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大由鬼山が、尺八でシャズを演奏するようになったのは、兄(日野皓正コンボの一員)がジャズ・ベーシストであったからに他ならない。独奏と、箏と三味線との合奏の日々より、ジャズ.・ミュージシャンとの共演の方が、はるかにスリリングで楽しいに違いない。
大由鬼山が、ジャズ・シーンに登場するや、必ず空間を喰ってしまう。その背景に、港町「横浜」がさやかに浮上してくる。日本のニューオーリンズってとこかしら。
1960年代末、五木寛之(横浜・白楽在住)の『海を見ていたジョニー』が大ベストセラーとなる。「ジョニー」は、ジャズ・トランペッター、舞台は横浜。登場するジャズ・クラブのモデルとなったのが<ストーク>。現在は、火事のためなくなってしまった。
かつて、横浜は確かにジャズの街であった。ぼくにとっての「かつて」とは、1960年〜1975年の間である。その中核となったのが、中華街(山下町)の<ストーク・クラブ)である。正確な位置は、現在の<ウインドジャマー>の前。ぼくの記憶が正しければ、<ウインドジャマー>は元の<レッド・シューズ>。もろ、アメリカのディスコで、横浜の新しいステップをヴィヴィッドに発信し続ける。どちらも初めて入るには、かなりの勇気が必要ではあった。
ぼくが<ストーク>に通うようになるのは、60年代の後半からだけれども、すでに<ウィンドジャマー>はあった。店内は真っ暗で、インテリアも黒が基調。巨大な「エボニー・クイーン」のイラストが奇妙に艶かしく壁を圧する。2Fはスロットを始めとするゲームのスペース。ブール・バーでもあり、まるでアメリカのカジノそのもの。
1Fのカウンター内に、グランドピアノが入っているというか、埋まっている。通常は、ピアノ・トリオであるが、しばしば、リードやギターが入る。ドアを開けると、そこは、キャッシュ・オン・デリバリーのアメリカ。客はほとんどアメリカ人っていう日も多々。立錐の余地のないことも。実際に外まであふれ返る。
近くには、本牧の米軍キャンプ(現在の<マイカル・本牧>)。ここ白楽の近くにもMIZUHO埠頭、神奈川新町には、ミルク・プラント。岸根公園には、米兵の死体を洗浄し、部位を繋ぎ合わせる施設がある。有名な観光地、猫カフェ<スターダスト>は、MIZUHOの入口にいまもある。
そう、米兵のなかに、多くのジャズ・、ミュージシャン(そのほとんどが何故か有名ビッグバンドのメンバー)とジャズ・ファンがいたってわけです。横浜のジャズ・シーンは、ベトナム戦争特需で沸きに沸いた。
今まで、<ストーク>のことがほとんど語られて来なかったことは、不思議である。東京と一線を画した横浜の“生”ジャズ・シーンが慄然とあるというのに。夜な夜な、沸点に到達しない限り、夜明けは来ない。今夜何が起きるのか、行ってみなければ分からない。日本ではまったく知られていないのに、アメリカ陣は、舌を巻くほどメチャうまい。しかもハートはホットだ。ベトナム帰りもいたけれど、これからベトナムへ出かける兵隊は、岸根公園に帰って来るかも知れない。
大由鬼山は<ストーク>セッションでのし上がったアーチストのひとりである。『モカンボ・セッション』(Polydor)、『銀巴里セッション』(TBM)に加え、ストーク・セッションをジャズ・レジェンドに加えたい。
大由鬼山は、横浜で多感な高校時代をホットに謳歌する。登山と尺八に熱中の日々。生まれは、1948年、兵庫県西宮市。免許皆伝修得は、69年。師匠は、都山流尺八流祖直門、加藤栖山。大師範となるのは、82年である。自らを“野生尺八”と名付け、今や日本よりも海外で名声を博す。
血が騒ぐ自己表出のホーム=本拠地は、<ストーク>の他、<ウインドジャマー><ハングリータイガー><クリフサイド><ダウンビート><ジャズメン倶楽部>、等々いずれも横浜。現在のホームは、<エアジン><Bitches Brew>の他、<銀座シグナス>。<Bitches Brew>では、坂田 明(as)と初共演。本年5月ミラノのジャズ・エイドJapzItalyで、両者の狂熱にしてクールな、まさに「血が騒ぐ」時空はYouTubeがリアルに伝えてくれる。
都山流三代目、大由鬼山は言う。
「本流をきっちり押さえれば、何をやってもいいのです」。
__あえて、ジャズ・ビヨンド、尺八ビヨンドの交感キー・パーソンをあげるとすると?
「喜多郎、金井英人(b)、吉沢元治(b)...。喜多郎の譜面って、絵なんですね。吉沢さんとは、98年、ニューヨークの他、ミネソタ〜アトランタ〜アリゾナで激しくインプロしました」
金井英人は、昨年4月8日、「百年の孤独」を痛飲後、楽旅先で死去(79歳)。追悼演奏は、金井のにこやかな写真に向かって、<エアジン>と<Bitches Brew>で行われる。
大由鬼山の凄さは、反平均率と、譜面化できない超アナログな倍音にある。いいかえれば、つねに尺八の限界に達しようとしているということ。
ちょっとここで、尺八の歴史をさらっておこう。実は、室町に中国より伝来したが、何度も強圧を受け、完全に消されてしまった時すらある。誰もが知っている虚無僧は、宗教に他ならない。尺八演奏は、お経なわけ。明治になると、邪宗として完全につぶされる。そこで音楽の流派として誕生するのが、都山流なのである。楽器=音楽は、時の権力者によって弾圧を受ける。
さて、ぼくがいま、最も魅了されるのは、“KIZANオールスターズ”と“風神雷神”である。前者は、ケチャ、ガムランがベース、ピアノの城田有子は、バリ島に別荘を持っていて、こよなくスポンテイニアスな楽園を現出させる要である。竹の打楽器にいつも癒される。
“風神雷神”は、2008年3月、ニューヨーク、イーストヴィレッジ<Drum>でデビュー。ジャンベの藤川清とのユニット。藤川はベルリン在住。CD『アフリカ』は、2010年に発売開始。あっという間に1000枚を完売。ジャズ・ビヨンドのボーダーを疾駆する。
やっぱり、音楽って「地がざわめ」かなくっちゃ、つまんない。
最後におそるおそる聞く。
__あえて、意識している尺八奏者はいる?
「ネプチューン海山ですかね」
ネプチューンは、現在、千葉の竹林に自ら建てた家に住み、尺八を創る、ジャズ尺八奏者である。意外にも、人間国宝・山本邦山の名前は挙がらない。
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杉田誠一:
1945年4月、新潟県新発田市生まれ。
1965年5月、月刊『ジャズ』、
1999年11月、『Out there』をそれぞれ創刊。
2006年12月、横浜市白楽に
cafe bar Bitches Brew for hipsters onlyを開く。
http://hakuraku-bb.tumblr.com/
著書に『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』
『ぼくのジャズ感情旅行』。
http://www.facebook.com/Hakuraku.BB
及川公生のちょっといい音空間見つけた >>
♪ Live Information
open 7:00pm/show 8:00pm
| 8/01 | Wed | 吉野敦子(vo) 永井隆雄(p) 小沢基良(b) 黒崎 隆(ds) 吉野敦子は、名手永井隆雄が見出した大人のディーバ。去る7月28日(土)には、66周年を迎えた元町<クリフサイド>に出演。聴衆はおよそ150名。実は、吉野敦子がプロ・デビューしたのはBitches Brew。 |
| 8/02 | Thu | 土田晴信(org) 南野陽征(p) 土田晴信は、シカゴ・サウスサイドで約10年間にわたり、ハモンドでグルーブしている。 |
| 8/03 | Wed | 大由鬼山(尺八)城田有子(p)他 |
| 8/04 | Sat | ウベンドラ・ラル・シン(p) ロソン・カンサカル(el-b) ニキール(perc) ラジブ・シャカ(MC) ネパールのユニット。苗場《FUJI ROCK》に参加後の出演。 |
| 8/05 | Sun | “アンビエント〜ドローン〜伽藍”山内勝司(el-b) 井上史朗(el-b) 8月の毎日曜日、9月の毎日曜日に“9 Days”を展開。大由鬼山(尺八)を始め、毎回インスパイアの交感をすべくゲストが参戦する。 超ジャズの基軸。 |
| 8/08 | Wed | 永井隆雄(p) 小沢基良(b) 黒崎 隆(ds) |
| 8/09 | Thu | 松戸史朗(ss) 他 |
| 8/10 | Fri | 纐纈雅代(as) ソロ |
| 8/11 | Sat | Soon Kim (as) 大由鬼山(尺八) Soon Kimはベルリンより一時帰国 |
| 8/12 | Sun | “アンビエント〜ドローン〜伽藍”山内勝司(el-b) 井上史朗(el-b) |
| 8/15 | Wed | “トラバス”永井昆布(tp) 吉良憲一(b) |
| 8/16 | Thu | “モチ・ラボ” 望月孝(g, perc) バナナUG(p) 後藤輝夫(ts) |
| 8/17 | Fri | 須藤秀平(p) 他 |
| 8/18 | Sat | サトウ・アキラ(liquid light) 五十嵐普(as) |
| 8/19 | Sun | “アンビエント〜ドローン〜伽藍”大由鬼山(尺八)山内勝司(el-b) 井上史朗(el-b) |
| 8/20 | Wed | 鶴川晋司(サクセロ)他 |
| 8/22 | Wed | 吉野敦子(vo) 永井隆雄(p) 小沢基良(b) 黒崎 隆(ds) |
| 8/23 | Thu | 竹内 直(ts、fl、b-cl)ソロ |
| 8/24 | Fri | BULL松原(vo) 南野陽征(p) |
| 8/25 | Sat | JIBO(vo) 山見慶子(p) 遠藤光夫(g) JUNマシオ(ds) |
| 8/26 | Sun | “アンビエント〜ドローン〜伽藍”山内勝司(el-b) 井上史朗(el-b) |
| 8/27 | Mon | 暮蒲谷 徹(p) 他 暮蒲谷 徹は板橋文夫に師事。 |
| 8/30 | Thu | 鈴木マンモス学(p) 他 鈴木マンモス学は、湘南が培ったピアニストである。 |
| 8/31 | Fri | 大由鬼山(尺八) 他 |
問)Btches Brew 090-8343-5621(杉田)
http://hakuraku-bb.tumblr.com/
http://www.facebook.com/Hakuraku.BB
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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