Concert Report #743

日本フィルハーモニー交響楽団 第664回東京定期演奏会

2014年10月25日 サントリーホール
Reported by 藤原聡(Satoshi Fujiwara)

<演奏者>
アレクサンドル・ラザレフ(指揮)
<曲目>
チャイコフスキー:弦楽セレナーデハ長調作品48
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番ハ短調作品43

「ラザレフが刻むロシアの魂」と銘打ったシリーズ、今回はショスタコーヴィチの『第4』である。まずは前座のチャイコフスキー『弦楽セレナーデ』であるが、既に凄まじい。デュトワあたりが演奏するといかにも洒落て洗練された趣を感じさせるこの曲が、冒頭から強面そのもの。視覚的にも、ここまで真剣に大きく振りまくらなくても、というほどの力のこもった指揮ぶりである。インテンポでグイグイ進めて行くのだが、この曲にしては大人数だと思われる弦楽器陣から圧倒的に分厚い音がほとばしる。センチメンタルさはほぼ感じられぬが、これがロシア流と言われれば何となく納得もする。第4楽章は限界ギリギリの速いテンポを取り、コーダではさらに加速を掛ける。この曲が終わった時には既にして会場からはブラボーが飛んだのだが、思わず浴びせたくなるような演奏である。この段階でラザレフのドヤ顔炸裂。
 そしてショスタコーヴィチの『第4』。これも想像通り−いや、「以上」に−の豪演。ディテールに拘泥するよりは全体の響きの量感と流れのよさを感じさせる演奏だが、しかしこの指揮者が振るとなぜここまで豪快で分厚い大音量が出て来るのか、今更ながら指揮の不思議。それにしても日本フィルの上手さが素晴らしい。筆者などはクラシック音楽を聴き始めた頃、まずは日本フィルの実演に大変お世話になったものだが、その当時の拙い耳で聴いても若干の技術的弱さと貧相さを感じさせないではなかったこのオケが、ここまでの水準に達したことが感慨深い(すみません、全くの個人的感慨です)。美しく、瑞々しくも量感豊かな弦楽器陣、管楽器陣のソロの見事さ(ファゴット、トロンボーン、オーボエ、トランペットなど実に冴え渡っていた)。
 当然会場中は湧きに湧く。ラザレフ独特の躁状態のステージマナーにいささか苦笑しつつ、今後の彼らのショスタコーヴィチ・シリーズ(来シーズンは『第11番』や『第8番』が予定されている。両曲とも圧倒的な演奏になるのは間違いない!)に大いに期待。

藤原聡 Satoshi Fujiwara
代官山蔦屋書店の音楽フロアにて主にクラシックCDの仕入れ、販促を担当。クラシック以外ではジャズとボサノヴァを好む。音楽以外では映画、読書、アート全般が好物。休日は可能な限りコンサート、ライヴ、映画館や美術館通いにいそしむ日々。

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