#69. 栗本尊子
メゾ・ソプラノ
2013年7月17日 紀尾井ホール



栗本尊子Msが第23回新日鉄住金音楽賞特別賞を受賞した。その受賞記念コンサートが7月に東京で行われた。93歳。背すじを真っすぐに、ちょっと上を向いて歌う姿はみなぎる若々しさを感じさせる。正真正銘の現役歌手である。
長い人生で多くの出会いがあり、出会いの全てを吸収してきた。常に前向きでユーモアがあり、おおらかで周りを明るくする性格は今も魅力的である。山田耕筰に直にレッスンを受けたり、信時潔、木下保、青山杉作、リア・フォン・ヘッサート等に出会い、同世代の高田三郎、平井康三郎、團伊久磨、中田喜直、そして「日本の音楽界の奇蹟」と評した畑中良輔など多くの才能が彼女を取りまく。オペラでは1946年『蝶々夫人』のスズキ役で衝撃のデビュー以来、『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』をはじめ『ばらの騎士』『カルメン』『こうもり』『ポッペアの戴冠』『ピーター・グライムス』『泥棒とオールドミス』などバロックから現代作品まで、『黒船』『修禅寺物語』『聴耳頭巾』など邦人作品に出演。多くのオペラは日本初演だったという。「西欧では、オペラは動いて歌うらしい」という程度の日本のオペラ事情から出発する。長門美保歌劇団、藤原歌劇団で活躍し、そして二期会の誕生にも立ち会う。2002年「グレート・マスターズ」公演での入魂の絶唱が聴衆を魅了する。それが縁で84歳で初のCDを出す。
年齢を超えたみずみずしい歌声のキープの秘訣は何ですか、と問われ次のように答えている。「若い頃にはなかった体の変化がございます。年を重ねると引力の関係で体のあらゆる部分が下へ下へとさがってまいります。顔の皮膚も内蔵全部。さがってしまうといろいろ体にある〈穴〉が塞がってしまうのです。耳の穴、鼻の穴、鼻の奥の方の穴など、とくに顔にはたくさんの穴があります。この穴が引力でさがってしまって、音が聞こえなくなります。声も通らなくなります。どうしたらいいのか。ある時自分で自分の耳をキューと引っぱりあげてみましたの。歌いながら耳を上へ、横へ、下へと引っ張っておりましたら、よく自分の声が聞こえるようになりました。このことを発見した時に“これだ”と思いました。」と若さの秘訣を語っている。
半生を綴った書籍つきCD『奇蹟の歌』(CMBK30001)、『愛と祈り〜歌いつがれる日本のうた』(CMCD28110)、『栗本尊子/グレート・ヴォイス』(CMCD20096)のCDがある。
二期会名誉会員。まだまだ魅力的な歌声が聴けそうである。

林 喜代種:東京都日野市在住。80年代初めより現在までクラシック音楽を撮影。一時フォーク・ロック・ジャズ・ 民族音楽も。いま、落語・文楽に興味。(社)日本写真家協会会員

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FIVE by FIVE 注目の新譜


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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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