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Vol.68 | シカゴ・サウスサイド
text by Seiichi SUGITA

“P.S. I Love You__”
 <ろーく>の女はいま、アビシニアン=ネコと一緒にパリ・サンジェルマンの異邦人。気位の高いアビシニアンのルーツは、エジプトだときく。おそらく、「ショウ・ザ・フラッグ」「パワー・トゥ・ザ・ピープル」をよりアクチュアルに実感しているに違いない。
 実は、仏・BYGの“アクチュアル”シリーズや仏・シャンダール等をすべて、いちはやく完璧に送り続けてくれたのは、<ろーく>の女である。米・ESPが60年代フリー・ムーブメントの宝庫であるとするならば、BYGは70年代フリー・ムーブメントの大宝庫である。AACMの雄、AEC(アート・アンサンブル・オブ・シカゴ)が、米・アトランティックのスターダムにのし上がるには、BYGの連作が必要ではあった。1974年、AECとスイス・モントゥルー・ジャズ祭で再会(前年、ニューヨーク・夏以来)。翌日、野外パーティに招待される。
「ハーイ、ゴキゲンだね」
 AECの面々は、少なくともぼくは、ワイン・ムックでしか見たことのないキレイなラベルの“シャトー・ムートン”を次々に飲み干していく。
 1年前、セントラル・パークで出会ったマラカイ・フェイヴァース(AECのベース奏者)はメンバーと一緒にシカゴ・サウス・サイドから専用大型バスで着いたばかり。バスには、ほこらしげに“ミュージック・パワー AACM”“アート・アンサンブル・オブ・シカゴ”と、個性的なロゴで描かれている。
「最近のサウス・サイドはどう?」
「まあ、そう変わりはないさ」
ほとばしる汗を拭いながら、
「そうそう、アフロ・アーツ・シアターは、閉鎖されたよ」
「.....そう、残念だね」
 アフロ・アーツ・シアターの創設者は、フィリップ・コーラン。元々は、AACMの創設メンバーのひとりであるが、訣別。AACMが、AECに代表されるように、強靭なベクトルをワールドワイドに向けたのに対し、<アフロ・アーツ・シター>はといえば、より深く、アフリカへの回帰と向かう。かつて触れた同・シアターのプロデューサー、ベニーは、“ファラオズ”のプロデューサーでもあり、“ファラオズ”から生まれたのがあの“アース・ウインド・アンド・ファイア”(EW&F)なのです。

 

 日本人的な発想でいうと、“シャリコマ”(コマーシャル)って一体何なんだろうね。アート・ブレイキーが「黒猫のタンゴ」をやると、口を揃えて、“シャリコマ”という女に、あの帝王マイルスがどんなにポピュラーな曲だろうと、何をやろうが絶対に“シャリコマ”なんていわない。
 ぼくは、AECも“アース___”も大のお気に入りだぜ。まさに、“チェンジング・セイム”、「変わっていく同じもの」(リロイ・ジョーンズ)なのである。
 フリーだって、インプロヴァイズドだって、いいものはいいし、ゴキゲンなものはゴキゲンなのです。正直いって、ウマイ&ヘタとか「カキフ」(書き譜=譜面化されたアドリブ)なんて、のう、うんざりなんだよ。
 で、シャンダールは、というと、1970年の<マグー近代美術館>でのいずれも、ライヴ盤。主催は、シャンダール女史。残されたアルバムは、セシル・テイラー『Aの第2幕』、サン・ラ『マグー近代美術館の夜』、アルバート・アイラー『ラスト・ライヴ』。何れも、LP2枚分だ。
 とにかく、ESPもBYGもシャンダールも、すべて聴いて欲しい。いや、すべて聴きたまえ!!
 女は自由に、スポンテイニァスに生きる。

 いま、訃報が入る。情報とは、いつも“突然炎のごとく”ではある。
 2011年3月21日、沖山秀子死す。享年65歳。沖山秀子の口癖は、「わたしは日本のニグロ、そう思わへん?」である。沖山秀子は《ロイク》の女!?ぼくが練馬の沖山秀子宅にお邪魔したのは、6、7年前のこと。夫妻は、まるでサルトルとボーボワールのようである。合掌。今夜は沖山秀子の『サマータイム』(TRIO)をじっくり聴きたいもの。

「血は立ったまま眠っている__」。

杉田誠一
杉田誠一:
1945年4月、新潟県新発田市生まれ。
1965年5月、月刊『ジャズ』、
1999年11月、『Out there』をそれぞれ創刊。
2006年12月、横浜市白楽に
cafe bar Bitches Brew for hipsters onlyを開く。
http://bbyokohama.exblog.jp/
著書に『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』
『ぼくのジャズ感情旅行』。
http://www.k5.dion.ne.jp/~sugita/cafe&bar.html
及川公生のちょっといい音空間見つけた >>

♪ Live Information

5/22 (日) JUNマシオ(mc,perc)
Bull 松原(vo)
上山 実(p)
5/27 (金) 小島伸子(vo)
今村真一朗(p)
5/28 (土) 古谷暢康(ts, cl, b-cl, perc)
6月 Dedicated to 金井英人(b)
7月 Dedicated to 沖山秀子(vo) “Summertime”
8月 LAST DATE
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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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