Live Report #861 |
コリン・ヴァロン・トリオ |
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ジャズからもっと進化したヨーロッパ・コンテンポラリー・ミニマル・ミュージック
岡山の臨済宗妙心寺派のお寺、蔭凉寺。このお寺の住職、篠原さんが音楽好きで、この十数年来、ジャズ、ブラジル、フォーク、民族音楽、現代音楽等々ジャンルを超えたライブをしてきている。音楽的内容のクォリティもさることながら、音響機材もハイエンドな装置が揃っている。もはや趣味を越えた音楽へのこだわりは、地方でも屈指のコンサート・ライブ会場となっている。
この日は、「おかやまコンテンポラン」と名打った10月25日と26日に渡る二日間のイベントの二日目のプログラムであった。26日は、コリン・ヴァロン・トリオと0(ZERO)の2グループの出演だった。
0(ZERO)は、Sylvain Chauveau率いる現代音楽室内楽アンサンブルで、小津安二郎の無声映画「大人の繪本 生まれてはみたけれど」の伴奏、サウンド・パフォーマンスだった。彼らの現代の楽曲による室内楽的憂愁な演奏が付く事によって、小津の映画を新たな解釈で観る事ができた。私たち日本人にとっては、小津の映画は原体験的デジャヴの世界ではあるが、当時のヨーロッパ人やアメリカ人からみると、日本人の生活感や価値観、世界観は理解し難いモノだったに違いない。だから、彼らが伴奏することで小津映画が日本人では無いフィルターを通して新たな映像になってゆく。面白い体験であった。
コリン・ヴァロン・トリオも演奏を熟知してライブに臨んだ訳ではなかった。ヨーロッパ・コンテンポラリー・ピアノ・トリオということで、ECMが好きな私はその若いサウンドを是が非でも聴いてみたかったのだ。静寂の中から徐々に演奏が始まる。始めて聴くミュージシャンに対しては、私はいつも、私の知っているサウンドをパズルのようにあてはめてゆく。ところが、彼らのサウンドはあてはまらない。あてはまりそうで、あてはまらない。ミニマルなピアノではあるが、ミニマルの特有な無機的な演奏でもない。ドラムのリズム、ベースライン、ピアノのコードが妙にずれて聴こえる。こいつら下手なのかな、と思いきやフェイク演奏だったりする。プリペイドピアノ、転調、変拍子、即興演奏も今までのヨーロッパ・フリー・ミュージックとは違う。然し、私の好きなECMのサウンドになっている。耽美なフレーズが洗練されないまま、波のように砕け散る。リリシズムの裏には、底知れない闇が拡がっている。彼らの演奏には、正にヨーロッパ独特のリリシズムが存在していた。演奏テクニックをひけらかすわけでもなく、人間的な個々の個性が一つのイマジネーションの流れの中でしっかりとインタープレイしている。
先日亡くなったプーさんこと、菊地雅章。彼は、ミニマル的な演奏を早くからジャズの中に取り入れていた。ときに耽美であり、ときにダンサンブルでもあった。彼のミニマル的な演奏のアイデアはマイルス・デイビスにも影響を与えている。それとは裏腹に沈鬱した彼のピアノ・ソロは、日本人ならではの美意識が底に流れている。コリン・ヴァロン、菊地雅章のミニマルは、一般に言われるところのミニマル・ミュージックとは少し趣が異なっている。どちらかと言えば、原始的ミニマル音楽に近い。ブルースや津軽三味線、インド音楽、ブードゥーのジュジュ、バリのガムラン等々、同じパターンの音楽が反復される事で音楽に陶酔してゆき、そしてそれが微妙にずれて民族特有のグルーヴが生まれてくる。プーさんの音楽がジャパニーズ・コンテンポラリー・ミニマル・ジャズならコリン・ヴァロン・トリオの音楽は、ヨーロッパ・コンテンポラリー・ミニマル・ミュージックだろう。ジャズからもっと進化している。若い世代が確実に音楽を推し進めていることが、なによりも嬉しいライブ・コンサートであった。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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