Live Report #764 |
パーヴォ・ヤルヴィ指揮 |
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<演奏> |
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2015年9月からNHK交響楽団の首席指揮者を務める、時の人パーヴォ・ヤルヴィがドイツ・カンマー・フィルと共に来日。連続4回の公演でオール・ブラームスという意欲的なプログラム、そしてクリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)、ラルス・フォークト(ピアノ)、ターニャ・テツラフ(チェロ)ら華のあるソリストを揃え、音楽の喜びここにあり!と言いたくなるような、記念碑的な公演となった。
どんなコンサートも客席を埋めるのに軒並み苦労する昨今だが、オペラシティの大ホールが連日ほぼ完売の盛況と聴いた。良い音楽を渇望する聴衆は健在。そのことを思い知らされた公演でもあった。
筆者は、クリスティアン・テツラフがソロを取るヴァイオリン協奏曲の回を聴いた。冒頭の《ハイドンの主題による変奏曲》、佳品だが地味なこの曲をこんなに面白く聴けたのは初めてだ。古典的な均整のとれた音楽と演奏、上質のユーモア、今ここで生まれてきたかのような瑞々しさ。ハイドン流の音楽作りをブラームスなりに料理してみせ、同じウィーンの大先輩へのオマージュとしたこの作品。その面白さを細部に至るまで理解し、聴衆に余すところなく提示してみせるヤルヴィの眼と耳に唸らされる。
《ヴァイオリン協奏曲》は大変にエキサイティング。実に質の高い演奏であることは確かだが、ブラームスというよりも、ヤルヴィ/ドイツ・カンマー・フィルというよりも、テツラフの音楽だった。演奏の質でも、身体的なパフォーマンスの面でも、聴衆を惹き付けずにはおかないテツラフ。それが面白さであり、不満でもあった。急速でドラマティックな部分では、激しいアクションが邪魔になり、目を瞑って聴いてみると、かえって音楽が痩せてしまっているのがよくわかる。一転して緩徐な部分では体はほとんど動かず、実に雄弁に美しく歌っている。アクションがないほうがいい。しかしとにかく、素晴らしい才能、熟練のパフォーマーであることは確か。
最後の《交響曲第2番》は、いよいよヤルヴィとオケ・メンバーの本領発揮といった趣き。目くるめく展開される、興趣に富む音楽。オケはもう第2ヴァイオリンの最後列に至るまでノリノリで、まるで一人一人がソロを取っているかのような躍動感。しかし、フレーズの入りと終わり、強弱、緩急、そのすべてにおいて、メンバーの呼吸が自然にぴたりと合ってくる。ヤルヴィは2004年からこのオケの芸術監督を務めているというが、その歳月で積み重ねた、音楽上の同志といった強い絆を思わされた。実に爽快な演奏会であった。
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