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こう、こう、こう。

ジャズは生きている。帝王ポール・モチアンと若き王エリック・ハーランドが叩きあうニュー・ヨークはヴィレッジ・ヴァンガードの2011年だ。これは見事だ。マーク・ターナー、クリス・ポッター、ダヴィッド・サンチェス、ビル・マケンリーというサックス奏者が週替わりで。モチアンは3週連続で主役で叩いている。3月のプーさんとのクインテットではベースが2台!だぜ。・・・今すぐニューヨークに飛んでゆきたいが有休も飛行機代もなかとよ・・・。

February 01 - February 06
AARON GOLDBERG QUARTET
Mark Turner-sax, Reuben Rogers-b, Eric Harland-d

February 08 - February 13
CHRIS POTTER QUARTET
David Virelles-p, Larry Grenadier-b, Eric Harland-d

February 15 - February 20
DAVID SANCHEZ QUARTET
Lage Lund-gtr, Matt Brewer-b, E.J. Strickland-d

February 22 - February 27
PAUL MOTIAN QUINTET
Russ Lossing-p, Bill McHenry-tsax Oscar Noriega-clr, asax, Eivind Opsvik-b

March 01 - March 06
ETHAN IVERSON, LARRY GRENADIER, PAUL MOTIAN

March 08 - March 13
PAUL MOTIAN TRIO 2000+2
Loren Stillman-sax, Masabumi Kikuchi-p, Thomas Morgan-b, Ben Street-b


それで、日本において世界に通用する現代ジャズというのは、市野元彦と橋爪亮督のふたりが交わしているジャズのことだろう。(ほかには杉本智和と本田珠也もかなり有望だと思っていて、ただここ数年彼らを聴いていないので・・・)

市野元彦と橋爪亮督。

市野元彦トリオ(市野元彦g、渋谷毅p、外山明ds)は唯一無比な感覚の歓びがあるし、橋爪亮督+市野元彦のグループも・・・。

前回タガララジオ17で100曲目に掲げた「十五夜」は、この二人の資質への焦点さえ消失したなんとも言えないトラック14分38秒・・・、これ、橋爪亮督グループのライブ録音CDR、そうだなあ、これはマンフレート・アイヒャーに聴かせてやるのもいいけど、たぶんわかんないと思う、ただおいらはこの世界を聴きたいという強烈な欲望だけ、が、あって・・・。そもそもこの音源は市販もネット試聴もされてない・・・。彼らもおそらく再演できないマジックに突入している。狙って出来上がるものではないから素晴らしい、だし。いや、みなさんに聴いていただいて、これはこうこうですよ、これに似た感覚の演奏はこれですよ、とか、謎の手がかりを得たい。

益子博之(音楽批評)さんが手がける橋爪亮督のライブ・シリーズ「tactle sounds 2011」が、3月20日に四谷三丁目の喫茶茶会記であります。昨年「福島恵一始動!」、今年は「益子博之始動!」のようにファンは感じるところ。第一回は橋爪亮督、市野元彦、吉野弘志という、まさに期待のライブだ。

フライヤー表1 http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20110217
フライヤー表2 http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20110218

橋爪亮督について、わたしは彼が平井庸一グループに長く在籍していたことを重要視していて、トリスターノを探求する平井のグループで文字どおり化けた橋爪のサックスのインプロヴァイズ、は、マーク・ターナーがリー・コニッツと共演した際にコニッツに「ぼくのどの曲ができるかい?」と問われて「あなたの曲をすべて吹けます」と即答したターナーというエピソードと響き合うんだな。ターナーと橋爪のサックスは明確に違う個性であるけれども、同じ新しい種族である。

インプロヴァイズする橋爪の良さ、は、1月8日、国立のノー・トランクスでのライブ(http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20110108 )で見事に感じることができた。アルトの宮野裕司との同郷揃い踏みは実に良かった。・・・それは、クール・ジャズの系譜である。池長一美のタイコはクリステンセンばりのアタックさえ繰り出せる世界レベルのもの。

この橋爪、宮野の2管は、増田ひろみを加えて3管もアリだと思うし、ドラムレスでさらなる苛酷な浮遊を試行するのもアリだと思う。・・・平井庸一に「ほら、一度平井グループで橋爪さんのかわりに宮野さんだったライブがあったよね、日本のコニッツと言ったら宮野さんに失礼かな、宮野さんに感動していたんだけどさー、この橋爪と宮野の2管でリズム隊が吉野、池長、という実に理想的な組み合わせ、さすがノー・トランクス店主の村上寛さんだよー」と電話したら、「最初に村上さんに言ったのはぼくなんだけど・・・」と言う。この橋爪・宮野・吉野・池長カルテットは4月26日にノー・トランクスでまた、演る。

こう、こう、こう。

テン年代は新たな静寂の嵐だ。静寂の嵐というのは70年代ECMレーベルの基調低音となったフレーズであるが、2010年に『ECMカタログ』が出版されたのと時期をひとつとするように音楽評論の福島恵一が吉祥寺カフェズミで行った連続講演「耳の枠はずし−不定形の聴取に向けて」で投げかけた即興のハードコア、ECMの響き、清水俊彦の定位、さらに聴取に更新といった事態を見つめるなかで、わたしの場合はマイケル・ピサロとの幸福な出会いとも相俟って、じつに、層の重なった静寂の嵐とも言うべきシーンが拓けていたのに気付かされた。

懐かしいECMの響きの数々が現在に蘇えってくるように感じられた体験もあった。

福島さんが吉祥寺カフェズミで「最近気に入ったCD」ということでかけたら若いリスナーに好評だったというジル・オーブリーの作品を教わった。


<track 104>
Track 1 (29:15 min) / les ecoutis le caire / Gilles Aubry & Stephane Montavon

騒々しい練馬区のおんぼろアパートの夕刻に、聴き終えてほっと手を合わせたときに指先と指先が擦れる音があまりにも大きくてびっくりしてしまった。そのあと、ことあるごとに手を擦ってみるが、そんな微細な音は聴こえやしない。それは、その時いかにわたしの耳の野性が触発されていたかの証明なのだろう。

日記「Gilles Aubry と池袋東口ビル9階サウンドスケープ」(http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20110122


わたしと堀内宏公が作っている音楽サイトmusicircusの「2010年に聴いた10枚」(http://homepage3.nifty.com/musicircus/main/2010_10/ )に、益子博之さんと福島恵一さんが寄稿していただけた。というか、おがみ倒しました・・・。ジャズ批評誌で耳を育ててくれた岡島豊樹さんも寄稿いただいており、わたしの仲間とともにこうして掲載できたのは、まるでおいらはチャーリー・ヘイデンになって69年のリベレーション・ミュージック・オーケストラのジャケみたいになっている心地がする。

チャーリー・ヘイデン

でも、毎年のことながらわたしのセレクトは何とかならないのだろうか、と言いつつ、わたしはわたしに対してはウソはつかない、という無根拠な自信、動物占い金のたぬきの属性そのまま、なあに?わたしたちにはウソをついているの?とにらむひつじのエクスワイフやさるのドキンちゃん。

そうそう、CDジャーナル誌にマーク・ラパポートの名物連載「じゃずじゃ」が「じゃずじゃの息子」として帰ってきた。文字数が少ないではないか。拡販のためには見開き2ページにしなければならない。

CDジャーナルの1月号には評論家たちのベスト5が出揃っていて、これは本気度高いものだと毎年ぼくは高く評価している。ジャズ盤をさらってゆくと、ジャスミン、ハイウェイ・ライダー、オーケストリオン、バロック、シルヴァー・ポニーの5強といったところか。バロックは佐藤英輔、成田正、村井康司、悠雅彦各氏が挙げている。うおおお、青木和富さんが『vacation music / リューダス・モツクーナス&宝示戸亮二』とアイヤーのソロを挙げ「柔らかな演奏の枠がまだまだ即興の未来を感じさせた。これらには繊細にして豪胆なジャズのスピリッツがある。」と記している。悠雅彦さんは2010年は日本のジャズ演奏家で勝負しようと決めた、として、潮先郁男・さがゆき・加藤崇之、大西順子、藤井郷子オーケストラ東京、竹内直、ギラ・ジルカを挙げている。

竹内直『オブシディアン』は国立ノー・トランクス店主村上さんも挙げている。「2010 私のお気に入り」(http://notrunks.jp/cdreview/2010best3/2010best_murakami.htm )、村上さんはミシェル・ポルタル盤とともに、竹内直のバスクラを並べている。


<track 105>
All The Way / 竹内直 from 『オブシデディアン Obsidian』 (What's New Records) 2010

豪華なメンバーで、とくに中牟礼貞則のギターがたまらなくいい!この曲はバスクラとのデュオ。77さいなのー?若き渡辺香津美の師。この味わい、たまげた。竹内のバスクラ、こういう演奏聴いていると、ジャズっていいなあと思う。



<track 106>
Firefly theme / Michael Pinto from 『Little Green Men』 (Steeple Chase) 2010

おいらも日本人演奏家が入ったCDを、というか、この29さいのヴィブラフォン奏者マイケル・ピントの作品を聴いていて濃厚にはまってしまった理由は、まったく縁もゆかりもないエルトン・ジョンの隠れ名盤『蒼い肖像 Blue Moves』(1976)をわたしの耳が想起し続けたからだ。

Michael Pinto vibraphone, Garret Brown drums, Chris Tordini bass , Megumi Yonezawa piano

ターミネーター、スーパーマン、トロンといったピントが好きだというSF映画のテーマが並んでいたりする。ヴィブラフォンのカルテットというと、ECM者にもゲイリー・バートン諸作が耳に親しいけれど、この軽音楽チックな、これは決して悪い意味ではない、軽音楽をナメるなよ、コンセプト仕様の中で全編聴き飽きることのない作品だ。ピアノの米沢めぐみをはじめ、職人芸の編み物のような充実といった点でも、これはなかなかのエバーグリーン性を備えている作品だ。


<track 107>
kind mind / masako hamamura from 『kind mind』 (kind mind music) 2009

2011年、今年になって再プレスされたようだ。ディスク・ユニオンのページ(http://diskunion.net/jazz/ct/detail/JZ110105-03

関西を中心に活躍するピアニスト浜村昌子(http://www.masakohamamura.com/index.html)の初リーダー作、これもずいぶん聴いている。この無垢でファンタジックでさえあるコトコト系即興・・・また妙な言葉を作ってしまった・・・、オルゴールの数音、や、シンバルをこする音が遠くからプロペラ機が飛んで来るように思えたり、そしてピアノはロジックのしっかりとしたもので、サウンドの世界観を支配しているのは速度ではなく静止するような浮遊感だ。ベースのピーター・シェールは香港在住でジム・ブラック等との共演歴を持つ。タイコのエドワード・ペローは新鋭で、センスが光る。

3曲目の「青空ララ」で浜村がつぶやくように歌いはじめるのに、最初聴いたときはフォークと即興の融合かとも考えたが、5曲目「宵待月ひとつ」の歌も秀逸で、improvisationと題された2つのトラック、liong balladと題された2つのトラックといい、深夜にイマジネイティブになって聴くのに幸福になる演奏であり、これはトータルなアルバムとしても相当すぐれているものだ。音色の選択と呼応する構成にも知性を感じる。

あらま、この浜村昌子は橋爪亮督『Needful Things』のメンバーであることに今気付いた。



<track 108>
結婚の夜に / 沢井一恵 from 『目と目』 (日本伝統文化振興財団) 2010

キミは太田裕美を知っているか。75年の国民的ヒット曲「木綿のハンカチーフ」、87年ジョン・ゾーンの『スピレーン』でクリスチャン・マークレイがクロノス・カルテットの弦楽四重奏サウンドをぐにゃりと異次元化させる中えっちに反転するようにつぶやいた「Forbidden Fruit」、の、太田裕美だ。

冒頭から「八つのころに」「結婚の夜に」「四十のときに」と3曲つづく物語「絵の中の姿」を太田裕美が歌っている。これは「木綿のハンカチーフ」の向こう側にある愛の物語だ。愛だなんて言わないでほしい。ここでの「きみ」は男でも女でもアリだ。作詞作曲は高橋鮎生なのか、すごいな。

この『目と目』には、あのロビン・ウィリアムソン、ECMのスティーブ・レイクが手がけたブリティッシュ・トラッド・フォークの鬼才だ、の楽曲もあり、これがじつに秀逸。この『目と目』は『スピレーン』と同じ87年の発表なのだ。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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