声のソプラノといったように書き分けられ、それぞれの登場場面でのオーケストラもそれに見合った音楽となっている。
場面も、第一部が4場、第二部が5場(同時進行する場面を一つと考える)と、話題の切り替え、音楽の移行が短い単位で行われ、わかりやすい。むずかしい「現代オペラ」という印象はあまり感じられず、それが各地で公演が行われる理由の一つなのだろう。
今回の公演では、日生劇場のオーケストラ・ピットがこのオペラの要求する編成を入れるには狭すぎたため、舞台の右と左に管楽器と打楽器を置き、ピットを高くして弦楽器とハープを入れるという形をとった。このため歌手の演技する舞台は中央の狭い部分に限定された。これは結果的に聴衆の視覚を限定することにつながり、少ない装置で、また少ない動きで場面がつくられることとなった。第2部の第2〜4場のように複数の場面が同時進行するところでは、もう少し工夫の余地があるかもしれないが、全体として理解しやすい演出であった。
音響面では、金管楽器やティンパニが後ろの方に下がることで、ピットに入った場合とは違うバランスになっていたように感じた。私には三分割されたオーケストラという形が、歌手の歌いやすさというメリットがあったのではないかと考えている。また、オーケストラ全体の音量のバランスでも効果的だったと思う(想定外ではあろうが)。 私は3回の上演のうち、9日と10日の公演を聴いた。
演奏の点では、まず、下野竜也指揮の読売日本交響楽団の充実と安定感を取り上げたい。下野の準備がこの公演の水準を高いものにしたといえるだろう。読売日本交響楽団もそれにたいへんよく応えていた。
歌手では、エドガーを歌った藤木大地のカウンターテナー(狂気をよそおう場面)の歌に引き付けられた。盲目となった父を導く場面での歌唱は国際的にも通用するのではないだろうか。
主役のリアに関しては、ドイツ語の語り、響きといった点で、小森輝彦に一日の長があった。その他の歌手に関しても、10日のキャストの方が安定感があった。
ただ、コーディリア役が両日ともに存在感がうすく感じられたのは少し残念であった。
昨年の《メデア》に続く、今回の《リア》の上演、作曲者であるアリベルト・ライマンが立ち会って行われ、最終日までカーテンコールに応えていた。
こういった取組が継続的に行われることが、日本のオペラ活動の厚みをふやしていくことにつながることを期待したい。

余談ではあるが、昨年亡くなったフィッシャー=ディースカウ(リアの創唱者)が残したビデオ・メッセージが日生劇場のサイトにあるのでご紹介しておこう。
http://www.nissaytheatre.or.jp/nissay_opera/news/2012/07/news-529.html

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
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