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Vol.24 |
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前号で音楽創造に絡めて、南極探検隊の話をした。
その続きをしよう...。
南極という未来への渇望。それは取り憑かれたものの特権だった。
じゃあ未来って何だ。彼ら(南極探検隊)にとっては、南極が未来そのものだったのだろう。
でも現実には、現在という辛くて危険な時がある。
でも、その時間をのりこえる未来があったはずだ。彼らは、現在も未来ものりこえてしまったのか。
では彼らにとって時間って何だったのだろうか。
そして、我々現代の人間にとって、時間って何だろう。
人間という生き物にとって、生物にとって、時間って何だろう。
人間以外の生き物にも、何か、時間に対して共通するものがあるのだろうか? きっとあるはずだ。
生物によってサイズが違うのは当然。しかし、種が異なっても、共通するものがある...。
同じ哺乳類でも、ネズミからゾウやクジラに至るまで、大きさはさまざまだ。
だが、体重に着目して統計を取ってみると、意外なほど共通した数字が出てくる。たとえばネズミでもゾウでも、時間が体重の4分の1乗に比例している。
ここで言う時間とは何か? 時間,,,つまりその生物にとっての時間の流れ方。
たとえば、心臓の鼓動の間隔、生まれてから性的に成熟するまでの期間。これらの生理的時間が、体重の4分の1に比例している。つまり、体重が16倍になれば、時間は2倍になる。
エネルギー消費量も比例している。
単細胞動物から哺乳類まで、体重との関係を調べてみると、すべて体重の4分の3乗に比例している。おもしろい...。
時間は、時計が刻むもの?
そうじゃない。ネズミはネズミの、ゾウにはゾウの時間がある。そして、人間には人間の時間がある。
だから、こういう計算もできる。
たとえば、鼓動の回数を呼吸数で割ってみると、哺乳類なら大小問わず一呼吸あたりに心臓は四回鼓動している。寿命を鼓動時間で割ると、
哺乳類などの動物はすべて、一生の間に心臓は二十数億回鼓動している。
ネズミもゾウも、南極探検隊も同じだったのだ。
あまりにも美しい数字の一致だ。なぜそうなるのか?
本当に不思議だ。
生き物の体のつくりが違うのに、基本的な数値が一致するのはどうしてか?
こういう基本的な数値、基本的な疑問を、最近の生物学は無視する傾向にある。分子レベルまで、単に切り刻んで生物を扱うのが流行っている。
前述のように。4分の1乗だの4分の3乗だの対数で比例して見るのも、生物全般の共通項を探すときの鍵課も知れない...。
また、おそらく人間の脳の中も、対数的な仕組みになっているだろう。
ものの重さの感じ方が、紙などの軽いものは差を敏感に感じるが、重いものになるとどんどん鈍感になり、差を感じなくなる...。
単に重さを感じるだけになるのかも。
このように、生物がもっている生命体のデザインに隠された秘密を解き明かし、人間を相対化して見ることが大切である。
たとえば、今や日本人の食料の消費量に一次エネルギー(石炭や石油、天然ガス、水力、等のエネルギーのこと)消費量を足して、標準エネルギー代謝量のグラフに当てはめると、日本人はゾウ並みという結果になる。
すると、人間がいかに特殊な動物になってしまっているかがわかる。
人間はたくさんの食料やもののあふれる中で、過食という文明の罠にかかってしまって、人間という生命システムそのものが、時空の中で人間らしくなくなってしまったのかもしれない。
その上、人間は、便利さという文明の罠にかかり、本来人間が持っている生命システムそのものが狂い始めているようにも見える。
なぜ、便利さだけの現在の日常生活に、我々は埋没してしまっているのか。
たしかに、新しいテクノロジーと共に、我々の生活は便利になった。しかしそれ自体には何の意味もない。便利さを超えて豊かさを創り出していかねばならい。
放って置いても我々の生活は、今後も便利になるだろう。
しかし、便利になっても、本当の豊かさをいうのは、我々側の行き方の選択、判断、活用法のいかんに関わっている。便利さがもたらす情報を、豊かさという知識に変換していく必要がある
人間にはそれを可能にする力が秘められているはずだ。
その可能性を活かさなければ、人間自身が作った便利さへの冒涜であり、なおかつ自分自身へのも冒涜である。
そういう意味では、マイルス・デイヴィスという人は、人類の音楽史上 音楽家の中で唯一『生命体の秘密』を知っていた人だと思う。生物全般の共通項を探り当てた人だと思う。
亡くなった後、時間が経てばたつほどその存在の大きさに気付かされる。
時代に応じた様々な音楽性を見せたマイルスだが、本当は、命の秘密を知った上で、マイルスから、時代にメッセージを発信してくれていた。それに時代が反応していただけだ。
マイルスが、時代を創っていた。
生命体と時間の秘密を知っている唯一無二の音楽家、マイルス・デイヴィス 改めて、心から追悼。命日 9月28日。
高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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