今年８７歳になったイタリア生まれでフランス・パリ在住のピアニスト、アルド・チッコリーニが２０１０年から３年連続の来日を果たした。今年はドビュッシー生誕１５０年を記念して「前奏曲集第１巻」全曲演奏 (2003年に第２巻が演奏され、ライブCD化された。CMCD-28088／カメラータ）とセヴラックの「休暇の日々から」第１巻などを演奏曲目に選んでいる。特にセヴラックの曲は１９７０年代に全曲を録音するなど関心のある作曲家である。当日演奏前の時間に撮影の時間が設けられて、その演奏風景を撮ることが出来た。少しもカメラを気にすることもなく淡々とピアノに向かう姿はチッコリーニの身体から音楽が湧き出ているような錯覚を覚えた。自然体のなかから神々しいオーラを発しているようだった。以前と違うことが２つあった。
杖をついて登場したこと。そしてもう一つは左胸に勲章があったこと。黒の上着に赤・青・緑の勲章がとても印象的だった。赤はレジオンドヌール勲章オフィシエ、青はフランス国家功労章コマンドール、２０１２年３月二コラ・サルコジ元大統領より授勲、緑は芸術文化勲章コマンドール。さりげなく付けているのが良い。日本に来て特に和食にこだわる事はないという。食べ慣れているサンドウィッチなど軽いもので済ましているとの事。アンコールではピアノの鍵盤だけに当てたスポット照明で演奏した。大きくてしなやかな手指から紡ぎだされる音楽に感動。多くの人がそれぞれの想いを抱いて．．．。