Concert Report #687 |
エフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタル |
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<曲目> |
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触れたら壊れそうなくらい敏感で儚げな感性をそのまま音に映し出していた少年期から、力の誇示に傾いた青年期、そして今40歳を越えたキーシンは、落ち着きのなかに、もっぱら響きの多彩を追求するピアニストへと歩を進めているようだ。彼の出自たるロシアのリリシズムに色彩豊かな音響世界をひろげるスクリャービンは、ちょうどぴったりの選曲と言えよう。後半の最初に置かれた『幻想ソナタ』は、2楽章構成の短いものだが、海をイメージしての印象派風の書法が精妙に描き出され、当夜の一番の聴きものとなった。第1楽章アンダンテ、夜の海の黝(あおぐろ)い面に、きらめく月の光が虹色の輝きを放ってさわさわと波立つ。ジョルジュ・スーラの点描画法を思わせるその微細な色の饗宴に、ときおり打ち込まれる左手の硬質な打鍵が、どことない不安を掻き立てるところに、ふと少年期のキーシンを思い出す。第2楽章プレストの嵐は、無窮動なパッセージの駆け上り、駈け下りが荒々しい飛沫をあげ、激しい情動で圧倒、スケールの大きなファンタジーを繰り広げた。これをただの力でなぎ倒さず、周到なディナミークでコントロールしているところに、彼の現在の安定が見えようか。『12の練習曲』では、スクリャービンが恋人を思って書いたという第8番の、心の裡をとつとつと語りかけるようなレントがいかにも優しく、魅力的だった。
前半のシューベルトは、いわゆるシューベルトらしいたっぷりした歌謡性があまり見られない作品だが、どの楽章にも簡潔な歌は仕込まれているのであって、それをキーシンは丁寧に際立たせ、美しく聴かせた。第3楽章スケルツォの風にそよぐ若葉が踊るような清新な躍動も印象的だ。
だが、聴き終えて思う。あまたいる国際的ピアニストのなかで、何がキーシンをキーシンたらしめるか。響きのパレットで売る奏者はほかにもいるし、無比のテクニックだっていまどき、耳目はひかない。NYのカーネギーホールがスタンディング・オベーションとなったというその同じプログラム。NYの聴衆は彼の何に熱狂したのか。スクリャービンのソナタで一瞬感じたあの少年期のおののきは、私の心を動かしたが、それ以外、音楽はどんなに激しても、繊細を極めても、たださらさらと綺麗に流れ過ぎて行き、ついに私の心身を引きずり込むことはなかった。それはなぜ?
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
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カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
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#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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