COLUMN#154 OIKAWA:JAZZTOKYO

『佐藤鈴木田中／ハレの日』
text by Kimio OIKAWA

キャスネット CSNT-8007
3,000円(税込)

佐藤芳明 (accordion)
鈴木広志 (sax)
田中庸介 (guitar)

1. O Farol Que Nos Guia
2. ハレの日
3. やまのいえで
4. 紅緑灯のJAM
5. Blueblack Line
6. 紙のドレス
7. Dance
8. Marine Snow
9. Fixed Question

Recording Date：October 20,21 & 22, 2011
Recording Studio：Studio Ded’e
Recording & mixing engineer：Tanemura Naoto
Producer：Sato Suzuki Tanaka

バリトンサックスの超絶優秀録音

思いっきり重厚感で仕上げた録音手法に驚嘆。バリトンサックスの重みがオルガンを思わせる低音部を構成し、時にベースを思わせる部分も。バリトンサックスの超絶優秀録音と私は評価。いや、まだある。バス・クラリネット。私も挑戦し続けているが、この様な膨らみと重い音はいまだに録れていない。音楽構成のサウンドを、この強気な低音部作戦が成功に結びつけているのは間違いない。
ギターの弦の響きに骨太な共鳴を伴い、弾ける音も音の厚みを感じる。ギターは広帯域のマイクで処理すれば、ある程度、満足の音質を確保できるが、ここでは、中音域の分厚さに注目したい。
乗ってくるソプラノサックスの透明感が、音像の奥深さを表現していて、裏側にあっても存在感が濃厚に浮かぶ。楽器の特性を考慮した録り方が、この複雑な音楽に対して効果的に働いている。
アコーディオンの音質とバランスの取れたミックスも強調して書いておかねばならない。演奏ノイズを抑えながら倍音に含まれる楽器の特性を押さえたサウンドの処理が、すべてを支える要となっている。
トゥッティで濁りをまったく感じさせず、それぞれの楽器の持ち味が、確かな音の群像としてスピーカーから放たれているのだ。アコーディオンの倍音がすべての装飾になっている。

及川公生：1936年、福岡県生まれ。FM東海（現・FM東京）を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」（ユニコム）。