Live Report #725

JAQUES MORELENBAUM, PAULA MORELENBAUM & GORO ITO
ジャケス・モレレンバウム、パウラ・モレレンバウム & 伊藤ゴロー

2014年8月3日(日) 20:00 ブルーノート東京
Text by 神野秀雄 Hideo Kanno
Photos by 山路 ゆか Yuka Yamaji

Jaques Morelenbaum (cello)
Paula Morelenbaum (vo)
伊藤ゴロー Goro Ito (g,vo)
小川慶太 Keita Ogawa (ds,per)
澤渡英一 Eiichi Sawado (p)

1. ELA E CARIOCA (Jobim)
2. SO TINHA DE SER COM VOCE
3. INSENSATEZ
4. VALSA DE EURIDICE
5. LUMINESCENCE
6. AR LIVRE
7. GLASHAUS
8. THE ISLE
9. O AMOR EM PAZ
10. BIM BOM
11. DESAFINADO
12. NOVEMBER
13. AGUAS DE MARCO







伊藤ゴローを初めて認識したのは、2013年の『Getz / Gilberto + 50 produced by 伊藤ゴロー』とそのライブの存在だった。伊藤はギターで参加し全体をプロデュース、坂本龍一、清水靖晃、菊地成孔、土岐麻子、原田知世をはじめ19人が愛をこめてカヴァーという企画。ボサノバ・ギタリストであり、作曲家で、プロデューサー。布施尚美とのボサノバ・デュオ naomi & goro、ソロ・プロジェクト MOOSE HILL での活動を続けながら、多くのミュージシャンと共演し、プロデュースを行い、映画・テレビドラマ・CM音楽なども手がける。5月には原田知世『noon moon』への楽曲提供も行っている。2013年12月にサード・ソロアルバム『POSTLUDIUM』を発表した。今回のライブでも『POSTLIDIUM』からの曲を演奏していたが、その美しいハーモニーのセンスと、ストーリーが光り、ジャケス・モレレンバウム、パウラ・モレレンバウムというこれ以上ないミュージシャンを従えてすばらしい演奏を聴かせてくれた。

今回がジャケスとパウラのライブを聴くのは“初めて”だったが、最初の一音からジャケスのチェロ、パウラの声には、打ちのめされ、酔わされた。フレーズとして認識する以前に、音色だけ、響きだけ、ヴィブラートだけで、サウダージ溢れて、愛しさ切なさが伝わる。一音にここまでのインパクトを感じる機会はそうはなかった。ジョビンもカエターノもジスモンチも坂本龍一もスティングも一緒に演奏したいと思うのがよくわかる。特にジャケスのチェロには魂を持って行かれるほどで、これまで積極的に聴いてこなかったのが悔やまれた。MORELENBAUM2/SAKAMOTO『CASA』が名前を認識して聴いた最初だった。しかし、これには理由がある。ジャケスは1954年リオデジャネイロ生まれだが、40年間に720枚のレコード/CDに参加する中で、リーダーアルバムがなかった。終演後にジャケスと話すと、間もなくアルバム『CelloSambaTrio』をリリースするということと、それにあわせて来日できたらと語っていた。そして、ボサノバの名曲を歌い上げるパウラの歌声の美しさと、それを包みこむ日本ブラジル混成のすばらしいグループのサウンドとハーモニー、至福の時だった。小川のドラムスとパーカッション、澤渡のピアノの演奏も素晴らしかった。
もしやと思って振り返ると、大好きな『Egberto Gismonti / Infancia』(ECM1428)はチェロにジャケス・モレレンバウムの名前があったことを思い出した。そして、ストリングスの美しさとグルーヴに酔ったカエターノ・ヴェローゾのコンサートもジャケスだったことは間違いない。ライブもすでに聴いていたことになる。
はじめましてのつもりで、お久しぶりで、おかえりなさいになってしまったこのコンサート。今回の来日のきっかけを作ってくれた伊藤と関係者の方々に深く感謝したい。ジャケス・モレレンバウム、パウラ・モレレンバウム、伊藤ゴローにはこれから注目して行きたい。何よりも『CelloSambaTrio』を聴くのが楽しみだ。

神野秀雄 Hideo Kanno
福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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追悼特集
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
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第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


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