Live Report #719

JAZZ ART せんがわ2014

2014年9月6日(土) 7日(日) 調布市せんがわ劇場
Text & Photos by 横井一江(Kazue Yokoi)

「JAZZ ARTせんがわ」も今年で7回目。最初は仙川という街とこのフェスティヴァルが私自身の中でもなかなかしっくりこなかったが、今では関連企画も含めて街に馴染んだ感がある。おそらく地域の人々にも路上に出現する「CLUB JAZZ屏風」のようなここでしかない(一般の人々にとっては)奇妙なプロジェクトを含めて、ローカル・イベントとして認知されているのではないだろうか。これはあくまでも感覚的なものだが、フェスティヴァルが始まったばかり頃の道行く人々のヒンヤリとした目線を今では感じなくなったからである。

今年は開催日程が一日減って、2日間となってしまったのはとても残念である。それでも、たまたま日程が重なってしまった大規模なジャズ祭「東京ジャズ」とは正反対の、大物が次々と出演するような「興業」ではない、音楽と真っ正面から向き合っているミュージシャンが集合するフェスティヴァルが東京の郊外で続いているのは嬉しいことだ。今年も海外から参加したミュージシャンがいて国際性を出していたが、それらがアメリカ在住のイタリア人パーカッション奏者アンドレア・チェンアタッツィオと坂田明、藤原清登とのトリオ、インドネシア人のルリー・シャバラとヴキール・スヤディーのユニット“センヤワ”と内橋和久の共演、またフランス在住のトランペット奏者沖至とヒカシューの共演だったりするのが、「JAZZ ART せんがわ」らしい。お仕着せではない、「ここで何か」「ここだからこそ」という発想が、そして音楽家同士の出会いが、海外勢と日本人との共演に限らずプログラムから読み取れる。今年のプログラムでは、3名のプロデューサー、巻上公一、藤原清登、坂本弘道それぞれがキュレートしたステージにテーマをつけていた。1日目は[eyes]、[ears]、[nose]、2日目は[hands]、[mouth]、[legs]。そのようなテーマがあると、ステージを見終わった後につい謎解きのような気持ちでついあれこれ考えてしまった。音楽はまた身体的なものでもあるからだ。また、「子どものための音あそび」や「サンデー・マティネ・コンサート」のような地域の人々を主な対象としたプログラムが今年も取り入れられていることは、ローカルから次世代へという意味でも意義のあるものだと思う。

昨年までは、「JAZZ ARTせんがわ」の会場はせんがわ劇場とJenny’s Kitchenの二箇所だったが、今年はJenny’s KitchenのほうはLAND FES、またタイニーカフェの灰野敬二ライヴと共に「同時開催イベント」という位置づけだった。Jenny’s Kitchenのプログラムのように実験的、あるいはよりマージナルな音楽が聴けるのはこちらのほうで、エッジなシーンを切り取るプログラムがあることは貴重だ。仙川劇場のプログラムと合わせて、東京のライヴ・シーンのリアルな広がりが垣間見えるので、これもまた「JAZZ ARTせんがわ」というイベントの欠かせない一部と言っていいだろう。

今年の「JAZZ ARTせんがわ」もバラエティに富んだプログラムで、目を耳を五感を楽しませてもらった。継続することは意味がある。来年もまたこのイベントで「出会い」があることを期待したい。

なお、個別のステージ・レポートは、剛田武と多田雅範が書いているので、それをお読みいただきたい。
http://www.jazztokyo.com/live_report/report720.html
http://www.jazztokyo.com/live_report/report721.html
http://www.jazztokyo.com/live_report/report722.html

【9月6日@せんがわ劇場】
巻上公一 センヤワ 巻上公一、沖至
巻上公一、沖至 沖至 ヒカシュー+沖至、センヤワ+内橋和久
アンドレア・チェンタッツォ 藤原清登、坂田明、アンドレア・チェンタッツォ 藤原清登
藤原清登、坂田明 坂田明 アンドレア・チェンタッツォ

【9月6日@Jenny’s Kitchen】
歌女(高岡大祐、石原雄治、藤巻鉄郎) 歌女(高岡大祐、石原雄治、藤巻鉄郎) 歌女(高岡大祐、石原雄治、藤巻鉄郎)+伊藤匠
今井和雄 今井和雄 今井和雄

横井一江(Kazue Yokoi)
北海道帯広市生まれ。The Jazz Journalist Association会員。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。海外レポート、ヨーロッパの重鎮達の多くをはじめ、若手までインタビューを数多く手がける。 フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年〜2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)。趣味は料理。本誌編集長。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
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