メキシコの若きヴァイオリン奏者、アドリアン・ユストゥスが7度目の来日をして聴衆を魅了した。大きな体からの大きな弓さばきながら、得も云われぬ弱音の美しさに引き込まれてしまう。難曲と言われているパガニーニのカプリース集の２４曲を約１時間見事に弾き切る。この曲は人の営みや魂が込められていて、一曲一曲違う顔があり大変面白い曲だと語る。
ユストゥスの師は、メキシコで音楽教育を行っている黒沼ユリ子。彼女が主宰する”アカデミア・ユリコ・クロヌマ”で１１歳から学んでいる。１９８５年１４歳の時”アカデミア・ユリコ・クロヌマ”の生徒の代表の一人として来日。その時、日本という全く異なる文化の中で「ツィゴイネルワイゼン」をオーケストラ伴奏で演奏した時に、聴衆との絶妙なコミュニケーションに感激してヴァイオリニストになる決意をし、この楽器を弾いて人々を幸福にすることが神から与えられたミッションだと信じている。日本とメキシコとは遠く離れているが音楽の力で広い太平洋を小川のように小さくしていると思っている。
２０１１年の初めてのソロ・コンサートのライブがCDとなった。タイトルは“歌うヴィルトゥオーゾ”。黒沼ユリ子は“歌うヴァイオリニスト”だと言う。