Concert Report #795 |
東京文化会館 プラチナ・シリーズ |
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白井光子とハルトムート・ヘルがリートデュオを結成したのは1972年、二人のドイツ・リートの分野における活動は40年以上続いていることになる。日本でもほぼ毎年コンサートを行い、シューマン、ヴォルフ、シューベルト等の歌曲を楽しませてくれた。
この日のコンサートで彼らが取り上げたのは、ブラームス、R.シュトラウス、リストの歌曲。録音ではハイドンからシェックまで多くの作曲家の作品を聴くことができるが、コンサートのプログラムでは限られた作曲家をとりあげることが多い。リストの歌曲の彼らの実演に接するのは初めてだったし、ブラームスも多くはなかったように思う。また、彼らの言葉によれば「“たそがれ”の中で人生を振り返りつつ、いつか自分があちら側に行った時には懐かしい人々にまた抱かれるのだという歌」をとりあげるなど、年を重ねるにつれ、歌いたいと考える曲も変わってきたようだ。
コンサートが始まってすぐに感じたのは、ヘルのピアノの音が柔らかいということ。それは、白井の声が病(*)に倒れる前の硬質でダイナミクスの大きなものではなくなってきたことと呼応し、以前の鋭い打鍵をおさえ気味にしていたのだろう。最初のブロックに置かれたブラームスの歌曲の中では、『故郷もなく家もなく』のような歌詞を「語る」タイプの曲の方が彼らには合っている。一方、『野原にひとり』(この訳には違和感があるが)のような曲では、メロディーラインがもう少しスムーズにつながってほしいと感じた。前半と後半にまたがって歌われたR.シュトラウスでは、そのような印象はなく、『森を行く』の後半の怪奇的な雰囲気など見事というしかない。
最後のブロックのリストの歌曲は、知られたものが選ばれている。『ぼくの歌には毒がある』、『3人のジプシー』といった、言葉をたたみかけるタイプの歌では、単語の立ち上がりが早く、ごく自然に詩の中に入っていくことができた。彼らが今歌いたい曲がリストだったのだろう。
会場も後になるほど熱を帯び、止まぬ拍手に応え、アンコール6曲が歌われた。シューマンの『詩人の恋』の第1曲の詩に付曲されたフランツの歌曲、シマノフスキの英語の歌曲(この日歌われた唯一のドイツ語以外の詩)など多様なもの。曲ごとに変わる表情が楽しい。
67歳になった白井光子、年齢や神経疾患の後遺症を感じさせるところもあったが、プログラム作り、曲作りのうまさでカバーし、「世界最高峰」のタイトルを証明してくれた。今後はもう少し聴く機会が増えることを期待したい。
(*)2006年に自己免疫疾患の一種ギラン・バレー症候群のため、手足も動かせず、目も見えない状況に陥った。困難なリハビリを経て2008年に舞台に復帰している。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
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