佐藤俊介はピリオド楽器とモダン楽器を弾く１９８４年生まれの今注目のヴァイオリニストである。４大ピアノ・トリオを聴くと題しての演奏会を行った。その第一夜は古楽器による、ベートーヴェンのピアノ・トリオ「大公」とメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第１番。共演者はフォルテピアノのクリスティーネ・ショルンスハイム、バロック・チェロの鈴木秀美。両者とも合わせの経験のある信頼のおけるヴェテラン演奏家である。アンサンブルの醍醐味を存分に味わわせてくれた。２０１０年１０月に行った「バロック・ヴァイオリン・リサイタル」に対して平成２２年度第６５回文化庁芸術祭新人賞を受賞。本人は、日本で初めてのバロック・ヴァイオリンのリサイタル、ということで自分自身としても思い入れの強い演奏会であった。「新人賞という名誉ある賞を糧にモダンとバロック・ヴァイオリンの魅力をみなさまとわかちあえるよう努力と勉強を重ね演奏活動に専念したい」と受賞の感想を述べている。
２歳でスズキ・メソードでヴァイオリンを始める。父親の留学のため４歳でアメリカに移住。以後アメリカの音楽環境のなかで研鑽を積む。特にジュリアード音楽院のプレカレッジでドロシー・ディレイ、川崎雅夫に師事した影響は大きい。２０００年１０月のニューヨーク・デビューのＮＹタイムスの批評は、驚くべき冷静さと音楽的レベルを既に持っている．．．これは誰かに教え込まれたものでなく自分から湧き出ている、と絶賛。また演奏活動で何度か共演したクリストファー・ホグウッドのピリオド奏法研究がバロック音楽、古楽器奏法への関心へとつながる。パリでジェラール・プーレに４年間師事。２００９年よりミュンヘン音楽・演劇大学でマリ・ウティガ―の下で古楽奏法を研鑽中である。パガニーニの協奏曲をガット絃、ピリオド楽器で演奏するなど探究心も旺盛で頼もしい存在である。