COLUMN#129 OIKAWA:JAZZTOKYO

『寺久保エレナ／ニューヨーク・アティチュード』
text by Kimio OIKAWA

Blue in Green／King Records
KICJ-615　3,000円（税込）

寺久保エレナ・ウイズ・レジェンド：
寺久保エレナ(as)
ケニー・バロン(ｐ)
ロン・カーター(ｂ)
リー・ピアソン(ds)
ドミニク・ファリナッチ(tp,flh) on (4)、(7)&(9)

1. ニューヨーク・アティチュード（Kenny Barron）
2. ワン・フォー・ユー（渡辺貞夫）
3. スター・アイズ（Gene De Paul-Don Raye）
4. オリエンタル・フォークソング（Wayne Shorter）
5. ザッツ・ザ・トゥルース（寺久保エレナ）
6. インヴィテーション（Bronislaw Kaper）
7. ジス・ヒア（Bobby Timmons）
8. ファッシネーション（寺久保エレナ）
9. デル・サッサー（Sam Jones）
10. ボディ・アンド・ソウル(John W. Green)

プロデューサー：伊藤八十八
エンジニア：鈴木良博
録音：2011年4月18日、19日　
スタジオ：アヴァター・スタジオ、NYC

サックスの抜けがいいとは、このような音を指す

音の波紋が耳に心地よく、すっきりした透明感が癒すアルトサックスのサウンド。抜けがいいとは、このような音を指す。オーソドックスなマイキングで捉えた音は、仕掛けがシンプルだから音に濁りがない。内装の写真からの想像だが、とりわけ冒険的な仕掛けは見当たらないが、その分、経験に基づいた安定感がある。アルトの高音部の抜ける爽やかさは奏者自身の音でもあるが、捉えるマイキングで芯の肉厚感が伴っている。
ピアノの響きに注目した。オンマイクながらも空間を含んだ濃密な音は、重量感を持った物質が飛んでくる様に似ている。奏者のタッチの骨太な音色が勢いを持って音像を結ぶ。
確かにドラムスの切れのいい録り方も注目したい。特にキックの音色は注目だ。とかくキックは専用のマイクロホンが登場して以来、ジャズに於けるキックの音色に違和感のあるサウンドが多くなって来た。ここでは、それがない。
確かにと言ったのは、JT「Five by Five」のCD紹介で望月由美が指摘しているからだ。

関連リンク：
CD紹介　http://www.jazztokyo.com/five/five802.html

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。

『寺久保エレナ／ニューヨーク・アティチュード』 text by Kimio OIKAWA

1.31 '16

『寺久保エレナ／ニューヨーク・アティチュード』
text by Kimio OIKAWA