Live Report #776

チャーリー・ヘイデン “A Memorial and Celebration of His Life”
Charlie Haden “A Memorial and Celebration of His Life”

2015年1月13日 The Town Hall, New York
Text by 神野秀雄(Hideo Kanno)
Photo by 常盤武彦(Takehiko Tokiwa)、神野秀雄(Hideo Kanno):表記のあるもの




Charles Edward Haden (August 6, 1937 - July 11, 2014)

Michael Rodriguez (tp)
Going Home
Opening Remarks by Ruth Cameron Haden
Pat Metheny (g)
Charlie Haden Medley -
Our Spanish Love Song
Waltz for Ruth
First Song
Putter Smith - Charlie’s early 60’s L.A.
Lee Konitz (as), Brad Mehldau (p)
Blues
Henry Butler (p, vo)
Deep River
Denardo Coleman - Remarks
Joshua Redman (ts), Kenny Barron (p), Scott Colley (b), Jack DeJohnette (ds)
Blues for Pat
Dr. Maurice Jackson, Associate Professor History at Georgetown University & Chair of the DC Commission on African American Affairs - Remarks
Ravi Coltrane (ts), Geri Allen (p), Brandee Younger (Harp)
For Turiya
Fred Ansis, Family friend - Remarks
Haden Triplet and Josh Haden (vo), Bill Friesell (g), Mark Fain (b)
Voice from on High
Oh, Shenandoah
Gonzalo Rubalcaba (p)
Improvisation
Richard Lewis - Video
Jean Philippe Alfard, Managing Director, Universal Music Publishing, France - Remarks
Quartet West - Alan Broadbent (p), Ernie Watts (ts), Scott Colley (b), Rodney Green (ds)
Hello My Lovely
First Song
Liberation Music Orchestra
Carla Bley (p), Steve Swallow (b), Matt Wilson (ds),
Steve Cardenas (g), Tony Malaby (ts), Chris Cheek (ts), Loren Stillman (as),
Michael Rodriguez (tp), Senece Black (tp), Curtis Fowlkes (tb),
Vincent Chancey (french horn), Joe Daley (tuba)
Amazing Grace
Silence
We Shall Overcome
Closing remarks by Ruth Cameron Haden

※ 当日配布されたプログラムに加筆したが、実際と異なる可能性があることをご了承いただきたい。

Michael Rodriguez Ruth Cameron Haden
Brad Mehldau and Lee Konitz Pat Metheny
Pat Metheny Ravi Coltrane他
Haden Triplet & Josh Haden他 Haden Triplet & Josh Haden他
Henry Butler Joshua Redman他 © Hideo Kanno
Quartet West © Hideo Kanno Liberation Music Orchestra
Liberation Music Orchestra © Hideo Kanno Carla Bley
Town Hall

 <Song for Ché>で始まった2014年5月26日の新宿ピットイン。大友良英スペシャルビッグバンドの初ライブ1曲目はリベレーション・ミュージック・オーケストラ(LMO)の代表曲だった。その印象が強く残る中、7月11日突然届いたチャーリー・ヘイデンの訃報。享年76歳。2009年にブルーノート・ニューヨークでチャーリーと話し、「カルテット・ウエストを聴きに行きます」と伝えたが叶わぬ約束になった。チャーリーのメモリアルコンサートは2015年1月13日、奇しくもマイケル・ブレッカーの命日であり、そのメモリアルコンサートが行われたタウンホールだった。43丁目の6番街とブロードウェイの間にあり、開演1時間半前には、零下の気温の中にもかかわらず長い行列がタイムズスクエアまで到達しさらに続いていて、チャーリーがこれだけの人々に愛されていたことに驚かされた。
 マイケル・ロドリゲスのトランペットソロによる、ドヴォルザークの交響曲『新世界より』から<家路>で幕を開ける。<家路>は『Charlie Haden & Hank Jones / Come Sunday』(Emarcy)、『LMO / Not in Our Name』(Verve)に録音されている。そして、今回のコンサートをプロデュースした、約30年にわたるパートナーであるルース・キャメロン・ヘイデンから開会の挨拶があり、以降ルースが進行する。
 パット・メセニーが『Charlie Haden & Pat Metheny / Beyond the Missouri Sky』(Verve)から3曲をメドレーでガット弦のエレアコで披露する。演奏後のスピーチで、同じミズーリ州で育ったということからも深い縁があり、パットが19歳で初めて会って以来、二人の間には他の人とは決して持ち得ない特別なコミュニケーションがあったという。そして『80/81』(ECM1180/81)で念願の初共演を果たし、デュオアルバム『Beyond the Missouri Sky』を作った経緯を話す。パットは触れなかったが、『80/81』以降、マイケル・ブレッカーにとっても、パット、チャーリー、ジャック・ディジョネットが大切な存在となったことも特筆したい。オーネット・コールマンは来場できなかったが、息子のデナード・コールマンが、いかにオーネットがチャーリーを信頼していたかを語った。
 チャーリーのキャリアの中でも頂点のひとつとなるキース・ジャレット、ポール・モチアン、デューイ・レッドマンとのいわゆる”アメリカン・カルテット”。その後もキースとのデュオで『Jasmine』(ECM2165)、『Last Dance』(ECM2399)を残している。デューイは2006年に、ポールは2011年に亡くなり。キースは残念ながら出演には及ばなかったが、2014年11月30日にニューアークでスタンダーズトリオ、2015年3月3日にカーネギーホールでピアノソロと健在ぶりを見せているから、キースの想いは通じていると思う。その中にあって、本人として、かつ、父デューイをも代表するかたちで出演したのがジョシュア・レッドマン。「ご存知かと思いますが、私はデューイ・レッドマンの息子です。父子の直接の交流は少なかったのですが、私がレコードで父を聴くとき、大好きな音楽には必ずチャーリーがそばにいました。チャーリーがどれだけ父を信頼してくれていたかがわかります」。スピーチに先立ち、ジョシュア、ケニー・バロン、ジャック・ディジョネット、スコット・コリーにより<Blues for Pat>が演奏された。現在キースとレギュラーで演奏するジャック・ディジョネットがいることも、キース、レッドマン父子、そして曲が捧げられたパットと、世代を超えて結ばれる素晴らしい因縁を実感する。
 ラヴィ・コルトレーン、ジェリ・アレン、ブランディー・ヤンガーによる<For Turiya>。こちらもジョン・コルトレーンの妻でありラヴィの母であるアリスとチャーリーにより演奏されたという因縁があり、『Folk Songs』(ECM1170)のエグベルト・ジスモンチ、ヤン・ガルバレクによる演奏も美しい。なお、ECMのマンフレート・アイヒャーは多忙のため参加できなかったが、そのメッセージが読み上げられた。
 そしてハイライトはミュージシャンである4人の子供たちによる歌。娘ペトラ、レイチェル、タニヤのHaden Triplet、息子ジョシュに、ビル・フリーゼルとマーク・フェインが加わり<Voice from on High>を。これは2009年の『Charlie Haden Family & Friends / Rambling Boy』に収められている。そして、チャーリーの出生地、アイオワ州シェナンドウに因んでペトラが<Oh, Shenandoah>を歌った。
 コンサートも終盤、晩年のレギュラーバンドであったカルテット・ウエストが登場。個人的にはアーニー・ワッツは中学時代にリー・リトナー&ジェントルソウツで聴き始め好きなサックスプレーヤーであり、暖かみのある音色とチャーリーの穏やかなベースが美しく溶け合い、デューイに次いでアーニーを指名したことがよくわかる。このバンドを生で聴かなかったことが悔やまれるが、スコット・コリーがチャーリーの代わりを務め、アラン・ブロードベント、ロドニー・グリーンとともに『Haunted Heart』(Verve)から<Hello My Lovely>など素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
 最期を飾るのは、カーラ・ブレイが編曲者、指揮者を務め、スティーブ・スワローがベースを担うリベレーション・ミュージック・オーケストラ(LMO)だ。ピアノを左端に、ブラスアンサンブルが半円に並び、カーラが指揮する。『The Liberation Music Orchestra』(Impulse, 1969年)の個性的過ぎるオリジナルメンバーはカーラしかいないが、最終盤『Not in Our Name』(Verve, 2005年)のメンバーとほぼ重なる。次いで静かにトランペットが<Silence>を奏で始め、トロンボーンが加わり、少しずつハーモニーを重ねていく。チャーリーの美しさへの感性を最も体現したこの曲は『Ballad of Fallen』(ECM1248, 1982年)に収められている。そして『The Liberation Music Orchestra』から黒人公民権運動のアンセムである<We Shall Overcome>がブルース進行を交えながらチャーリーの魂を見送った。カンボジア空爆を創設のきっかけのひとつに持ち、イラク侵攻に”Not in Our Name”と異議を唱えるLMOの姿勢は、このコンサート直後に急展開した日本と中東を巡る動きにもチャーリーが一言投げかけているように思える。なお、Larry Blumenfeld氏の記事によると、翌日、LMOは次作を仕上げるためにスタジオに向かったといい、それも含めてLMOのメッセージは消えることなくファンの心と世界に生き続ける。
 ルースの閉会の言葉で3時間以上に及ぶコンサートは幕を閉じた。スクリーンに映された本人の動画を含む画像と、友人たちの演奏するチャーリーの曲の数々、観客一人一人がチャーリーの聴衆へ、家族へ、よりよい世界への愛と熱意を確かめ会場を後にした。プログラムの最後に記された言葉を引用する。

 「今を生きることが最も大切だ。即興演奏の最も重要なことは、あなたがこの瞬間の魔法に生きていることを教えてくれることだ。なぜなら即興演奏をするとき、あなたは今を生きる。あなたは昨日にいるのでもなく、明日にいるのでもない。あなたはこの瞬間を生きている」チャーリー・ヘイデン

 貴重な公演写真をご提供いただいた常盤武彦氏に深く感謝致します。

Quartet West / Sophisticated Ladies (Emarcy, 2011) Charlie Haden & Hank Jones / Come Sunday (Emarcy) Rambling Boy (Decca, 2009)
Last Dance (ECM2399, 2007年録音) The Liberation Music Orchestra / Not in Our Name (Verve, 2005)

【関連リンク】
チャーリー・ヘイデン 公式ウェブサイト
http://www.charliehadenmusic.com
CELEBRATING CHARLIE HADEN 1937-2014
a memorial and celebration of his life
http://thetownhall.org/event/624-celebrating-charlie-haden-19372014
Larry Blumenfeld: Message at Charlie Haden Memorial: “Hey, Man-We’re Family” (Blouin Art Info)
http://www.blouinartinfo.com/news/story/1072881/message-at-charlie-haden-memorial-hey-man-were-family

【JT関連リンク】
追悼 チャーリー・ヘイデン
http://www.jazztokyo.com/rip/charlie/charlie.html
『チャーリー・ヘイデン&ハンク・ジョーンズ/カム・サンデイ』
http://www.jazztokyo.com/five/five876.html
『チャーリー・ヘイデン/ファミリー&フレンズ〜ランブリング・ボーイ』
http://www.jazztokyo.com/newdisc/509/haden.html

神野秀雄 Hideo Kanno
福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
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#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
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第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
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CONCERT/LIVE REPORT
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