Vol.82|
Morry Burns
text by Seiichi SUGITA





 Morry Burnsを紹介してくれたのは、竹内 直(ts)である。
 Morryは、横浜は本牧の名門<ゴールデン・カップ>でDJと演奏活動をやってきた。もうひとつの根拠地=ホームは、黄金町<試聴室 その2>。京急・黄金町のガード下に位置する、横浜の建築家によるアート空間である。
 ここは、ほんの4年前までは、いわゆる紅燈街(売春通り)。それがどういうわけか、突然、アート空間に変わる。ジャズ(性交の意味)が20世紀の初めに、ニューオーリンズの売春宿で誕生したのだけれども、黄金町でいま、新しい空間が生まれつつあるあることは、現実である。<試聴室>は、ライブ・ハウスでもあり、貸本屋でもあり、図書館でもある。近々、ぼくは、Morryとのトーク・ショウに参加。テーマは、「ロフト/表現者にとって、場とは何か?」である。
 黄金町のアート空間が生まれて即、訪れたことがある。最も興味深いのは、三宅一生の流れを汲むブランド ”me” の出店である。伝統的な民族衣裳の色づかいと素材を生かした、ポスト“ポスト・モダン”の空間は、とてつもなく鮮烈である。視る音楽!! ただし、現在は、残念ながら、撤退している。
 さて、Morryは、根拠地のひとつとして白楽<Bitches Brew for hipsters only>を加えることとなる。Morryは、もともと超ラジカルでハードなパンク・ロッカーであった。その並はずれたオーガナイザーとしての能力は、幾多のジャンル・プロパーという枠を突き抜けてしまう。今年、2012年は、ジョン・ケージ生誕100年だってご存知かな?
 Morryは、1962年(Morryはまだ生まれていない)の<草月>に現在こだわる。一柳 慧、小杉武久、小野洋子らが、ジョン・ケージのミュージック・コンクレートを初演したのである。
 Morryの楽器は、ひとつのツールでもある。いま駆使しているのは、モノ・シンセサイザーとシンバルである。シンバルは、ただスティックで打楽するだけではない。バイブレーターでシンバルを回転させる。今まで聴いたことのない何とも奇妙な音は、とめどなくセクシーで触発される。
 Morryはいま、もうひとつの同時代音楽としてのジャズを確実に、リアルに創出しつつある。<Bitches Brew>における初めての共演者は、竹内 直。とりわけ、フルートとの交感が、挑戦的。竹内は、心底楽しむ。肉声で低く唄いながら、フルートを吹く。肉声とフルートとのワンダーランドを誘発させるのが、Morryのモノ・シンセとシンバルというわけ。Morryはどこまでもとてつもなくクールである。
 もうひとつ特筆すべきは、アーティストはエンターテイナーでもあることに徹している。「客が入ってなんぼのもの」なのである。加えるに、情報発信の場を、横浜に限定していること。
 遠かろうが、近かろうが、横浜に来なければ、Morryのソリッドな空間とは出会えないというわけ。
 Morry Burnsは、横浜生まれの横浜育ち。年齢は、30代の中頃と思われる。
* 写真左がMorry

杉田誠一
杉田誠一:
1945年4月、新潟県新発田市生まれ。
1965年5月、月刊『ジャズ』、
1999年11月、『Out there』をそれぞれ創刊。
2006年12月、横浜市白楽に
cafe bar Bitches Brew for hipsters onlyを開く。
http://hakuraku-bb.tumblr.com/
著書に『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』
『ぼくのジャズ感情旅行』。
http://www.facebook.com/Hakuraku.BB
及川公生のちょっといい音空間見つけた >>


♪ Live Information
open 7:00pm/show 8:00pm

4/30* Mon “Dedicated to 金井英人”(5月6日まで)
田村 博(p) 高木潤一(g) JUNマシオ(MC,vo,笛,ds) 他
5/01* Wed 中牟礼貞則(g) 礎 繁(b)
5/02* Wed 大由鬼山(尺八)大沢逸人(b)
5/03* Thu 加藤崇之(g) ソロ
5/04* Fri 福田美鈴/金子秀夫/うめだけんいち(ポエトリー・リーディング)
尾山修一(ts) ケミー西丘(p) JUNマシオ(ds)
5/05* Sat さがゆき(vo) 遠藤光夫(g) 緑川一男(b)
5/06* Sun しかたたかし(as) 佐藤浩二(g) 原 洋一(p) 谷口雅彦(b)
5/07 Mon 土田剣史(p) 他
5/08 Tue Morry Burns (synth, cymbals) Marcos Fernandes(perc)
SEIDO(Rod-g)
5/09 Wed 永井隆生(p) 小沢基良(b) 黒崎 隆(ds)
5/11 Fri 纐纈(こうけつ)雅代(as) 他
5/12 Sat TOMO(hurday gurday) サトウアキラ(liquid light)
5/13 Sun “モチ・ラボ”望月 孝(g) 他
5/14 Mon 永井隆生(p) 小沢基良(b) 黒崎 隆(ds)
5/15 Tue ポスポス太谷(accordion, vo)
5/16 Wed 松戸志朗(ss) 他
5/18 Fri “風神雷神”大由鬼山(尺八)藤川 清(jambe)
5/19 Sat “晋”企画 五十嵐 晋(as) 他
5/20 Sun 佐藤道子(ce) 奥村義道(p) 夢野愛子(vo)
5/21 Tue “独創歌意”鶴川晋司(サクセロ)
5/25 Fri BULL松原(vo) 橋本啓一(p)
5/26 Sat 金剛 督(ts) 林あけみ(p)
5/27 Sun “伽藍”井上史郎(e-b) 山内勝司(e-b)
5/28 Mon 山見慶子(p) JIBO(vo)
5/29 Tue Morry Burns (syunth, cymbals) 菊地雅晃(b)
5/30 Wed 城田有子(p) ケチャバンド他

予告!
6月11日(月)〜17日(日)“林 栄一 7Days”

問)Btches Brew 090-8343-5621(杉田)
http://hakuraku-bb.tumblr.com/
http://www.facebook.com/Hakuraku.BB

JAZZ TOKYO
WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.