西山瞳が2013年11月にアルバム10枚目にして、初のソロピアノアルバムとしてリリースした『Crossing』。西山は敬愛するエンリコ・ピエラヌンツィの演奏を通じてイタリアのピアノFAZIOLIと出会い、FAZIOLIでの録音にこだわった。そして『Crossing』は、2013年５月28日に仙川アヴェニューホールのFAZIOLI F228 Silverで収録された。今回のレコ発コンサートは、録音と同じホール、ピアノでのコンサートとなり、アルバムの音を生で確かめる貴重な機会となった。
アルバム１曲目の＜Monochrome Flowers＞から始まる。『Crossing』は、いつもの西山以上に、切ない気持ちにさせる曲がたくさん詰まっているが、まさにいきなり切なくさせる一曲だ。＜Call＞、そして武満徹の＜めぐり逢い＞へとつないでいく。武満の歌を３曲取り上げており、個人的には武満の歌を『石川セリ／翼　武満徹ポップソングス』で聴いていたが、なんていい歌を書くのだろうと思う。
西山のピアノから紡ぎ出される＜SAKIRA＞、山田耕筰の＜からたちの花＞が深く心に響く。最後は＜Aprilis＞で締めくくられ、アンコールではまだ名前のない新曲が演奏されたが、のちにDrifting Petalsと名付けられていた(『Ralph Towner / Solstice』(ECM1060)に同名異曲がある)。
『Crossing』の録音では、西山が自然にできる音楽、弾きたいと思う曲を集め、26曲59テイク録音したが、その選曲にあたっては「意図せず自分が日本人だということを深く再確認することとなった。」という。今回のコンサートでも、西山のピアノでこれまで耳にしてきたヨーロッパ的な感性からの美しさと、日本の歌がもつ美しさと切なさの両方がシームレスに、柔らかく優しく響く。私たちの心の奥深くに沁み込んでいき、さまざまな記憶や想いを呼び起こし、心が乱され、心が落ち着く。ジャズというアメリカ的かつ世界共通のフォーマットを借りながら、日本人の心の奥底に響く独特な音楽。それは西山にとってもリスナーにとっても一つの到達点であり、新しい出発点であると思う。ピアノトリオ、ソロを中心に、東かおるとの『Travels』のりリース、安カ川大樹とのデュオなどさまざまなプロジェクトで表現の幅を拡げている西山の今後の活躍に期待したい。

【JT関連リンク】
西山 瞳『Crossing』
http://www.jazztokyo.com/five/five1058.html
西山 瞳＆橋爪亮督 デュオライブ
http://www.jazztokyo.com/live_report/report565.html

【関連リンク】
西山 瞳 公式ウェブサイト
http://hitominishiyama.net
西山 瞳 ピアノソロ楽譜集
http://blog.livedoor.jp/hitomipf79/archives/52255988.html
東かおる＆西山 瞳『Travels』試聴
http://youtu.be/7RDTZhHmwoI

Meantone Records MT-005
(販売：ディスクユニオン)
2013年11月13日発売　2,520円(税込)


西山 瞳トリオ／Sympathy (Meantone)


東かおる＆西山 瞳 / Travels (Apollo Sounds)


西山 瞳　ピアノソロ楽譜集
（数量限定、ライブ会場でのみ発売）
http://blog.livedoor.jp/hitomipf79/archives/52255988.html