Vol8
Mike Nockと山本邦山の共時性




マイク・ノックさんと山本邦山との関係というと奇異な感じがあるかもしれない。
実に似ている。
どうしてそんな確証がもてるのかって・・・・。
マイク・ノックさんは、言わずと知れた、オーストラリア・ジャズ界の大御所ピアニスト。
山本邦山も、もちろん日本邦楽界の大御所尺八奏者。

ただ大御所だということで、共通点があるというのか。・・・・そんな野暮なことは言わない。

今日はその理由について話そう。

ご存知の方もいらっしゃると思うが、私は、ギタリストとして、山本邦山と様々な場面で演奏している。
しかし、マイク・ノックさんとは、まだ日本のステージで正式に、一緒に演奏したことがない。

邦山とは、「大吟醸」というユニットを組んでいる。
このユニットは、彼が、重要無形文化財保持者つまり人間国宝なので、「国宝ユニット」とも呼ばれている。
(それまでの受賞暦は、1975年 芸術選奨文部大臣賞。1990年 第11回松尾芸能賞。1991年 モービル音楽賞。1997年 大津市文化賞。2000年 滋賀県文化賞、等々、数多、数え上げればきりがない。因みに、重要無形文化財保持者認定は2002年)

私と邦山とのユニット(他のメンバーは石塚まさみ、piano、マサ大家、guitar) 「大吟醸」の日本で演奏した場所は、池上本門寺本堂(2007年)、東京芸術大学奏樂堂(2007年)、武満徹プロデュースの八ヶ岳高原音楽堂、表参道ヒルズ吹き抜け大階段(2008年)、滋賀県民芸術創造館大網アリーナ柿落とし、
長野オリンピック会場ウイング21(2009年)、等々。

様々なツアーも経験した。一緒に寝食を共にした。
この時に、人間山本邦山の人柄に触れることができる。
勿論、彼は素晴らしい演奏家である。彼の演奏は、実に見事。どんな譜面も初見も見事・・・・。
そして
あの音色に思わず身震いするときがある。あの音色、あの旋律に思わず、一緒にやっている自分が、聴き手になっているときがある。
そして、リハーサルの時の峻烈さは極まりない。自分のコンディションと環境に関して、極度に気を使う。
高地でやった時(八ヶ岳高原音楽堂)、標高1600メートル、この時のリハーサルは機嫌が悪かった。・・・ひとつひとつの音にいつもより何倍も厳しい。PAにもあたる。
そして、ついに、「酸素こうてこイ(買って来い=近江弁)」。高地なので酸素不足ということで、・・・・。山の上、酸素を買いに行くのは私の役目である。・・・・
まっ、色々ある・・・。

しかし楽しみは、前泊の時のリハが終わった後。
たいていの場合、主催者や呼んでくれている人の関係で、宴会が催される時や夕食をかねて、酒が振舞われる時も多い。
本当に面白いのは、その後、メンバーだけで飲む二次会、三次会・・・この時に、本当の人間の大きさを痛感する。
邦山先生はいくらでも飲める。その量は半端ではない。あまり語りたくないが、ビールなら二人で1ダースは軽い。
飲めば飲むほど どんどん快活になり、踊って踊って歌うのだけれども、決して、節度をはずさない。

メンバーと飲むだけ飲んで最後まで正気なのは、邦山先生と私だけ・・・・
酔ったメンバーを蹴散らし、寝かしつけ、最後の最後に私と邦山先生だけで明日の本番の真面目な打ち合わせをする。

この快活さの中にある自由度の大きさと節度に大御所といわれる所以があると思う。

マイク・ノックさんにも全く同じにおいを感じた。音から感じるにおいと全く同じだ。混沌としているのだけれども見事に整理されている。(マイクが2010年に出したアルバム『An Accumulation of Subtleties』はオーストラリアで戴いてから日を欠かさず聞いている。)

東京JAZZフェスティバルの後、招かれて、オーストラリア大使館でマイクさんと散々飲んだ。・・・ここに掲げた一枚の写真がその空気を伝えていると思う。(この時うかつにも、稲岡編集長の勧めで、大使館で、マイクさんの前で、ギターを演奏した・・・・)

ミュージッシャンが、飲んでいる時などは、非日常、論ずることではないかもしれない。
しかし、ミュージシャンのステージで演奏している日常とそれ以外の非日常。 それらを貫いている本質は、同じだと思う。

この二人の大御所が一緒のステージに立てば途轍もないことが起こると思う。

2011年にこれを実現するのは、私の使命だと思う。私は音楽家として、この二人の天才を、愛して愛して止まない。

オーストラリアと日本の更なる架け橋をかけて行きたいと思う。

高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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