��音質ではないが、何か気に掛かる録音なのだ。何度か聞いている内に解けてきたのは、忘れていたアナログ・サウンドだ。ピアノは骨格のしっかりした音で迫り、ガツガツと芯が飛んでくる。近接マイクながら、繊細さから逃げてピアノの響きに芯を求めた努力が窺（うかが）える。ジャズのピアノって、こうだったよな！と、気に掛かる謎を解いたサウンドなのだ。
ベースしかり。芯はがっちり、弦の振動を聞くような詳細な音像はない。どーんと腰を落ち着けた響きだけが空間を埋める。この様なベースの表現を、ずーっと聞いていたはずだ。最新デジタルでは忘れていた音なのだ。ドラムスも、しかり。マイキングの音色をそのままに、しかも、ちょっと距離感があり、空間での「かぶり」をうまくこなした技法で処理して、パーティションの細工が浮かび上がってこない。アナログ・テープ時代の持つ感触が、ここにある。
タイガー大越教授（バークリー音大）の教え子。縁あって手に入れたCDによる録音評だ。
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