Concert Report #705

第10回 イマジン七夕コンサート2014
ルネ・コロ さよならコンサート

2014年7月7日(月)サントリーホール 大ホール
Reported by 藤堂 清
Photos by 林喜代種

曲目
第1部 生誕201年目のワーグナー

1)歌劇「さまよえるオランダ人」より
序曲 【オーケストラ】
ゼンタのバラード「ヨホヨホ!帆が血のように赤く」 【蔵野蘭子】
2)楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より
第1幕への前奏曲 【オーケストラ】
マイスター達をあなどらないで、あなたがたのドイツのマイスターたちを尊敬してください 【小松英典】
3)歌劇「タンホイザー」より
大行進曲「歌の殿堂をたたえよう」 【オーケストラ】
ローマ語り 【ルネ・コロ】

第2部 楽しきかなオペレッタ

1)ウィーン我が夢の街(ジーツィンスキー) 【蔵野蘭子】
2)「伯爵家令嬢マリツァ」(カールマン)より
序曲 【オーケストラ】
ウィーンへ愛をこめて 【小松英典】
ジプシーよ来たれ 【ルネ・コロ】
3)「ボッカチオ」(スッペ)より
恋はやさし野辺の花よ 【小松英典、城守香】
4)「ガスパローネ」(ミレッカー)より
真紅のバラ 【小松英典】
5)「こうもり」(J.シュトラウスII)より
第2幕の序曲と合唱の部分 【オーケストラ】
僕はお客を招くのが好きで 【城守香】
6)「メリー・ウィドウ」(レハール)より
序曲 【オーケストラ】
マキシムへ行こう 【ルネ・コロ】
ヴィリアの歌 【白川佳子】
フレンチ・カンカン〜「天国と地獄」(オッフェンバック)より 【オーケストラ】
唇は語らずとも 通称メリー・ウィドウ・ワルツ 【ルネ・コロ、白川佳子】
7)皆でフィナーレ
ぶどう酒の燃える流れに〜「こうもり」(J.シュトラウスII)より 【ルネ・コロ、小松英典、白川佳子、蔵野蘭子、城守香】

何という歌手だろう。
ルネ・コロ、1937年11月生まれだから、もうすぐ77歳。<さよならコンサート>と銘打っているし、さすがに声の衰えや歌のくずれは隠せないだろと思いながら臨んだコンサート。そんな考えは、第1部最後の『ローマ語り』でどこかに吹き飛ばされてしまった。
声の厚みと均一な響き、まったく衰えを感じさせない高音、そして何より言葉の明瞭なこと。ローマに近づくにつれ高揚していく気持ち、法王による断罪の言葉、そして再び禁断の地ヴェーヌスベルクへの道を希求するときの表情など、タンホイザーの語っている内容が直接伝わってくる。とくに法王の「ウェーヌスベルクへ行ったものには決して救済はない。」という言葉は吐き捨てるように語られ、自分がその場に居合わせたかのように感じられた。彼のこの歌、20年以上も前に聴いているが、その時以上に密度が濃く、圧倒的であった。
ルネ・コロは、祖父、父がベルリン・オペレッタの作曲家だったということもあり、オペレッタから歌手生活をスタートした。その後ワーグナー歌いとして、徐々に重い役をレパートリーとしていった。日本の聴衆の前に登場したのは、1987年のベルリン・ドイツ・オペラの『ニーベルングの指輪』公演でのジークフリート。その後も、パルジファル、トリスタンなどを舞台で歌うとともに、『詩人の恋』などの歌曲の夕べ、ワーグナーのオペラ・アリアの夕べなど、たびたび日本を訪れ楽しませてくれた。彼の声は、いわゆるヘルデン・テナーの重い声とは異なり、柔軟性がありつややかな輝きがあった。その声が今も健在であることを示してくれただけでなく、音楽の表現という面でいえば、今も進化している。おそれいりましたというしかなかった。
第2部のオペレッタの部分で彼が歌ったのは、初期のころのコロが録音や映像収録に加わっていた曲。『伯爵家令嬢マリツァ』(という訳が良いかどうか?)や『メリー・ウィドウ』でも彼の甘い声は健在であった。
最後に彼のアンコールを期待していたのだが、こういったイベントの中では難しかったのだろう、残念ながらアンコールはなかった。
このぶんだと、<さよならコンサート>(!?)での来日が、まだ何回かありそうな気がする。

藤堂清 kiyoshi tohdoh
東京都出身。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。ソフトウェア技術者として活動。オペラ・歌曲を中心に聴いてきている。ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのファン。ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの《若き恋人たちへのエレジー》がオペラ初体験であった。

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