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Vol.39 |
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最初に鬼山に会ったのは、Jazz Tokyoの稲岡編集長に連れられて、「とにかく凄いのがいる」と鼓舞されて ...。
ビッチェズ・ブリューで、はじめて演っているのをじかに聞いた。
どんな店かって?店をやっている人は杉田誠一さんという著名な写真家。
何しろ世界中の写真家の中で最もマイルス・デイビスのお姿をたくさん撮った人。
とっても偉い人なのだ。
店をやっている人が偉いのは置いといて...とにかく仰天した。これが尺八だと思った。
青木鈴慕を継ぐのはこの人ではないか。
此れも失礼な言い方。
息の音が聞こえる。
一切の虚飾や体裁をはぎとったところに残る人間の本体。
とにかく人間の生きている音が聞こえる。
生き物がそこに息づいている。
"野生の尺八"、その通りの人だ。
大由鬼山(だいよし・きざん/都山流 大師範)
古典を基に動的・慟哭的尺八音楽を追求。尺八の持つ可能性の限界を求めて、邦楽器以外のジャズ・ロック・クラシック・民族音楽等々の異分野セッションに積極的に参加。"野生尺八"と自ら名乗り、演奏する場所や条件にこだわらず、あらゆる分野での尺八活動を国内外を問わず展開。血が騒ぐ強烈な音質と、汗が迸る熱烈な演奏スタイルは、従来の尺八観念を打ち破り独特で、感動的でインターナショナルな尺八演奏家として評されている。
私は仕事柄たくさんの尺八の演奏家と仕事をしてきたけれども、尺八という楽器のコンセプトを根本から考え直させられてしまった。
歴史の中の虚無僧の心意気が蘇った感じだ。
いや、竹を切って最初に吹いた人の心意気が蘇った感じだ。
2回目に会ったときは、飲み屋。
この酒の飲み方が凄い。どんでもない尺八の荒々しさと全く同じだ。
何しろ、一度に二杯頼んで、私の分も二杯頼むから机の上は四杯になり、また同じように追加するからイッキに八杯になる。驚天動地の飲み方である。
その後、予定通り海外で一回仕事をして、生きざまと音の虜になってしまった。
海外の仕事ではとにかく安いワイン(ヨーロッパのある国では1本100円である)をたらふく買ってきては、飲み干す...酒の飲み方の豪快さと同じ音を放って帰国。
とにかく、彼の音が耳からはなれない、ことあるごとに仕事を頼もうとする。
夏のイベント
喜納昌吉とのジョイント。
東日本大震災追悼コンサート「鎮魂・和の調べ」
事前打ち合わせの事。
喜納側が思っていた事、 ...我々が洋楽のスタジオ系の規格にはまったミュージシャンだと思い、
演奏に鼻から期待をしていなかった。
私が思っていた事、 ...どうせ、政治家になった人だから、純粋さのかけらもなくなっているだろう...。
当日まで、譜面も何もなく、事前音合わせも全くしないままであった。
しかし、実際に演奏をしてみて、お互いが、大きな誤解であったことに気づいた。
素晴らしく純粋で魂を揺さぶる稀代のボーカリスト 喜納昌吉
原点にある倭の精神を根本から思い起されてくれたのは、まさしく鬼山であった。
心から。
彼はG2us+喜納に鬼山の血を注ぐ事によって見事にどちらの魂をも呼びさます媒介の働きをしてくれたのである。
世界の名曲「花」を喜納さんが歌った。
まさしく天から何かが降ってきていた。
あまりの感激に仙台で浴びるほど酒を飲んでしまった。
次に共演したのは12月。
スウェーデン大使館。ストリンドベリ没後100年記念イベント。劇団グスタフ「令嬢ジュリー」。
いわゆる劇伴である。
二人並んで板付き、つまりずっと客席からみえる表舞台の上手(かみて)の端に張り付いて演奏するという、まるで邦楽のような形態である。
彼の音を出す精神は、古今和歌集の仮名序の心志がある。
「古今和歌集」仮名序
やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふ事を、見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり。花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生きるもの、いづれか歌をよまざりける。力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり。
(口語訳)
やまとうたは、人の心を種として芽生えて育ったさまざまの葉だといってよい。世の中に生きている人々は、さまざまな出来事に関わっているので、心に思うことを、見るもの、聞くものに託して、言い表したのである。花の間に鳴く鶯、清流にすむ河鹿の声を聞くと、生とし生けるものすべて、歌を詠まないものなどありましょうか。力ひとつ入れずに天地の神々の心を動かし、目に見えない精霊たちの心にも もののあはれを感じさせ、男女の仲を親しいものとし、勇猛な武士の心をも、和らげるのが歌なのである。
劇の中に没入し、役者と同化していく。
役者の仕草を見て、尺八が一段と艶っぽくなり、その音色を聞いて役者が見事にはまっていく。
インタラクティブなやりとりによって、劇全体が群を抜いてクリエイティブなかたまりになっていく。
演奏と芝居が渾然一体となっていく。
劇場版「学習する組織」だ。
私の問いかけに素直にどこまでも素直に答えてくれる...。
大由鬼山
彼は、尺八という伝統楽器の宿命を背負って日本の心根を体現していく唯一無二の魂の息吹だ。
高谷秀司(たかたに・ひでし)
1956年、大坂生まれ。音楽家、ギタリスト。幅広いジャンルで活躍。人間国宝・山本邦山師らとのユニット「大吟醸」、ギター・デュオ「G2us」でコンサート、CDリリース。最新作は童謡をテーマにしたCD『ふるさと』。2010年6月から約1ヶ月間、オーストラリアから招かれ楽旅した。
www.takatani.com
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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