Concert Report #824 |
レイフ・オヴェ・アンスネス(指揮&ピアノ) with マーラー・チェンバー・オーケストラ |
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【出演】 |
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当意即妙 ピアノとオケの類いまれな一体感
アンスネスの弾き振りによる、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会の第一夜。
2番、3番、4番と3曲並べたプロで、演奏は後にいくほど良くなり、最後の第4番ではピアノとオケが当意即妙に反応しあって、まさに一体。稀有な音楽を聴かせて、客席を唸らせた。
開幕の第2番は、不安を抱かせる滑り出しだった。
おそらく聴き手のこちらも、ピアノとオケが緊張感をはらんで対峙する、従来の演奏様式を期待していたからだろう。アンスネスの目指す音楽はそれとは違っていたわけで、その食い違いが、客席の戸惑いを呼んでいたことは確かだ。
でもそれにしても、この曲のオーケストラには生気がなかった。躍動感、覇気といったものが感じられない。アンスネスのピアノがオケの音楽を誘いだそうとしても、反応がいかにも鈍く、噛み合わない。ぎくしゃくしたままピアノも精彩を欠いて、やはり弾き振りは難しいのではと思われた。
この顔合わせですでに録音もしているのだから、音楽はよく練られているはずだが――と首をかしげつつ聴いた第3番。第2楽章に入って、アンスネスが何をしたいのかが掴めてきた。オーケストラがようやく目を醒ましたようで、ピアノもそれに応じて息を吹き返し、まるで水を得た魚。生き生きと音楽が躍動し始めて、第3楽章のハ短調ではこれぞベートーヴェン、というドラマティックな展開を堪能できた。終わったとたんの客席の喝采はひときわ大きく熱く、喜びにあふれている。
第4番ではピアノもオケも冴えわたり、「打てば響く」といった即時の反応が実に見事。ピアノとオケは対峙するものではなく、一体となって一つの自然な流れをなす。まるでアンスネスの指先からオケの音楽も溢れ出してくるかのよう。ヴィルトゥオーソだったベートーヴェンを彷彿させるピアノ・パートで、アンスネスは端正かつ瑞々しい、文句のつけようのない名演を繰り広げ、固唾をのんで聴き入る客席を圧倒した。
このコンチェルト2夜をもって、アンスネスの〈ベートーヴェンへの旅〉はいったん完結するという。クライマックスにふさわしいコンサートであった。
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