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こないだタガララジオ8のtrack 063で紹介したヤコブ・アンデルシュコフ盤(あのパチモンジャケのCD)がどんどん良くなる法華の太鼓でね。聴くたびにハマり込んで逃れられないでいる。はやくも年間ベストの暫定1位だ。演奏をECMミュージシャンに見立ててみたりしていたけれど(ジャレットじゃなくブレイですね)、この「モチアン・メソッドに通底する領野」というのが、現代ジャズにおける重要なファクターであることはいよいよ確定的なところだ。トーンの揺らぎ、とか、タイムの伸び縮み、即興が成立し続ける、という概念も内包した。そんでもってモチアンメソッドに無縁な、そこそこいい出来のジャズ演奏を聴いても「つまらなく」感じてしまうのである。耳のはしかみたいなもんか。耳の口蹄疫みたいなものか。なんでユンケルか。

クリス・スピード。独特なトーンしか吹かないパチモン野郎と頭打ちな評価をしていたこの10年、ある日、ずっと知り合いだったメガネおたく女子と数秒見つめあっただけで心臓がきゅんと想定外の恋に落ちたような、医者に行け医者に!、スピードが吹けばなんでもいいのかアンタは、という盲目な耳になってしまった。不適切だなその形容。

コンポストのクロスレビュー「The Claudia Quintet with Gary Versace: Royal Toast」、ガメラたいゴジラたいレッドキングたいゼットンたい大魔神を読むようなパワーを感じる。5つ目まで読んだところで「えっ!クリス・スピードが参加してるの?」とあわてる。やばい、聴く前に読んでしまった。やばいおれ、気に入ってしまうかもしれない。コンポスト編集長の益子博之さんが現在ニューヨーク詣でに行かれているときく。7月10日(土)午後3時30分から、四谷いーぐるにて益子さんによる連続講演「新譜特集」が予定されている。


<track 066>
Platform / Chris Lightcap's Bigmouth from 『Deluxe』 (clean feed) 2010

Chris Lightcap (double bass)
Craig Taborn (wurlitzer electric piano, piano)
Gerald Cleaver (drums)
Chris Cheek (tenor saxophone)
Tony Malaby (tenor saxophone)
Andrew D'Angelo (alto saxophone on "Silvertone", "Ting" and "Fuzz")

まずはこのところ耳鳴りのようにぼくのヒットチャート1位を独走する現代ジャズナンバーに出会えたことに感謝しよう。きらりん。

ふふふ、このCDの感想?すぐにクリス・スピードを参照する今月のおいらの耳だ・・・、この作品の3にんのサックス奏者マラビー、チーク、ディアンジェロに言いたい、おまえら3にんがかりでクリススピード効果の素因数分解と再構成でもしたかったのかー!・・・。あ、ディアンジェロは3曲だけ参加か・・・。いつからか、おれにとってはマーク・ターナーとの遭遇、現代ジャズにとってはロヴァーノ=フリゼール=モチアンの登場、以来の綿々と続いている「トーン」への偏重を、ここでも聴いてしまうのだな。

タイコのジェラルド・クリーヴァーの闊達でスイッチの妙もさりげない仕事ぶりも、かなり光っている。クリーヴァーの存在を知ったのはギター狼ジョー・モリスのバンドでだったから10数年前。クリーヴァーはそれ以前にロスコー・ミッチェルやヘンリー・スレッギルという濃い大御所とお手合わせをしているミシガン州デトロイト出身の63年生まれ、というから47さいかー!もうバリバリのベテランだ。ミロスラフ・ヴィトウスの近作にミシェル・ポルタルとともに参加するという神出鬼没ぶりにも驚いていたばかりだ。そんで、このクリーヴァーとキーボード&ピアノのクレイグ・テイボーンは学生時代からの僚友でもある。

リーダーのクリス・ライトキャップ(ベースと作曲)は71年うまれの39さい。ジャズの世界もこれくらいの年令にならないと頭角を現せない、ということなのか?ジャズというジャンルが老年期になっている、とか、従来のジャズという容れものが溶解してる、とか、そんなことをふと考える。だいたい革命的なものって20代によって行われているものだろ、どのジャンルでも、なあ。インプロの世界だって老年期だべ。弱音系は幼年期だべな。エレクトロアコースティックは生まれながらにして更年期か?かかか。・・・話がそれた。

クレイグ・テイボーンのエレピも何気にポイント高いわ。

バンド名は、ライトキャップの大口叩き。CDタイトル『デラックス』。まんずもって豪勢な3サックス+ベース、キーボード、タイコの6にん編成。涼しいジャケで、不敵な面持ち。NY現代ジャズシーンのピカイチレーベルであるクリーン・フィードの新譜だ。



<track 067>
Oceanus / 市野元彦 from 『Time Flows (Like Water)』 (BounDEE Jazz Library DDCB-13007) 2008

市野元彦(eg, ag, loops) 是安則克(b) 外山明(ds) 土井徳浩(cl).
recorded at Studio Dede, Tokyo on October 19-20, 2007.

市野さんのCD、最高ですね。

若手日本人のジャズ盤かー、と、手にした時点で負けているかも。まず外山明のタイコがじつに素晴らしい!こういうセンスのあるタイコは、日本にこそ登場するだろうことは予感していたが、・・・え?これまで存在に気付かないでいました・・・、あれれ、外山さんの写真見たらライブで聴いたことあったぞ、林栄一だっけな・・・ああ、にぶいのだ、このおれは肝心なところを素通りするへまな耳でもあるのだ。フリーゼルmeetsジムブラック、イメージ的にはそういう方向性を持つ音楽だけど、こちらのほうがヴィヴィドに、また、クールに聴こえる。外山明はそのままNYに行くだけで、クリスライトキャップとクレイグテイボーンとクリススピードが迎えてもくれるだろう。

・ ・・なんでこんなにタイコがいいのだ!次いでそれと会話するかのようなベース、クラリネットの音色もじつにしっかりしていて頼もしい、サッカーでいうところのスペースの作りかたが巧みだというか、そのスペースのキープのありようが美しいのだ。1曲目のエンディングの外山のシンバル音持続!かー、たまんねー。

→外山 明インタヴュー by 望月由美(http://www.jazztokyo.com/interview/vol19/v19.html
→『北浪良佳/リトル・ガール・ブルー』(http://www.jazztokyo.com/newdisc/401/kitanami.html) by 望月由美 (共に、JT編集部註)

そうか、このチームの司令塔がギターの市野ということか。このメンバーを想定して用意した曲をもとにした会話録のようなもの、なんてステキなセリフを書いているに相応しい空気が流れてるんだな、これが。レコーディングの”時”の奇跡もここにはあるようだ。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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