Vol.13 オスロでの2年間と夏休み
Text and photos (except TRIO by Helge Lien) by Ayumi Tanaka

 ノルウェー国立音楽大学に入学してから2年の月日が過ぎた。過ぎてみるとあっという間の日々だったけれど、たくさんの素敵な先生や友人との出会いを通じて素晴らしい体験をさせていただいた。入学試験でろくに英語もノルウェー語も上手く話せなかった私を温かく受け入れてくださった先生方には心から感謝したい。特にメインの先生としてレッスンをしていただいているMisha Alperinは大きな存在で、これからずっと大切にしていきたいことをたくさん教わった。

 私の通う大学は4年制で、2年と4年の終わりに学生全員が試験としてコンサートを行う。毎年6月にオスロのNasjonal Jazzsceneというジャズクラブで2週間にわたって行われる。それぞれ持ち時間は30分から40分程で、コンサートの内容は全て学生に任されている。ジャズ科の試験といってもクラシックや民俗音楽の演奏家、ダンサー、映像家などと共演する学生がいたりコンセプトも様々で、みんなそれぞれ違った個性が輝く。コンサートは一般のお客さんにも解放されていて多くのお客さんで賑わう。試験のようなピリピリした雰囲気は全くなく、温かい雰囲気の中行われる。コンサートはどれも本当に素晴らしく、みんなありのままの自分をそのまま表現していて、そんな風に人を育てるこの大学は本当に素晴らしいと思う。私は自分のトリオで演奏した。このトリオは、同大学のジャズ科を卒業して今はクラシック科で学ぶコントラバスChristian Meaas Svendsen(オスロに学ぶVol.9で紹介している。彼は日本語が上手!)と、Christian Wallmrod EnsembleやThe Sourceなどで活躍するドラムPer Oddvar Johansenと私の3人からなり、この春に始めた。素晴らしい2人と一緒にやりたいことに挑戦できて、これからにつながるいい経験となった。

 さて、試験が終わると夏休み!ということで、友人の多くは田舎の実家に帰ったり、山小屋で過ごしたり、どこかへ休暇を取りに行く。私はオスロで友人と一緒に練習したり、リハーサルしたり、一緒にご飯を作ったり、ノルウェー語を教えてもらったりして過ごした。でも、ずっとオスロにいるものなんだか違う気がして、6月の終わりに友人の実家のあるグランヴィンというところに4日間遊びに行かせてもらった。グランヴィンはオスロから電車で6時間程のノルウェーの西部に位置する自然豊かな小さな村。家の窓から川の流れる音が聴こえ、壮大な山を一望することができる。穏やかで優しい友人の生まれ育った場所と言われて頷ける本当にのどかな場所。隣の家の大きな庭では羊がゆったりと草を食べているし、友人の家にはニワトリがいて毎朝4時くらいに起こしてくれる(ノルウェーの夏は日の出が早い)。友人たちとワイルドな山の中を登ったり、カヌーを家から運んで漕いだり、ノルウェーの自然にたくさん触れさせてもらった。

 帰り道オスロに戻る電車の窓から見える風景はどこまでも空と山が広がっていて、大きな自然に囲まれているという安心感に包まれた。オスロに着くとなんだかほっとして、この街がいつの間にか心落ち着ける故郷のようになっていることに気づき、少し嬉しい気持ちになった。


田中鮎美:
3歳から高校卒業までエレクトーンを学ぶ。エレクトーンコンクール優勝、海外でのコンサートなどに出演し世界各国の人々と音楽を通じて交流できる喜びを体感する。
その後、ピアノに転向。ジャズや即興音楽を学ぶうちに北欧の音楽に強く興味を持つようになり、2011年8月よりノルウェーのオスロにあるノルウェー国立音楽大学(Norwegian Academy of Music)のjazz improvisation科にて学ぶ。Misha Alperinに師事し、彼の深い音楽性に大きな影響を受ける。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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