Live Report #638

ミュージアム・コンサート「パリが愛したジャズの薫り」

2014年1月11日(土)15:00〜16:00 秋田県立美術館2Fミュージアム・ラウンジ
Reported & photographed by 竹ノ内和久

早川泰子 (p)
山下弘治 (b)

1 風のささやき
2 How High The Moon
3 危険な関係のブルース
4 パリの午後
5 パリのアメリカ人〜パリの大通りで〜
6 I Love Paris
7 Take The “A” Train
〜アンコール〜
シェルブールの雨傘         

「秋田県立美術館」は、安藤忠雄の設計により、平成25年9月に本オープンとなった新しい美術館。1月19日放送のNHK「日曜美術館」でも取り上げられたが、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の大壁画「秋田の行事」の展示をメインに据えて、地域の文化情報の発信を担う拠点として期待されている。
 今回のコンサートは、2月2日まで開催されている企画展「レオナール・フジタとパリ」の開催に合わせて、美術館が主催したもので、秋田で活動するピアニスト早川泰子とベースの山下弘治のデュオで行われた。
 今回は、美術館での開催ということもあり、オーディエンスが必ずしもジャズ・ファンとは限らなかったので、曲目・演奏共により親しみやすい内容となっていたが、ラウンジには当初予定した人数の倍近くが入り、立ち見も出る盛況であった。

 早川泰子は、孤高のバップ・ピアニストと言われた大野三平に師事し、さらに自己のスタイルを磨き上げてきたピアニストで、ビル・エヴァンスやキース・ジャレットなどの影響をほとんど受けていない、現在の日本のジャズ・シーンでは割と珍しい存在となっているかも知れない。プレイ・スタイルは最近ではより「思索的」なフレーズ展開からアドリブを構築する傾向が強くなってきているようだ。左手の力強いバッキングと合わさって、一般的な女性ピアニストとは一線を画すパワフルな演奏を添加している。
 ベースの山下弘治は、国内でも評価の高いプレイヤーだが、常に冷静沈着でシュアなサポート役に徹するスタイルを貫いている。最近気がついたのだが、山下弘治がグリッサンドを使ったのを聴いたことがない。また重音でのフレージングも非常に少ない気がする。アドリブのソロの場面でもほとんど出てこない。単なる本人の癖なのかちょっと不明だが、たしかにやたらとグリッサンド、スライドを多用するベーシストもいて、時に耳障りに感じることもある。山下自身が、それを感じて避けているのかも知れない。

 早川泰子のレギュラー・グループとしては、山田譲(as)、山下弘治(b)、勘座光(ds)のカルテットで都内でもたびたびライブを行っている。

美術館ホームページ
http://common.pref.akita.lg.jp/art-museum/

竹ノ内和久(たけのうち かずひさ)
稲田大学第一文学部卒。学生時代に複数のジャズ喫茶のバイトを経験。出版社勤務の後、秋田に帰郷。タウン誌発行会社などの勤務の後、現在、有限会社スタジオウェブ代表取締役。ウェブ制作とフリーペーパー発行の仕事をしつつ、地元で不定期にジャズ・ライヴを自主的に企画開催中。



冬空の美術館外観




企画展とコンサートのフライヤー
















ふだんはこんな感じ(美術館HPから)


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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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