Live Report #853

Steve Gadd Band featuring Michael Landau, Larry Goldings, Jimmy Johnson and Walt Fowler
スティーヴ・ガッド・バンド featuring マイケル・ランドウ、ラリー・ゴールディングス、 ジミー・ジョンソン & ウォルト・ファウラー

2015 9.11 21:30 ブルーノート東京 Blue Note Tokyo
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Yuka Yamaji 山路ゆか

Steve Gadd(ds) Michael Landau(g) Larry Goldings(key) Jimmy Johnson(b) Walt Fowler(flgh,tp)

1. The Windup (Keith Jarrett)
2. The Long Way Home (Michael Landau)
3. Bye Bye Blackbird (Ray Henderson)
4. Oh,Yeah? (Jan Hammer & Fernando Lamas Saunders)
5. Desu (Jimmy Johnson)
6. Sly Boots (Larry Goldings)
7. Blues For ... (Michael Landau)

スティーヴ・ガッドは1945年4月9日生まれ、2015年に70歳の古希を迎え『70 Strong』をリリースしたばかり。このスティーヴ・ガッド・バンドは、2013年にスティーヴの25年ぶりにスタジオ録音したリーダーアルバム『Gadditude』を発表し、2013年10月に続いて2回目の来日。今回は9月6日に東京JAZZ 2015にも出演している。スティーヴの気心の知れた仲間たちであり、ジェームス・テイラー・バンドの主要メンバー。それだけに、東京JAZZで、東京国際フォーラムホールAの巨大空間を繊細に鳴らし、アットホームな空間にし、観客を一瞬で惹き付ける姿にこのバンドの底知れない力量を見た。

キース・ジャレット・ヨーロピアン・カルテット『Belonging』(ECM1050, 1974)の<The Windup>から始まる。ヤン・ガルバレクのソプラノサックスが印象的で、オーネット・コールマン的感性の原曲に比べ、カリプソ的なリズムで愉快な気持ちにさせてくれる。この時期のキースの曲には特別なジョイ(歓び)を感じるが、その真髄をノルウェー組の若手(当時)以上に、アメリカ組の中堅だからこそ引き出せていて、スティーヴも気に入り、スティーヴ・ガッド・バンドのオープニングテーマになっている。パット・メセニー・グループも1980年頃に好んで演奏していて、パットも「キースは現代最高の作曲家のひとりであって、もっと演奏されるべき。」と21世紀になってからコメントしている。
次いで心地よいテンションのハーモニーとメロディにスティーヴの刻むリズムが溶け合う<The Long Way Home>。
スタンダードから<Bye Bye Blackbird>。スティーヴはこの曲を教則ビデオやクリニックでのブラシの模範によく演奏しているようだ。しかもスネアドラムだけで、自身の声で口ずさみながら。『Steve Gadd and Friends / Live at Voce』ではジョーイ・デフランコがトランペットで吹いていて、今回もウォルト・ファウラーがミュート・トランペットで演奏し、スティーヴのブラシワークが光る。マイルス・デイヴィスの名演を意識し、モダンジャズへの敬意を象徴しているように思われた。
<Oh, Yeah!>はヤン・ハマーのカヴァー、原曲よりもゆったりしたテンポの中でよりファンキーに響き、マイケル・ランダウのギターソロとラリー・ゴールディングスのキーボードが光る。
ジミー・ジョンソン作の美しいバラード<Desu>、スティーヴのブラシワークにバックアップされながら、全員の音色が溶け合い心に沁みる。全般にスティーヴはテクニックをひけらかすようなプレイはせずに、穏やかにドラムで歌い、ゆったりとした空気を作っているが、<Sly Boots>ではスティーヴの多彩で熱いドラムソロに客席が熱狂した。そしてアルバムでも最終曲の<Blues for...>でのブルージーなプレイで、このバンドの本領を見せながら締め括った。

この後、バンドは、シンガポール、香港へと向かった。そしてヨーロッパツアーへ。2015年は12月3日〜5日にロサンゼルス・ハリウッドのカタリナ・ジャズ・クラブでのライブで2015年のツアーを締め括る。

半世紀近くに渡ってファーストコールのドラマーであり続け、巨匠の域に達しても、仲間との演奏を心から楽しみ、音楽に真摯に向き合い、ひとりひとりの観客に敬意と感謝を惜しまないスティーヴ。「私たちは最善を尽くして、みんなに楽しんでもらい、意味のあるものとしていきたい。」そして立ち止まることなく、新しいオリジナルな音を生み出し続けるスティーヴ・ガッドと仲間たち、次のアルバム、次の来日が楽しみでならない。

70 Strong

Gadditude

Keith Jarrett / Belonging (ECM1050)


【関連リンク】

スティーヴ・ガッド公式ウェブサイト http://www.drstevegadd.com
ラリー・ゴールディングス公式ウェブサイト http://www.larrygoldings.com
マイケル・ランドウ公式ウェブサイト http://www.mikelandau.com
ウォルト・ファウラー公式ウェブサイト http://waltfowler.com/
ジェームス・テイラー公式ウェブサイト http://www.jamestaylor.com
Pledge Music - 70 Strong http://www.pledgemusic.com/projects/stevegaddband2

The Windup - Steve Gadd Band Live at Blue Note Tokyo 2013
https://youtu.be/Ez7IzH0Gd90

Pat Metheny Q & A “The Wind Up”
http://www.patmetheny.com/qa/questionView.cfm?queID=3969


【JT関連リンク】

『スティーヴ・ガッド・バンド/70 ストロング』
http://www.jazztokyo.com/five/five1189.html
『スティーヴ・ガッド・バンド/ガッドの流儀』
http://www.jazztokyo.com/five/five1027.html
第14回 東京ジャズ・フェスティバル 2015
http://www.jazztokyo.com/live_report/report846.html
スティーヴ・ガッド・バンド 2013年10月10〜11日 ブルーノート東京
http://www.jazztokyo.com/live_report/report594.html
ボブ・ジェームス&デヴィッド・サンボーン featuring スティーヴ・ガッド&ジェームス・ジーナス
http://www.jazztokyo.com/live_report/report577.html
東京JAZZ 2013 What Music Can Do/Jazz Heritage
http://www.jazztokyo.com/live_report/report581.html
ウィル・リー・ファミリー 2013年12月4日 コットンクラブ東京
http://www.jazztokyo.com/live_report/report622.html
MIKARIMBA featuring スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメス、ジョン・トロペイ、リチャード・ストルツマン&デューク・ガッド 2014年10月17日 ブルーノート東京
http://www.jazztokyo.com/live_report/report757.html

神野秀雄 Hideo Kanno
福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの“共演”を果たしたらしい。

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.