Vol10
オーストラリア初心




初めてオーストラリアで公演に臨んだときの志・・・。
もうすぐ講演の幕が開く。
夢にまで見た「ソウル・メイツ」(現在は「G2us」)のオーストラリア公演の初日、あと10分で本番だ。
心地の良い緊迫感と荘厳な雰囲気に身が締まる。

ここは、オーストラリア・キャンベラにあるコンサートホール。大きさ、風格、 出演しているアーティストのクオリティーを考えると、日本で言うなら「ブルーノート」。
そこで、5日間の連続公演(水・木・金・土・日の5日間。金、土がツー・ステージ)。ブルーノートならBBキングや、往年のオスカー・ピーターソンでも、3日間が限界だろう。
僕らが出てええんか、こんなに長い間。しかも、今月の25日には、あのJoshua Redman Trioが出演する。彼と日は違うが同じステージだ。おまけに。パンフレットには、同じ大きさで俺の写真が出とる。
どないする。大丈夫や。
やれるだけの準備はやった。もうこれ以上できない仕込みはやった。負けても悔いはないし。負けるはずがない・・・。
これからの5日間は勝ち。コンサートは勝ち負けではないが・・・。
果たしてお客様は来るのだろうか。どのくらい来るのだろうか。演奏は受けるだろうか。いや、受け入れられるのだろうか。曲順はこれでいいだろうか。MC(途中のしゃべり)はこれでいいのだろうか。アレンジは?このフレーズ、弾けるだろうか・・・。エンディングは、アンコールは、コーラスのハモリは ・・・   不安はきりがない・・・。
何より、お客さんは来るんやろうか・・・。
コンサートホールの努力と現地日本人会の多大な協力によってたくさんのお客様が来た。
特に金曜日が凄かった。
第二ステージはアンコールが鳴り止まなかった。3回目のアンコールにも応えたが、それでもオーディエンスは許してくれなかった。日本から来たこの変わったミュージッシャンを心の底から歓迎してくれた。
とくに、ギター・デュオで、竹田の子守唄をアカペラでやった時には、割れんばかりの拍手であった。それもちゃんとハモッて・・・。
ACDCのアコースティック・バージョンも大喝采だった。

この内容については、別の機会に筆を起こすとして、ここまで来るには様々な紆余曲折があった。
思い起こせば、オーストラリアで初めてライブをやったのは、このときより2年半前の12月。この時は、マサ大家とのギター・デュオだった。ランジェルという場末のバー。フランス人ママがやっている店だった。
立ち見で25人も入ったらぎゅうぎゅう位の大きさ。PAも無い。ただママの努力でお客様は満員だった。 
真ん中最前列に三つ椅子があったが、そこには、オセアニアン・マフィアらしき目つきの悪い輩が三人、肩をいからせて睨みつけてくる。やりにくいし、本心怖い。
其の距離の近さたるや、ギターの糸巻きが、マフィアの顔にあたらんほどである
PAがないので、自分でやってて声は聞こえんし、ギターも聞こえんし・・・。
まぁ、とにかく始めるしかない。MCを始める・・なんか、要領を得ん。何でや。話が伝わっているような、伝わってないような。後でわかったことやけど、私の正統派イングランド・イングリッシュがオーストラリアの人々には、意味はわかるけど毛嫌いされる・・・。ちょうど日本でいうと大阪で標準語話すようなもん。それも天王寺とか新世界で標準語話したら危険や・・・。

さてさて、この後はどうなることやら・・・(続く)

オーストラリアでの初心を思い起こしつつ、明日のコンサートの準備をする



高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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