Live Report #814

中村恵介クインテット in 上海

2015年5月1日&2日 JZ Spring 2015 / JZ Club
Reported by 中村恵介(Keisuke Nakamura)
Photos by ジェイソン・リー(Jason Lee)&中村惠介

中村恵介クインテット
中村恵介(tp)
デイヴィッド・ネグレテ(as)
熊谷ヤスマサ(p)
金森 基(b)
福森 康(ds)

西洋と東洋が交差する都市『上海』

その上海の名店JZ Clubが主催するフェスティバル『JZ Spring 2015』に5/1、2と出演してきました。 昨今成長著しい中国。自分自身、中国は初めてなので、どんな感じなのかと楽しみにしていましたが、その勢いたるや凄まじかったです。 街全体がとにかくエネルギッシュ。
空港から市街地へ向かうハイウェイは片道5車線。その周りはビルの建設ラッシュ。街は多くの車が行き交い、絶え間なく鳴り続けるクラクションがとても印象的でした。

♩ 聴衆を熱狂させた静安公園 JZ Spring 2015 でのステージ

今回、急遽決まったスケジュールだったため、超タイトなツアー日程。
朝一の便で成田を出発し、浦東空港に着くと急いでホテルへチェックイン、15分で着替えて昼のライブ会場である静安公園へ。
静安公園は静安寺という立派なお寺に隣接する広い公園。



その中に大小いくつものステージがあり、各所でライブ・パフォーマンスが行われていた。無料イベントということでもあり、公園内は大変な混み具合。僕らが演奏するステージにも沢山のオーディエンスが!



今回の上海遠征は、このツアーのために編成したバンド、中村恵介五重奏(ウーソンツォ)。ウーソンツォは中国語でQuintetの意。
ピアノは大坂昌彦、井上陽介両氏と収録したアルバムをリリース間近の熊谷ヤスマサ。
アルトサックスは巨匠チャールズ・マクファーソンに師事し、日本をこよなく愛するアメリカ人、David Negrete。
そして、僕のバンド『HUMADOPE』でも、いつも素晴らしいグルーヴでバンドを支えてくれるリズム・セクション、金森基と福森康。


左から、熊谷、金森、David

大勢の聴衆が見守る中、一曲目に演奏したのは僕のオリジナルで<SPEED HARASSMENT>。
タイトル通りの高速チューンに上海のオーディエンスも大盛り上がり。この曲の後半部には5拍子のオープン・ドラムソロがあるのですが、ドラムソロの反応って万国共通ですね。
寝不足を全く感じさせない福森の気合いの入ったドラムソロで、会場のテンションはマックスに!

スタートから火を吹くようなプレイで聴衆の心を掴んだ僕らが次に演奏したのは、熊谷ヤスマサのオリジナルで<DRAFT BEER>。
ロバート・グラスパーを彷彿させる熊谷くんのハイセンスなイントロ、そしてNYのシーンを思わせるオシャレなコード進行にメンバーのテンションも上がってきたところで、三曲目はガラッと雰囲気を変えて、David Negreteのソフトな癒しナンバー、その名も<HEAL>。
心地よい陽気の中、会場が癒しの空間となり、オーディエンスの心も落ち着いたところで、僕の大好きなスタンダードナンバー<STELA BY STARLIGHT>をバラードで。

そしてこのステージ最後の曲は、僕のオリジナルの中でも1番のアッパーチューン<ROUND TABLE>。この曲は、特に意識したわけではないけど少し中国っぽい匂いがする。それが通じたのか通じてないのか定かではないけれど、最後も大盛り上がりで終了。
上海オーディエンスからの熱い拍手に見送られステージを後にしました。





最初のステージを終えて他の会場も見たいなと思ったのですが、そんな時間もなく急いでホテルへ戻り遅めの昼食をとって休息。
というのも今回のツアー、昼は15時から野外で1ステージ、そして夜は23時からJZ Clubで2ステージの計3ステージを2日間やるという、なかなか濃厚なスケジュール。
というわけで、夜のステージに向けて休息を取りいざJZ Clubへ!

♩ お洒落な造りのJZ Club

JZ Clubは上海の中心地から少し外れた復興西路というバーストリートにあり、古く個性的な建物を改装して作られた店内は、一階がステージと客席。二階と三階はラウンジになっていてテレビモニターからステージを見られるようになっていました。また、ステージの上は吹き抜けになっていて、二階からステージを見下ろせるというお洒落な造り。

僕達が着いた時にはボーカル入りのカルテットが演奏しており、彼等が前座で我々がメインという2バンド構成。
メインのバンドが23時からって遅めだなと思ったんですが、上海はタクシーも安いので、気にせず深夜まで遊んでいられるんですね。日本だと終電を気にして途中で帰られる方もいるんですが、夜中まで賑わってるのはいいですね。日本もそうなるといいんですが...。

ミュージック・チャージは日本円でおよそ1,000円くらいととてもリーズナブル。2バンド聴いてこの価格はお得ですよね。

客層は中国人と欧米人と半々くらい。日本で言ったら六本木みたいな雰囲気。最近の日本だと、デートでジャズを聴きにくるカップルなんて少ないですが、JZはカップルもとても多くて、みんなお酒を呑んで賑わっていてとてもいい雰囲気でした。

さて、演奏の方は中国人ヴォーカリストに1、2曲歌わせてくれとのことだったので、一緒にやったのですが、歌唱力もパフォーマンスも素晴らしかったです。
セットリストは以下の通り。

1st
SPEED HARASSMENT(Keisuke Nakamura)
DRAFT BEER(Yasumasa Kumagai)
MOANIN feat Jonas(Bobby Timmons)
HEAL (David Negrete)
FIRST LIGHT(Freddie Hubbard)

2nd
SURVEYING(David Negrete)
IT COULD HAPPEN TO YOU(Jimmy Van-Heusen)
INVITATION feat Jonas(Bronislau Kaper)
BODY AND SOUL(Johnny Green)
ROUND TABLE(Keisuke Nakamura)

Special guest
Jonas(vo)



2日目は雨天のため、昼の野外イベントは中止となってしまいましたが、夜のJZ Clubは1日目と同様に大盛況でした。

今回の上海公演、とても刺激的であっという間の2日間でした。
またすぐにでも中国に行けたらなとの思いを込めて、今回の旅で換金した人民元は円に戻さずに帰ってきました。(笑)
再見!!!

中村恵介 Keisuke Nakamura
1977年生まれ。神奈川県横浜市出身。
横浜市立港南台第一中学校の、ジャズオーケストラ部でトランペットを始める。
1996年、東海大学に入学しジャズ研に所属。
99年に早稲田大学ハイソサエティーオーケストラに在籍し、第30回山野BIGBAND JAZZ CONTESTで優勝。
同バンド引退後プロ活動を開始し、自身のバンドを結成。
2001年吉祥寺JAZZ CONTESTグランプリ、2001年浅草JAZZ CONTEST金賞をそれぞれ受賞。
日本を代表する様々なミュージシャンと共演し、特に鈴木勲、日野皓正、両氏との出会いによって、日本人にしか出来ないジャズのスタイルに確信を持つようになる。
2014年、デビュー・アルバム『HUMADOPE』をリリース。
現在、自身のバンド「Humadope」「Erectlik Jazz Riot」をはじめ、鈴木勳「OMASOUND」、鈴木良雄「GENERATION GAP」等、様々なバンドで活躍中。
現在までの主な共演ミュージシャンは、鈴木勳、本田竹広、鈴木良雄、日野皓正、多田誠司、大坂昌彦、日野賢二、本田珠也、山中千尋、等多数(敬称略)。

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