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渋谷アップリンクの会場は海原になってしまうことだろう。

9月26日(日)に”『ECM catalog』刊行記念「純喫茶ECM」”というレコード・コンサートといいますか、月光茶房店主原田正夫さんと、音楽批評の福島恵一さんをゲストにお迎えしてのイベントを行います。6月6日に吉祥寺のカフェズミでやったECMカフェに続いての3にんです。この時、1曲目をかけたあと会場で拍手がまきおこったのが、若きリスナー、女性もたくさんの会場で、音楽はこうやって伝播してゆくのか、と、音楽のちからにもうれつに感動していた飛雄馬のようなわたしたちでした。これのヴァージョン・アップに、オファーを受けてからわくわくしどおしです。

先週3にんでかなりの時間をかけて選曲をしたのですが、アップリンクのTaguchiというスピーカー(或るプロの弦楽器演奏家がこれでないと弾かないという逸話もあるぞ)の響きも素晴らしいもので、そもそも音楽を超えた喚起力を備えた曲ばかりがかかります、ECMファンクラブ時代に多くのひとの耳の人生を踏み外させたキケンな曲ばかりです、これらの曲を聴くとどんなことになってしまうのだろうか、パットもチックもキースもかかりません、選曲過程で3にんで唸ってしまった電球首男ECM1006廃盤のA面もかけます、アンプやカートリッジを持ち込んでのECMを空間的に鳴らす愉しみ、ど、どんな響きが現れるのか。耳の手がかり。21世紀のリスナーにバトンを渡す気持ち。ゆったりとした聴取環境のため30〜40席でのセッティングとなっております。ご来場をお待ちしております!

『ECM Catalog』刊行記念「純喫茶ECM」
渋谷アップリンク・ファクトリー
日時:9/26(日)開場18:00/開演18:15
料金:¥1,500(1ドリンク付)

<track 086>
The Sea I / Ketil Bjornstad, David Darling, Terje Rypdal, Jon Christensen from 『The Sea』 (ECM1545) 1995

ECMカタログ完成記念企画「11人のレビューワーにこっそりおききした偏愛ECMベスト11リスト」ECM selected 11で挙げたこの作品のトラックを、ECMクラシックトラックス第4弾として。

ピアノ、チェロ、エレキギター、タイコという編成。とにかく、ECMのハウス・ドラマーとして君臨するヨン・クリステンセンのバスドラ、シンバルの響かせ。

このCDを聴いて数年後、わたしは葬儀屋の見習いとして町屋斎場にいた。炎天下に葬儀の準備のため、香炉の大量の灰を細かい網目のザルにあけて掃除する、漂う煙のような灰の匂いが連想させるのは、坊さんの読経の上手下手と叩かれた金属音、と、お棺との共鳴、この世とはちょっと離れた空間で響きわたるような、それは時に聴こえ、時に聴こえない。

この4にんにしか描けない世界が成立した、としか書きようがない。ECMには、同じユニットには2作品しか作らせない、という、ゲイトウェイにしてもコリア=バートン、タウナー=アバクロにしてもソルスティスにしてもコドナにしてもマジコにしてもノルダンにしてもこの海カルテットにしても、そういう原則がある。ジャレットのヨーロピアン・カルテットでさえスタジオ録音はビロンギングとマイ・ソングにとどめたくらいだ(だからスタンダーズはもうやめろ、ピーコックを開放しろ)。だけど、この海カルテットには、世界中の海をテーマにして連作オホーツク海、黒海、太平洋、北極海、日本海とシリーズにしてセールスしてもかまわないから、3作目以降を録音してほしい・・・。

06年にクリステンセンとビョルンスタと話す夢をみた。アイヒャーに共演を禁じられていた、なんて発想があるのか?おれの夢だからおれか!今年、このふたりが共演した盤『リメンバランス』が発表された。解禁されたのか。


夏が来れば思い出す、はるかな尾瀬。

YUIや木村カエラがかかると、まあ、王道の安定感、その水準に安心するわな。西野カナはさ、てんでフツーに聴けるんだけどリズムのおかず一打余計なのか、ヘッドホン的なのか、すごい気持ちいい。さりげないとこなんだけど、そこが西野カナを2010年にしている。嵐のモンスターもすばらしい、ダンスなんて芸術でございます。スマップの時代も終わり、そうにはないけど、おれなら嵐のコンサートに行くな。ヒルクライムというのは予想以上に才能あるな。あと、今年の夏は青山テルマの「サマーラブ!!feat.RED RICE from 湘南乃風」が気持ちよく流れていました。遊介「ミツバチ」もかかりまくり。有線しかかからない労働環境の早期改善を。
おお。狂気に触れるような才能を感じさせた男女二人組ユニットjungle smile(ジャングル・スマイル)の97年の名曲「片思い」をEXILEの妹分の女性2人組ユニット「Love」がカバーしている。そのままのカバーが素直でよろしい。最初「片思い」はオフコースの「秋の気配」に聴こえて苦労した思い出深い曲だ。そ、そういえば・・・ジャングル・スマイルの最高傑作「おなじ星」、これは背景に怨霊のような女の声がハウリングを起こして鳴るアレンジで、すげーこわい。それに、歌詞も過剰であって、あちら側にはみ出るような強い女の思い込みが、怨霊とハウリングしてるようでもあるのだ。もちろんおれの妄想耳によるものだが、そのようにサウンドを解釈するところで、あり得ない感興をもたらすのだ。おお、こわ。

わたしは基本的にカラオケには行かない主義であるが、何かの拍子でなだれこんでしまって、加藤隼戦闘隊、移民の歌、人形の家、ボヘミアンラプソディ、誰も寝てはならぬ、ざんげの値打ちもない、別れの予感、望郷じょんがら、言葉にできない、草原の輝き、抱擁、舟歌・・・次々歌いまくるのであった。なむさん。時空を超える名曲は・・・、人形の家!弘田三枝子!どーん!別格!だろ?おおさわぎ。

おや。スローなマイラバの「Hello,Again〜昔からある場所〜」のカバーがかかっている。JUJUというヴォーカリストが、なかなかいいのは曲の良さだろ、え?JUJUという名はウェイン・ショーターの64年のリーダー作『JuJu』からだって?なんだなんだなんだ、どういう音楽性なのだ。


<track 087>
Hello,Again〜昔からある場所〜 / My Little Lover from 『evergreen』 (Toy's Factory) 1995

世界的に活躍する指揮者である飯森範親(いいもりのりちか)さんが音楽監督を務める山形交響楽団について語ったときに、山形の自然は南ドイツを思わせるところがあり、その響きが自分を魅了するのです、と、わたしは即座に南ドイツの自然が作った感性であるマンフレート・アイヒャーを連想するわけであるが、小林武史の耳も山形で培われただけあって。

マイ・リトル・ラバー。通称マイラバ。おれが「マイブラmy bloody valentineは知ってる?」ときくと「いいですよね」とこたえられるとそれはマイラバのことだった、多くの場合。95年に発表され260万枚売った『エバーグリーン』、この捨て曲の無さ、完成度はJポップの金字塔なのだけれど、ECMアイヒャーを育てた南ドイツに近い山形の感性で育った小林武史のサウンドにはパット・メセニーがあったり、この「Hello,Again〜昔からある場所〜」の間奏のサックスはECMジョン・サーマンの独奏に聴こえる!ことは一度はどこかで書いてみたかった。ECM相当聴き込んでるだろ、小林武史。

夜のあいだでさえ季節はかわってゆく、そしてサーマンの切ない旋律がつづくのだ。

あ、いま歌詞をチェックすると。「君はすこし泣いた?」と疑問符が付いている。おれは「君はすこし泣いた」、「あのとき見えなかった」のはわたしが未熟なせいで君が泣くことの意味や理由を見出すことができなかった、と、解釈していたのだが、意味が変わってくるぞ!

ミュージック・マガジンはミスチルや小林武史を無視し続けていたけど、何かあった?


アート・ペッパーの『モダンアート』の「魅せられて」に魅せられてしまう。コニッツの01年チェスキー盤『パラレルズ』、マーク・ターナーが共演している盤だ、をラストに持ってきた編集CDRを作る。夏なんで浄土真宗のお経と、高校野球の歌も入れた。

編集CDR「Romeo She Said」 2010.08.19

01. Neighborhood / David Byrne 2001
02. Minute Romance / How I Became The Bomb
03. 御文章・白骨章 / 浄土真宗 読謡:白井誓海
04. When Will The Blues Leave (O.Coleman) / Paul Bley, Steve Swallow, Pete LaRoca 1962
05. 全国高等学校野球選手権大会「栄光は君に輝く」 古関裕而(こせきゆうじ)作曲 実況録音
06. 同上:退場の実況録音
07. 泥だらけの純情 / 吉永小百合
08. 君は今 / タテタカコ
09. Photographic Smile / Mr. Big
10. 恋するロメオ Romeo / Mr. Big
11. 魅せられて Bewitched / Art Pepper
12. Natten / Ketil Bjornstad
13. Giati Pouli Den Kelaidis (Bird, Why Don\’t You Song) (Greece) / Savina Yannatou 『Songs of The Mediterranean』 2000
14. Old Folks / 渋谷毅・武田和命カルテット
15. How Deep Is The Ocean / Lee Konitz 『Parallels』

ジャズのトラックがかかると、猛烈なジャズ・ファンになってしまって耳がつやつやになってアドリブをしゃぶり尽くし、喉が渇くように耳が渇望する身体になる。ジャズを聴き続けて30ねん、これこそジャズだぜ!こんなのジャズじゃないぜ!とジャズ耳を断言するいい年のオヤジとなっている。若い時分に、ECMはジャズじゃない、ECMはインプロではない、と、いわれなき言説にとまどって、それじゃあというので、ジャズは四谷いーぐるに出入りし、インプロは清水俊彦・福島恵一・北里義之のテキストを通じて、ジャズ耳、インプロ耳、ECM耳、と、ついに身体装備を果たしたと思っていた2010年のわたし。

ところが、こないだ月光茶房でECMの選曲をしていたら、ふと、いや、そうではない、それらの耳を統合できるような聴取の統一理論があるのではないか?ジャズ耳、インプロ耳、ECM耳なんて言っているのは、単なる慣性的感覚の諦念に横たわっているのに過ぎないのではないか?と、不安になってきたのである。

捕まえた、と、思った音楽がまた異なった様相をぼくに見せる。


<track 088>
Romeo / Mr. Big from 『Photographic Smile』 (EMI) 1977

高校時代のエアチェックと音楽専科(音楽月刊誌)で飛びついた全英4位のミスター・ビックの「恋するロメオ」。LPを買って何度も聴いた。16さいのときの街の景色が見える。18さいのとき初めて東京に来て、高田馬場で降りて質屋の男女裸体の噴水にどぎもを抜いて、早稲田通りを中古盤屋タイムにどきどきし、明治通りを右折して毎日新聞の宿舎に向かった。諏訪町の交差点にある喫茶店イネ(今もあるんだ!)でアイスコーヒーを飲んだ身体に戻ってしまう音楽の不思議なちから。

ミスター・ビッグ/フォトグラフィック・スマイル (1977)

1. フォットグラフィック・スマイル Photographic Smile
2. 恋するロミオ Romeo
3. 風は何色? What Colour Is The Wind
4. ルイジアナ・ストリート Louisiana Street
5. 故郷への慕情 Feel Like Calling Home
6. グッバイ・ワールド Goodbye World
7. 吸血鬼 Vampire
8. 恋の誘惑 Hold Me
9. キャン・ウィ・ライヴ/わが命のエンジェル Can We Live Angel Of My Life
10. イージー Easy

赤岩和美先生が、クイーンIIのB面やアビーロードのB面を引き合いに出すほどのA面1〜6曲目で、「この作品(76年)とビーバップ・デラックスの『モダン・ミュージック』(76年)と、コックニー・レベルの『さかしま』(74年)の3作を、70年代中期の英EMIのモダン・ポップ3大名盤と呼んでいる。」とライナーを締めくっている!わ、あとのふたつは未聴だぞ・・・。

長女におそわった目黒区八雲中央図書館でこのCDを見つけて再会した。

あなたにも、チェルシー、あげたい。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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