サシコ・ガヴリロフの草津アカデミーにおけるヴァイオリンのワークショップは毎年人気の講座である。小学生からプロの音楽家まで受講生は多岐にわたっている。そしてこのクラスからもすでに世界的に活躍している人も多く巣立っている。ガヴリロフは受講生の実力に合わせたレッスンを行っている。ときにはヴァイオリンの構え方、弓のボウイングなど基礎的なことなどを丹念に繰り返す。
最初のヴァイオリンの教育を父親より受け、W.ダヴィッソン、M.コヴァックスの各氏に師事。１８歳でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターとなる。１９９６年までケルン音楽大学教授を務め、現在はハンス・アイスラー音大客員教授。またソリストとしてヨーロッパの一流オーケストラやショルティ、ブーレーズ、サロネン、ベルティーニ、インバルなど世界的指揮者との共演が多数あり、室内楽奏者としても活躍している。またリゲティ、カーゲル、リーム、イサン・ユン、シュニトケなどの現代音楽にも積極的に取り組んでいる。１９９２年リゲティが彼に捧げたヴァイオリン協奏曲をケルンで初演し大成功を納める。その後１００回以上世界各地で演奏している。
今年の草津でのリサイタルでは西村 朗の｢微睡（まどろみ）ヴァイオリンとピアノのための｣を演奏した。名ピアニストのブルーノ・カニーノが、なんとガヴリロフの譜めくりをするというサプライズがあり、会場がどよめいたが当人たちは意に介さず演奏を始めた。カニーノの絶妙なめくりのタイミングはサスガだった。
レコーディングも多く行っている。彼の演奏が聴けるCDは、２８CM-５２２｢残光｣西村朗、CMCD-５００３２「尹伊桑の芸術Vol.９」、CMCD-２８１２５「H.ヴィリ：室内楽作品集」、３２CM-１７４「モーツァルト：協奏交響曲イ長調」、ほか。
ガヴリロフは今年８３歳。まだまだこれからも素晴らしい演奏が聴けそうだ。