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新音楽雑誌創刊、「Contemporary Music Review」、表紙はレディーガガと少女時代とAKB48の篠田麻里子とジル・オーブリーとクレイグ・テイボーンとチャン・グンソクと岡村靖幸。トップグラビアは、「現代ジャズの巨人たち」として法王モチアン、魔王ウイリアムパーカー、あらい熊マルサリス、覇王スレッギルが並ぶ。巻頭はおれと益子博之の対談「ダウンタウンシーンの新しさをめぐって」。おもな記事は、「菊地成孔DCPRGついに名門インパルスレーベルと契約」「現代に蘇えった三善晃レクイエム初演記録」「篠田麻里子松井玲奈フォトセッション」「復刻・渋谷毅と川端民生デュオ」「デヴィッド・シルヴィアンsamadhi soundレーベル特集」「井上道義×小曽根真対談」「トモコ・ソバージュ、ジル・オーブリーを語る聞き手と論考・福島恵一」「魁皇関が好きな演歌たち」「岡村靖幸ファンク指南」「オノセイゲンDSD音源配信レポ」「マークラパポート新じゃずじゃ」「柴田南雄論(山下邦彦)」「奈良お水取りを哲学する(内田樹)」「ブラックホーク時代と月光茶房(原田正夫)」、付録CDは「旧ソ連時代にアファナシエフが聴いていた能楽音源復刻」「A−Musikエクイロジュ同時代音楽復刻」の2枚、・・・

・・・はっ、夢か。

高校野球NHKラジオ中継が流れると入道雲がのぼり本格的な夏を迎える。

終わらないフクシマ。

いまの日本に必要なのは和田アキ子と三善晃なのだ。


<track 136>
あの鐘を鳴らすのはあなた (阿久悠作詞・森田公一作曲 ) / 和田アキ子 1972

この曲はほぼ40年後の日本に必要とされることを待っていたのだ。もうすでに戦後歌謡曲史に輝く国民的名曲であるけれど、おれにはほぼ「君が代」に聴こえているし、「がんばれ日本」とはこの曲がはなつイメージだ。

72年のオリジナル録音を聴いて驚かされるのは、ジャコパスとクリススクワイアーを足して2で割ったようなベースのはね上がりである(このベース奏者はだれなのよ!)。おれはいつかこの曲でスーパーマーケットつるかめランドの天井板がビリビリ震えているのに気付いて、仕事を放り出してCD屋に行ったことがある。なぜこれだけファンクするベース音が可能だったのか、それは和田アキ子がR&Bの女王として当時の日本をファンクさせていたからにほかなならない。和田アキ子のファンクを継承できた者はいない、辛うじて岡村靖幸が現代に一瞬だけプリンス「3121」に先行したことだけかな。

この曲は朗々と歌い上げるバラードではないのだ、怒りにも似たファンクのスピリットに裏打ちされた躍動が不可欠なのであり、和田アキ子にしか歌えないもの。この曲には呪術めいたちからや鎮魂のちからまでがある。


<track 137>
三善晃 : レクイエム / 岩城宏之指揮・NHK交響楽団・日本プロ合唱団連合 from 『NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ 三善晃』 2011

タガララジオ22で三善晃「レクイエム」、07年に日本伝統文化振興財団が復刻した盤(http://search.japo-net.or.jp/item.php?id=VZCC-1007)を掲げた。2011年の「レクイエム」をライブで聴きたい、と、おれはいつも絶筆のつもりで書いている。なんとナクソスジャパンが”NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ”として「レクイエム」の初演、1971年岩城宏之を復刻している。おれが書いたほぼ同時期7月13日にリリースされている。

作曲家の諸井誠さんが書いている。「誰かが一回過去にやらなくてはならなかった。今こうしたものが出てきたのは、日本が苦境に立っているということと関係があると思う。素晴らしい企画だ。」

<第1期リリース>
「三善晃」「矢代秋雄」「武満徹」「諸井誠」「柴田南雄」「松下眞一」「松平頼暁」「林光」「一柳慧」「石井眞木」「黛敏郎」「湯浅譲二」「実験工房(特別篇)」

<第2期以降予定>
「電子音楽スタジオ」「合唱」「松平頼則」「伊福部昭」「小倉朗」「戸田邦雄」「石桁真礼生」「石井歓」「入野義朗」「別宮貞雄」「團伊玖磨」「間宮芳生」「松村禎三」「廣瀬量平」「助川敏弥」「福島和夫」「下山一二三」「外山雄三」「端山貢明」「水野修孝」「八村義夫」「甲斐説宗」「野田暉行」「岡坂慶紀」「三宅榛名」「池辺晋一郎」「近藤譲」「北爪道夫」「西村朗」「吉松隆」「細川俊夫」「海外作曲家」「オペラ」

ゲンダイオンガクをたいして聴いていないおいらでもビビりまくってしまうラインナップだ。

”かつて世の中に「現代音楽」という歴(れっき)とした音楽のテリトリーが存在していた。現代音楽は現代の音楽であり、そんなの昔も今も同じですよ、などと言ってはいけない。そうした一般論では語り尽くせない、孤高の領域が確かに存在し、そこに足を踏み入れることでしか出会えない、真剣で、妥協なく、敢えて対立することも厭わず、ひたむきに感動表現を追及した音楽があったのであり、それを「現代音楽」と言っていたのである”(諸石幸生)

戦後であり原爆であり鉄腕アトムであり前衛でありシリアスであり圧倒的だった現代音楽なのだ。しかし、この文章の現代音楽に、ジャズを入れても、歌謡曲、ロック、フォーク、タンゴを入れても、それなりに成立しているのではないか?・・・

1971年の三善晃、1972年の和田アキ子、は、同じ空気の中にいた。1970年の万博も。


<track 138>
新実徳英 : ヴァイオリン協奏曲第2番〜スピラ・ヴィターリス Violon Concerto No.2 from 『新実徳英管弦楽作品集』 (カメラータトウキョウ CMCD28237) 2011

日本は合唱の国であるという点でロシアとは地続きである、のは、合唱のコンサートに通うなかで気付いたこと。ロシアの合唱好きは、コミュニズム以前の、声をあわせて一体化してなきゃ生きのびられない網走刑務所以上の寒さです高倉健、という風土が要請したものだ。広大なシベリアの凍土。和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」の背景に聴こえる合唱。三善晃「レクイエム」は合唱が決定的に重要である。

合唱をLPやCDで録音することはできない。ライブと録音の落差は、あらゆるジャンルの中でトップだ。合唱の響きの中に自分のからだと響きが一体化してる、という体験者の感覚は特別なものだろう。ああ、合唱のコンサートに行きたいぞ。

現在、日本の合唱の分野での作曲家ツートップが鈴木輝昭と新実徳英であることに異論はないだろう。ふたりとも三善晃に師事した経歴だ。鈴木と新実の作風は異なるように感じているが、どこがどうなのかまだつかめていない。

新実徳英の管弦楽作品集がリリースされた。繊細なヴァイオリンにとまどったりまとわりついたり表情を変えるオーケストラのヴァイオリンを視ている仕草が涼しくてステキだ。夏は現代音楽のオケだな!と風物詩のように耳に流していた。2曲目もじつに涼しげで心地よい。そんな風情で、あとから解説テキストを読んでみるといろいろ意図や物語りがあるようでそれらが判らない。おれは音色フェチで現代音楽を聴いているのか?

標題曲は09年、仙台フィルハーモニー管弦楽団による演奏。東京だけでなく地方でもこれだけ意欲的なコンサートが実現するのですね。


311をたくさんのひとが水のなかでしんでしまうと予知夢したガキがおれの同僚のいとこの子どもにおるんだが、こないだ9がつにたくさんのひとがしんでしまうこんどはぼくもしんでしまうと予知夢したという。ぐーぜんだから!で、その子は足立区に住んでいる。

ここんとこ、ずっと小出裕章教授の発言ばかり追いかけている日々でもあります。



Niseko-Rossy Pi-Pikoe:1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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