COLUMN#153 OIKAWA:JAZZTOKYO

『狭間美帆／ジャーニー・トゥ・ジーャニー』
text by Kimio OIKAWA

ユニバーサル・ミュージック／Verve
SHM:CD UCCJ-2107
3,059円（税込）＊11月14日発売予定

キャム・コリンズ(as,cl)
庵原良司(ts,ss,fl)
アンドリュー・グダウスカス(bs,bcl)
フィリップ・ディザック(tp,flh)
バート・ヒル(fhrn)
マーク・フェルドマン(vln)
ジョイス・ハマン(vln)
ロイス・マーティン(vla)
メーガン・バーク(vlc)
ジェイムス・シップ(vib)
サム・ハリス(p)
挟間美帆(cond,p/4＆6)
サム・アニング(b)
ジェイク・ゴールドバス(ds)
クリス・レザ(cond/4)
ゲスト：
ステフォン・ハリス(vib/2)
スティーヴ・ウィルソン(as/4)

1. MR.O
2. トーキョー・コンフィデンシャル
3. ブルー・フォレスト
4. ジャーニー・トゥ・ジャーニー
5. パパラッチ
6. ビリーヴィング・イン・マイセルフ
7. バラード
8. ホワット・ウィル・ユー・シー・ホエン・ユー・ターン・ザ・ネクスト・コーナー?
9. 陽だまりに,一冊の本

Recording & editing Engineer：内藤克彦
Recorded atシステムズ・トゥー、ブルックリン、2012年4月2～3日
Mixing engineer：ジム・アンダーソン
Directed by ジム・マクニーリー
Produced by狭間美帆

魅力一杯の心地いいジャズ・サウンド

何と心地のいいサウンドであろうか。リバーブ,ほんのチョッピリだけど,心地の良い余韻が残る。弦楽器群にリバーブを押さえた細工で挑戦しているが,それでも心地いいのだ。弦楽器,即,空間処理と思われがちだが,この録音は参考になる。スタジオ空間だけでも表現豊かな録音になることを教えられた。
管楽器群の音のとらえ方に,クラシック録音をも思わせる手法が窺える。リード楽器のサウンドは,まさにクッラシック狙いの音だ。ジャズ・サウンドに新しい傾向が芽生えていることを,この録音は知らしめている。
トゥッティでも音が優しい。しかし,ジャズの緊張と発散の快感は失われていない。根底にある膨らみのある音の録り方が救いとなって,ビッグバンド,弦楽器群,が膨大に膨れあがってくる音像が迫り来る。
この手の録音では,ミックス時にバランスを整える手法に頼りすぎると,音楽のダイナミズムが失われる結果が多いが,私の推測だが,録音時にかなり完成度の高いバランスが整っていたと思う。これを基盤に微調整によるバランシングで,見事な音像の陰影が出来上がっている。録音時のエンジニア,ミックス時のエンジニアの総合力で魅力一杯のジャズ・サウンドが聴ける。

CDレヴュー：悠雅彦
http://www.jazztokyo.com/five/five948.html

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。