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Vol.28 |
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先日、名古屋のイベントでひさしぶりに KITARO(喜多郎)さんに会った。実に、感慨深かった...。
想えば、私は、今年で、ギターを弾き始めて50年。琴を弾き始めて、51年。
実に半世紀である。
このことは、自分自身も驚きであり、偉大であるとも思う。
私を捉えて、「雅楽からリズム&ブルーズまで」という言い方があるが...私の音楽性の根幹は何かと問いかけさせられる感慨がある。
実家が、邦楽の関係だったので、無理やり琴を弾かされていたが、ギターは好きで弾いていた。いや、隠れて弾いていた。だから、苦楽を共にした戦友だ。
「弘法筆を選ばず」とはいうが、いろいろなギターを手にしてきた。半世紀の区切りとしてギターについて語りたい。
ご存知の方もあろうかと思いますが、私は20代の時はブルーズよりのロック・ギタリストだった。だからほとんどがエレキギターだった。
彼との出会いから行こう...。
一番はじめに持ったギターは、ハワイアンギターだった。家族一緒の時に駄々をこねて無理やり買ってもらった。今でも私の部屋に燦然と輝いている。
次に手にしたのが、通信販売のエレキギター。お年玉で、これも隠れて買った。 確か、TESCOだった。
2ピックアップのエレキ。これは、小学校3年の時。私の年齢で、当時エレキギターを持っているということ自体が特殊な感じであった。周りの同級生は、驚異と奇異の目(小3では早熟すぎた)で、私のことを「エレキ」と名づけた。 変なあだ名だ。平賀源内でもあるまいし...。
お決まりのように、「ベンチャーズ」を狂ったようにコピーした。<ウォーク・ドント・ラン><パイプライン><ブルドッグ><キャラバン>...。
そして、世代の定番「ビートルズ」。<マネー><涙の乗車券>。
リッケンバッカーに手を出したのはこの頃。あの、手に吸い付く感じがいまだに感触として残っている。カール・へフナーのベースもこの頃里子に出された兄貴に弾かせてもらった。
ブルーズ・コードを覚えたのもこの頃だ。今辺のことは、いずれ機会を改めてゆっくり語りたい。
平行して近所のおじさんから借りたクラシックギターで<禁じられた遊び>をトレモロで練習していた。
小学校の先生から「ビートルズ」を不良扱いされ、禁止されてからひたすらクラシックを聞いていた。
中学に入って呪縛から開放されると、YAMAHAのフォークギター“FGシリーズ”。兄貴がFG700というのを持っていてうらやましかった。
高校に入って出会ったのが、ストラトキャスター。それも白の。ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)の真似をしているわけではないが、弁当箱のようなブースターをエフェクターとして自慢気に使い、大音量で、したり顔で、ツェッペリン(レッド・ツェッペリン)の<コミュニケーション・ブレイクダウン> <レモンソング>をかき鳴らしていた。
ジェフ・ベックの真似をしたのもこの頃。<プリンス><ブルーズ・デラックス>。彼には、とてつもないパラダイムの大きさを感じた。どんなパラダイムかって...?
規制の枠に収まらない音遣い、時として突拍子もないリズム、魂から出てくる叫び...。人間の情念のままにほとばしる音に魅了された。
しばらくは、ストラトキャスターにはまり、虜になっていた...。
それから様々な紆余曲折がありブルーズにのめり込んで行った。
高校の頃、『クラプトン・ベック・ページ』というアルバムがあり、(いわずと知れた、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ページ、当時三大ギタリストと呼ばれた人たちだ)ジミー・ページがサイドギターを弾いて、クラプトンがリード弾いている曲があり、クラプトンのブルーズの歌い振りと旋律の自然体の連続性に驚嘆した。三人が曲によって交互にリードを弾いたりサイドに回ったりしているだけで、とりあえず曲名がついていたが、ほとんどが12小節のブルーズ・コードで主旋律はとくになく、アドリブをしているだけ。 もちろん少しずつリズムは違う...。
時に6/8スローブルーズにいたっては、クラプトンの正統派のブルーズの歌い振りに狂喜した...。私の中では、ベックのトリッキーさをはるかに凌駕してしまった。
それからクラプトンのバンド「クリーム」に没入して、ES-335セミ・アコースティック・ギターと出会う。
ES−345、ES−355、ルシール。
さーーそれからが大変。ブルーズを遡り、ブルーズを貪り、ブルーズを渉猟する旅が始まる。
ロバート・ジョンソン、ミシシッピィー・ジョンハート、ブラインド・レモン・ジェファーソン、ジョン・リー・フッカー、マディ・ウォーターズ...。
そして、そして、偉大なるギタリスト、ウエス・モンゴメリーとの出会い。
ここからは、少し時間がかかる次回に回そう。
これは、単なる昔話ではない。
世代を超えて、次代に伝えていかなければならない音楽文化の伝承がある。
まさしく、口伝え、口承である。
KITARO氏との再会は私にそのことを心から動機付けた...。(続く)
高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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