Live Report #852

ハシャ・フォーラ〜CDリリース記念Japan Tour 2015
2015年9月5日 東京JAZZ The Plaza@国際フォーラム

Reported by Kenny Inaoka 稲岡邦弥
Photo:©14th TOKYO JAZZ FESTIVAL/©亀和田良弘/©Yoshihiro Kamewada

ハシャ・フォーラ;
ヒロ・ホンシュク (fl,EWI)
リカ・イケダ (vln)
アンドレ・ヴァスコンセロス (el-g)
ハファエル・フッシ (b-g)
スペシャル・ゲスト;
長岡敬二郎 (pandeiro)
ケペル木村 (zabumba)

1. True Pot
2. All Blues
3. Seven Steps To Heaven
4. Milestones
5. E.S.P.
6. Blue In Green
7. Solar

今年で14年目を迎える「東京JAZZ」。調布の味の素スタジアムでスタートしたこの大型ジャズ・フェスはビッグ・サイトを経て国際フォーラムに落ち着いた。5000席を超える大ホールで、エスタブリッシュされたビッグネームの演奏に耳を傾けるのも良いが、ビールの紙コップを片手に野外のThe Plazaで目新しいバンドをかぶりつきで聴くのもまた格別である。時には、メインホールのビッグネームを凌ぐスリリングな経験をすることもあり、The Plazaからは目が離せない。かつて、本誌主幹・悠雅彦氏が朝日新聞のコンサート評にメインホールを差し置いてThe Plazaに出演したアリルド・アンデルセンのトリオを写真付きで取り上げているのを見て、何て正直な人なのだろうと驚いたことがある。
今年は私的な都合で、聴けたのはただひとつ。本誌で「楽曲解説」に健筆を振るうヒロ・ホンシュクこと本宿宏明率いる「ハシャ・フォーラ」だけだった。「ハシャ・フォーラ」は、本誌Five by Fiveでも紹介した新作『ハシャ・ス・マイルス』の発売記念ツアーの一環として出演することになった。レギュラーのギタリスト、マウリシオ・アンドラージが他の仕事で来日が叶わず、代役としてアンドレ・ヴァスコンセロスが参加したが、野外の場合、アンプを通したアンドレのエレクトリック・ギターの方が耳に届き易かったかも知れない。クラブではアコースティック・ギターで聴くマウリシオのニュアンスに富んだプレイやビリンバウを模した演奏も面白いのだが。
レパートリーは、オープナーのホンシュクのオリジナル<True Pot>を除く6曲はすべてマイルスの愛奏曲で、新作のCD収録曲。耳に馴染んだお馴染みの曲がブラジルのネイティヴなリズムに乗り、まったく装いを変えて登場する。1曲目はノリの良いバイヨンだが、2曲目で3つのグルーヴが交錯する<All Blues>を演奏したホンシュクの勇気に感心したり、ハラハラしたり。<Milestones>はCDではデイヴ・リーブマンのソプラノサックスが切り込むのだが、ステージでは長岡敬二郎の歯切れの良いパンデイロが代役を務める。<ESP>は、youtube でお分かりの通りライヴらしくややテンポを上げ、ホンシュクのウインド・シンセ(EWI)がエレクトリック・マイルスを思わせる雰囲気を醸し出す。リカ・イケダのヴァイオリンがチャレンジングだ。ラストの<Solar>でケペル木村が珍しいザブンバを叩いてバイヨンで大盛り上がり。
メンバーの自信に満ちた表情が、ブラジルのネイティヴなリズムに乗ってジャズのインプロヴィゼーションを展開する、というハシャ・フォーラのハイブリッド・ミュージックのプレゼンテーションが成功したことを物語っているようだ。なお、演奏の一部がNHK-FMでライヴ中継されたので彼らの演奏をラジオを通して楽しんだリスナーも多いと思われる。

*ESP
https://www.youtube.com/watch?t=455&v=7gp0SlNZXAw
*CD紹介
http://www.jazztokyo.com/five/five1269.html
*CD録音評
http://www.jazztokyo.com/column/oikawa/column_242.html

稲岡邦弥 Kenny Inaoka
兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。音楽プロデューサー。著書に『改訂増補版 ECMの真実』編著に『ECM catalog』(以上、河出書房新社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。 Jazz Tokyo編集長。

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