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Vol.32 |
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イタリアと日本のトップ・ミュージッシャンを集めて行われたJapzItayにわれわれG2usも参加させていただいた。
今回のイタリアの旅は、私にとって、特異なことだった。
少し寓話的に述べてみよう...。
ここでは、大声で話す客もいないし、黄色い笑い声も飛び交わない。
シャンデリアも、着飾った女性もいない。はるか大昔の人間の集いと同じだ。
ここにいると時が止まっている感じがする。
人間ってそんなに変わっていない...。
耳元で、
「人間の営みって、本当に進化しているのかねえー」
『うーーうん』
「そんなに変わってないんじゃない」
と、デジャビュ...。
『旧約聖書の創世記に記載された壮大なドラマは、すべて事実であり、物的証拠もある。
また人類は恐竜とともに暮らしていた時代が確実に存在する。』
そう主張して、アメリカはテキサス州グレンローズに、理論を証明するために博物館を建設した人がいる。
カール・E・ボー博士。博物館の正式名称は「Creation Evidence Museum」。
現代の学校で教育されている生物学の授業は、だいたい有名なチャールズ・ダーウィンの進化論にのっとって進められる。
しかし、アメリカにはこの進化論の考え方に反対する科学者集団が歴然として存在し、その勢力を拡大しつつある。
「クリエイショニスト」というこれらのグループは、一部のアメリカ国内の高校の授業の中で実際に進化論と反するカリキュラムを教えるくらいだ。
世界中の生物学者の中には、進化論に大きな疑問を投げかけている人もいることは事実である。
もっともクリエイショニスト(創造派)たちの考えは、生物学者たちよりも、もっと極端だ。
進化論からの決別は、とりもなおさず、彼らにとって旧約聖書に書かれた事柄の一言一句が科学的事実であることを意味している。
旧約聖書の記述に、
第一章 20節
...水は這う生き物を這わせ、翼のあるものは地の上にある天の大空の表を飛べ
第一章 21節
...海の大いなる怪物と種類にしたがって、自ら生じたすべての這う生き物、種類にしたがっての、翼があるすべての鳥を創造された。
創造派の科学者は、この部分を水中で発生したアメーバといった原始動物が生物に変化し、「大いなる怪物」とは恐竜であると分析する。
グレンローズは近くにパルキシー・リバーという小さな川があり、ここは恐竜の足跡が無数に発見されることで、古生物学者たちに知られている。
特に、ティラノザウルスは有名だ。
カール博士は、同一の地表層に恐竜と人類の足跡を発見したとしている。そしてこの事実が、人類と恐竜が共に生きていた時代を証拠立てているというのだ。
従来の生物学に従うと、恐竜は白亜紀以降(六千六百万年前)絶滅したことになり、人類出現の時代(数百万年前)とはどう考えても共通部分がない。
また、カール博士は、四億三千四百年前の地層から出土したという人類が製作したとするハンマーを博物館のコレクションにもっている。
進化論系の科学者の言い分では、この年代には、いかなる人類も存在しないことになる...。
...と、また切れのいいシェイカーの音が響く。いつもより見事な手つきだ。
私は、口に運びかけていたグラスの手を止めた。脚の細いグラスには、白く半透明の酒がなみなみと満たされ、爽やかないい香りを放っている...。
別に進化なんかしなくてよい。
成長さえしていれば。
今回のイタリア・ミラノのコンサートは、前述のカール博士の独り言のような気がする。
寓話的な心地よさの中で夜が更けていく。
明日もきっと晴れるだろう...。
(続く)
高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
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#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
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#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
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Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
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#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
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